トヨタグループの再編によって2006年に設立したトヨタテクニカルディベロップメント株式会社様。自動車開発支援で培ったノウハウを発展させ、先進的な計測シミュレーション事業とIP(知的財産)事業を展開されています。
このたび、「Life&Workの充実」に向けてハイブリッドワークを取り入れた働き方に対応するため本社オフィスの2-6階のリニューアルを実施されました。プロジェクトの代表としてリニューアルに携わられた熊谷様、内之浦様、鈴木様に、リニューアル前の課題や苦労した点などお伺いしました。
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
コーポレート管理部 総務室 グループ長 熊谷篤史 様、コーポレート管理部 総務室 プロフェッショナルエキスパート 内之浦学 様 、IP事業本部 IP事業企画グループ プロフェッショナルエキスパート 鈴木美輪 様
所在地 | 愛知県豊田市花本町井前1番地9 |
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URL | https://www.toyota-td.jp/ |
業種 | その他 |
人数 | 約700名 |
面積 | 約1,815坪 |
お客様の課題
- 開発のためのスペース確保
- 業務内容に合わせた執務空間の整備
- 気軽にコミュニケーションがとれるオフィス環境
コクヨのご提案
- フリーアドレスの導入によるスペースの有効活用
- フロアスタッキングによりフロアごとに部門や機能空間を配置
- コミュニケーションが発生しやすいレイアウトや仕掛け
まず、今回のオフィスリニューアルのきっかけについて教えていただけますか
(熊谷様)
2017年に生産性向上、人材確保、イノベーション推進を目的としたリニューアルを開始し、順次リニューアルを進めていこうとしていました。その矢先、新型コロナウイルス感染拡大(以下「コロナ」という)により、リニューアル計画の一時中断を余儀なくされました。コロナ禍で働き方がハイブリッドワークに転換したことから、リニューアルの方向性を変更し、「Life&Workの充実」をテーマに新たな働き方に適したオフィス構築を開始しました。
リニューアル前の貴社の働き方や働く環境における課題を教えてください
開発のためのスペース確保
(内之浦様)
リニューアル前のオフィスは、モノづくりのための場所が不足していました。開発エリアと執務エリアが同フロアにあり、固定的にスペースが割り当てられていたため、柔軟な対応が困難でした。また、プロジェクトの進行状況によってスペース需要が変動するため、一部のエリアが効率的に使用されていない状況が生じていました。
業務内容に合わせた執務空間の整備
(内之浦様)
開発エリアと執務エリアが同フロアにあったため、開発作業に伴う騒音が執務作業の集中を妨げる、逆に執務スペースでの会話が開発作業の精密さを損なう等、業務効率低下の恐れがありました。それぞれの業務に適した環境設定を行いたいと考えました。
気軽にコミュニケーションがとれるオフィス環境
(熊谷様)
オープンなコミュニケーションエリアや会議室はありましたが、気軽に雑談できる場所が不足していました。偶発的な出会いやアイデアの自然な共有ができるよう、より自由で創造的な交流を促進し、イノベーションを生み出すような空間づくりを目指しました。
新しいオフィスのコンセプトや、デザイン上の特徴など教えてください
(熊谷様)
新オフィスは、「働き方改革」「ウェルビーング」「SDGs」の3つのコンセプトを軸に構築しました。ABWを導入し、社員が業務に合わせて働く場所を選択できるようにしました。また、在宅勤務者とのコミュニケーションを円滑にする環境も整備しています。健康面では、立ち会議スペースの設置や肩や腰への負担を軽減するチェアーの採用、グリーンの多用によりウェルビーングを促進しています。さらに、環境負荷の少ない内装材の使用や既存家具の再利用により、サステナビリティにも配慮しました。
課題解決に向けて、オフィス構築時にこだわったポイントや実現した手段について教えてください
「SECIモデル」をベースとしたハイブリッドワークの実現
(熊谷様)
