働き方改革を実現するテレワークのポイント

テレワークとは、「情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間を有効に活用できる柔軟な働き方」です。「テレワーク」という言葉を目にすることは増えたものの、メリットや進め方が十分には理解されていないのが現状です。行政は様々な施策やツールを展開していますので、うまく活用すれば、すぐにテレワーク導入に取り組むことができます。本コラムでは、テレワーク導入による効果についてご紹介いたします。

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テレワークに期待できる効果

テレワークは、社会・企業・就業者のそれぞれにメリットをもたらします(図1) 。

「働き方改革」の背景には、急速な少子高齢化による労働力の減少、経済のグローバル化により日本が創造性の高い付加価値で競争しなければならなくなったこと、働き手の価値観の多様化があります。

テレワークは働き手に取って働く場や時間を柔軟にします。そのため、これまでフルタイム勤務がしにくかった育児中の方や病気や介護などの事情を持つ方も、仕事に参加しやすくなります。都市部のICT企業が地域の人材をテレワークで雇用したり、仕事を発注するという動きも始まっており、社会にとっては労働力人口減少の緩和、地域活性化のメリットがあります。

企業にとっては、まずテレワーク導入を機に仕事のデジタル化が進み、時間の時間のムダを減らすことができます。総務省の調査によれば、テレワークを導入した企業は未導入の企業に比べ生産性が1.6倍に向上するという結果が出ています(図2)。優秀な人材の採用と流出防止の点では、テレワークによって柔軟な働き方ができワーク・ライフ・バランスが向上することで、せっかく育てた人材が育児・介護を理由に離職することを防ぎます。また、若い世代の就職観は、楽しく働くことや生活と仕事の両立を求めています。特にテレワークを先行的に導入した中小企業には、人材採用で明らかな効果が出ています。

図1 テレワークのメリット

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出典:日本テレワーク協会講演資料

今回新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の拡大を予防するため、テレワークが推奨されました。普段からテレワークを活用する企業は、対象者や期間制限を緩和するだけで、このパンデミックに速やかに対応し業務継続を図ることができました。テレワークはBCP対策としても有効です。またテレワークにより常時出社する人数が減れば、オフィスを大胆に縮小し、コストを削減できることも企業にとっての魅力の一つになっています。

図2 テレワークの導入と一社当たりの労働生産性の推移

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出典:総務省平成28年通信利用動向調査

テレワーク導入事例

次に、テレワークの導入事例をご紹介します。

製造業

製造業のテレワークは難しいと考えられがちですが、昨今の製造業は、ソフトウェアを使って設計し、3Dプリンター等で自動的に作成するものも増えてきました。パソコンの前で業務を行い、帰り際にセットしておくと翌朝製品ができている・・・というケースも珍しくありません。もちろん、切削や研磨など職人技でないとできないものもありますが、製造業だから・・・と諦めずに取り組まれた企業の例を2つほどご紹介します。

一社は、石川県にある株式会社白山です。こちらでは、金沢の工場を守るために関係者以外の出入りを禁止し、一方で埼玉県の飯能市と東京都の池袋にある総務部門、開発部門など工場以外をコロナ禍が報道され始めた2月17日から完全テレワーク化しました。一昨年に経済産業省の補助金でOffice365を全社導入していたのですが、当初は3割しか利用されなかったそうです。社長の旗振りで全員テレワークの号令がかけられ、社長自ら工場に行きたい気持ちを抑えてテレワークの毎日。管理ができないという声があがったら、「仕事を時間で図るな」「時間管理したら生産性が上がるのか」と叱咤激励し、紙文化の従業員からの不満に対しては業務改善室長が説得。タブレットやPCを全社員に配布して対応しました。7月になって「クラウドを使うと便利だね」といった声が出るまでになったそうです。

もう一社は、神奈川県にあるドライブレコーダーの製造会社です。特殊なソフトウェアで設計する必要があること、設計に関する情報は機密性が高いことから、一切ネットワークに繋がないことを前提にパソコンを自宅に持ち帰ってもらい、業務を継続しました。作り上げた設計書は週に一回USBに入れて会社に持参、管理者と社員のコミュニケーションは専ら電話です。しっかり時間をとって社員と1対1で電話することで、むしろコミュニケーションが深くなり、業務への支障は殆どなかったようです。

IT企業のソリューション営業

R社では、クライアントの課題を聞き、それを解決するための提案を行うソリューション型の営業活動においては、“アポイントを取ってお伺いする“というのが最初のハードルであることを、誰も疑問視していませんでした。対面でいかに自社の強みを打ち出し、信頼していただけるかが重要であり、そのために様々な事前調査や分析を行い、新規クライアントの獲得に努めていました。今回のコロナ禍で、全く動きが取れないのではという不安も広がっていたそうです。一方、R社の提案までの業務はほぼ全てがオンライン化されていました。調査も分析もインターネットにつながったパソコンがあれば可能です。最初は仕方なく、アポイントの依頼をWEB会議でいかがでしょうかと申し出ていたそうですが、実はクライアント各社もWEB会議が当たり前になっており、むしろ障壁は感じないという結果となりました。対面同様、特に初めてのお客様に対してはWEB会議でも、気を遣うことは少なくないですが、IT化による課題解決を目指しているクライアントに対しては、コロナ禍が去った後でもWEB会議型営業もありえるという手ごたえを感じているそうです。

建設・工事業

従来は、作業にあたるにはまず会社に向かい、作業着に着替え設計書を手に現場に向かう、作業終了後に会社に戻り進捗を記入し帰宅というスタイルが当たり前だったようですが、東京都中央区にあるI社では、その日の作業を自宅でタブレット端末やスマートフォンで確認し、直接現場に向かう形がスタンダードだそうです。現場にWEBカメラを設置し、リアルタイムに状況確認できる、という形をとっているケースも珍しくありませんし、スマートフォンで撮影をすると、位置情報・時間情報と共に会社に送られるので、報告の必要も無くなった、といいます。また、複数の拠点をまわる場合は、効率的なルートや概ねの時間を計算したその日の工程を示すことも可能となっており、業務効率が格段にアップしたとのことです。

コールセンター事業

オペレーターが一堂に会して電話でのお問い合わせ等に対応するコールセンターは、コロナ禍の影響を真っ先に受けた業種の一つでしょう。緊急事態宣言下では、多くのコールセンターで受付数を絞り、WEBへの移行を進めました。そんな中、従来から在宅のオペレーター対応を実施していたC社では、在宅コールセンター事業を通常通り運営するのみでなく、事態の流れに合わせて在宅チャット対応にもチャレンジし、事業の変革を図っています。電話では、子供の声やペットの鳴き声が入ったりと、気になることがあるが、チャットであれば家族と一緒の在宅勤務がより快適に行えると、オペレーターさんにも評判だそうです。また、障害のある方々にも対応していただける幅が広がります。

さいごに

コロナ禍により、テレワーク経験者が増えたのは喜ばしいことですが、「外に出てはいけない、家の中で過ごさないとうけないという理由で在宅勤務をすることがテレワークである」という誤った概念が広がったことはとても残念です。本来のテレワークは、就業者のワークライフバランスを実現するのみでなく、生産性の向上にもつながり、一億総活躍社会を実現するための一翼を担うこともできる働き方です。特にコロナ禍で急遽テレワークを導入せざるを得なかった企業さんにとっては、生産性の向上につながっていないと感じておられる方もいらっしゃるでしょう。テレワークをせっかくやってみられたのでしたら、良かったこと、困ったことの振り返りをしていただきたいと思います。従業員さんの立場から、管理職の立場から、経営陣の立場から、様々なご意見を集めてみて、課題の重要性・緊急性を分析し、対応策をたて実行してみてください。一般的に成果がでるのは6か月から1年はかかると言われていますが、必ず従業員の方にも企業にも社会にも役立つものですので、サステナビリティ社会の実現に繋げていただきたいと思います。

※詳細は日本テレワーク協会サイトをご覧ください。

監修:一般社団法人日本テレワーク協会

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