新オフィスの設計にあたり、「SECIモデル(社員が有している暗黙知を共同化→表出化→結合連結化→内面化しながら新しい知識・スキルを生み出す考え方)」を基盤とした働き方を検討するため、社内アンケートを実施しました。アンケートの意見からリモートで高い生産性を発揮できる業務と、リアルな場でしか実現できない業務を明確に区別し、エリア配分を行いました。SECIモデルのサイクルを実現する働き方にこだわり、各プロセスに最適な空間を整備しています。技術者が多いからなのか、論理的に整理をすることで、比較的スムーズに社員の理解と納得を得ながら、新しい働き方の導入を進めることができました。
また、今回のリニューアルではIP事業本部・計測シミュレーション事業本部から、それぞれメンバーを選抜し、15名ほどのワーキングメンバーでプロジェクト推進を行いました。それとは別に10-20名ほどの若手メンバーでオフィスづくりを考えるワークショップを開催し、意見を出してもらったり、他社のオフィスを見学したりして知見を広げました。立ちながら働くことができる環境やグリーンを多用したオフィス空間は実際に出た意見を採用したもので、評判も良いです。
フリーアドレスの導入によるスペースの有効活用
(熊谷様)
出社率の低減に合わせて執務スペースを縮小し、フリーアドレスを導入しました。デスクはモジュールを統一し、小さなユニットのグリッド構成にすることで、執務やコミュニケーション、組織変更など変化する働き方に柔軟に対応できるようになりました。4本脚のキャスター付きデスクを採用したことで、社員自身で簡単にレイアウト変更ができるようになったことも大きなポイントです。
フロアスタッキングによりフロアごとに部門や機能空間を配置
(内之浦様)
開発専用フロアを設置し、執務フロアと明確に分離しました。これにより、社員は業務の性質や目的に応じて最適なフロアを選択できるようになりました。開発フロアでは、集中作業や専門機器の使用に適した環境を整え、さらに人数の増減にも対応できるよう一枚天板のテーブルを採用しています。執務フロアではコミュニケーションや事務作業に適した空間を整備しています。ハイブリッドワークに移行したことで、オフィスというリアルな場でしか実現できないアクティビティに比重を置き、空間を構築しました。
コミュニケーションが発生しやすいレイアウトや仕掛け
(熊谷様)
コミュニケーションの質と量を向上させるため、様々なレイアウトと什器を採用しました。執務デスクは4人一島のカドを持つレイアウトにすることで、気軽に話しかけられる環境を整備しました。また、クロスレイアウトを導入し、動線をジグザグにすることで、偶発的な出会いとコミュニケーションの機会を増やしています。さらに、コミュニケーションエリアには「ソファー席」「おにぎり型テーブル」「ハイカウンター」など多様な什器を配置し、目的や状況に応じて選べる空間を用意しました。社員間の交流が活性化し、より創造的な対話が生まれることを期待しています。 ハイブリッドワークになりオフィスに出社する回数は減りましたが、オフィスでのリアルなつながりを深めることで、チームビルディングやチームシンキングをより強化していきたいと考えています。
オフィス構築時に苦労した点や、それをどのように乗り越えられたかについて教えてください
業務を続けながらのリニューアル工事
(熊谷様)
オフィスリニューアルで一番大変だったことは、複雑な工事工程の調整でした。通常業務を続けながらのリニューアル工事だったため、工程に合わせて現場社員に荷造り・移動をしてもらう必要があり、まさにパズルのような状況でした。コクヨさんのお力もお借りしながら、綿密な工程計画を立て、8カ月という工事期間を乗り切りました。騒音の出る作業はなるべく土日に実施するなど、可能な限り現場で働く社員への配慮も行いました。また、日々変化する現場の状況に合わせて柔軟に対応することが求められ、メンバーとの緊密な連携が不可欠でした。無事にリニューアルをやり遂げることができ、ホッとしています。
社員に対するリニューアルの意義や目的の浸透
(鈴木様)
IP事業本部の執務フロアは、コロナ前の2017年、既にリニューアルを実施しており、快適なオフィス環境が整っていたため、新たなリニューアルの必要性に疑問を感じる声が聞かれました。会社全体としては働き方の変化に適応する必要があると認識していましたが、個人レベルでは必要性を感じていない社員も多くいたようです。そこで、リニューアルプロジェクトを推進するワーキングメンバーを通じたボトムアップと、役員からの全社方針説明によるトップダウンの両方のアプローチを採用し、リニューアルの意義や目的の浸透を図りました。リニューアル後は、目的に合わせてフロアを選び、働くことができるようになりましたが、「自分たちの場所」という意識が根強く残っており、オフィス全体を活用した働き方の浸透には、もう少し時間がかかりそうです。一部の社員は積極的に別フロアを活用するなど、新しい働き方にチャレンジする姿も見られていて、根気強くコミュニケーションを繰り返していくことで、徐々に浸透を図っていけたらと考えています。
フリーアドレスの運用(グループアドレスの採用)
(内之浦様)
当初は完全フリーアドレスを想定していましたが、計測シミュレーション事業本部は人数が多いことから、どこに座ったらいいか戸惑ったり、同じ部署のメンバーを見つけられなかったり、と混乱が予想されたためグループアドレスでの運用を開始しました。チーム内コミュニケーションを重視しているので、グループアドレスという選択は私たちの働き方に合っていたようです。
オフィスの新しい運用方法を全社員に浸透させることは容易ではありません。そこでリニューアルに際し、コクヨさんのお力を借りながらコンセプトブックを作成しました。ここには、リニューアルの目的、各フロアの使用方法やルールなどが詳細に記載されており、新しいオフィス環境の効果的な活用を促進するための重要なツールになっています。
※(下記)コンセプトブック一部参照
オフィス構築後、社員の皆様の働き方はどのように変わりましたか?また、感じておられる効果や予想外の反応などがありましたら教えてください
(内之浦様)
「開発エリアが1フロアに集約されたことで、静かな環境になり集中しやすくなった」「会議室を予約しなくてもすぐ集まれるし、コミュニケーションが取りやすくなった」という声が聞かれています。また、オフィスがきれいになり社内で褒められることが増えました。リニューアルの検討に参加していたメンバーも褒められているような気がして、嬉しい限りです。
(鈴木様)
リニューアル後、社員のオフィスに対する意識に大きな変化が見られました。以前は単に「きれいになった」という表面的な評価でしたが、今では「もっとこうしたい」「ああしたい」という具体的な改善案や要望が自発的に上がるようになりました。これは、社員が自分たちの働く環境に対してより深い関心を持ち始めた証だと考えています。オフィスを単なる作業場所ではなく、自分たちで改善し、より良くできる空間として認識する姿勢が生まれつつあります。私たちはさらなる声かけや対話を通じて、社員の主体的な参加を促し、働き方や組織文化全体の風土や意識を変えていきたいです。
コクヨマーケティングをオフィス構築のパートナーとして選ばれた理由を教えてください
(熊谷様)
コクヨさんは、コスト面での努力と、当社の働き方に適した柔軟な提案を行ってくれました。この2点がパートナー選定の決め手となりました。一旦大きなリニューアルは完了しましたが、リニューアルで縮小された健康エリアの再強化やリフレッシュエリアのリニューアルなど、引き続き検討を続けています。私たちはオフィスに「完成形」はないと考えています。働き方や社会環境の変化に合わせて、常に進化し続けることが重要だと認識しています。今後も継続的な改善を行っていく上で、コクヨさんの専門知識とサポートは不可欠だと考えています。引き続きコクヨさんと協力しながら、より良いオフィス環境の構築に取り組んでいきたいです。
(鈴木様)
私たちの要望に対し、細やかにご対応いただけて大変ありがたかったです。コクヨさんのオフィスを見学させていただいて大変勉強になりました。
(内之浦様)
コクヨさんは、私たちの目指す姿を理解して、それに合わせた多様な働き方の提案をしてくれました。「こんな働き方をしたらこうなる」「この方法を採用するとこういう効果が期待できる」といった具体的なシナリオを示してくれたことで、新しい可能性に気づくことができました。私たちのオフィス改革に大きな示唆を与えてくれたと感じています。