ファシリティマネジメント(FM:Facility Management)とは、「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」のことをいいます。この記事では、ファシリティマネジメントと施設管理の違いや、メリット、実施の手順、認定資格などわかりやすく解説しています。
ファシリティマネジメントとは
ファシリティとは土地・建物・設備・備品などの「固定資産」のことを指します。その施設の建物や設備を最適化し、総合的・戦略的に管理する業務をファシリティマネジメントといいます。
これはアメリカで生まれた新しい経営管理方式で、経営資源の「ヒト・モノ・カネ」に続く第4の資源ともいわれています。
施設管理との違い
施設管理とは、老朽化した建物を修繕、または施設の保全を行うことです。それに対し、ファシリティマネジメントとは、土地の更新の検討や売却など経営目線で土地や建物を「最適化」する役割を担っています。
ファシリティマネジメントとLCC
製品や構造物(建物や橋、道路など)がつくられてから、その役割を終えるまでに発生する費用のことLCC(ライフサイクルコスト Life cycle cost)といいます。
施工後の大部分はランニングコストが占めるので、ファシリティマネジメント(FM)によって施設のLCC(ライフサイクルコスト)の費用を抑えることが重要な課題になってきます。
ファシリティマネジメントが日本で広まった背景
ファシリティが重要な経営資源といわれるようになったのはバブル経済後になります。それまでの日本は、経済成長とともに建設する際の資金調達が容易であったため、建物をつくっては壊す「スクラップ&ビルド」という考え方が主流でした。
しかしバブル経済の崩壊後は建設資金の調達が難しくなり、建物を有効活用することが求められるようになります。こうした背景から設備や利用環境を戦略的に管理し、将来を見据えたマネジメントが重要視されるようになりました。
ファシリティマネジメントのメリット
ここではファシリティマネジメントの取り組みによって得られるメリットを解説します。
固定資産を最大限に利用できる
老朽化した建物を改築しテナントとして貸出すれば、空きスペースを有効に活用できます。定期的なメンテナンスを行うことで、経年劣化による資産価値の減少を止められます。またオフィス内の不要な書類を整理し、空いたスペースをリフレッシュエリアやミーティングのスペースとして有効活用すればコミュニケーション活性化にも繋がるでしょう。
コストダウンできる
例えばオフィス空間にユニバーサルレイアウトを導入すると、執務スペースを有効に活用できます。
ユニバーサルレイアウトとは、役職席をなくしてデスクを横一列にする配置のことです。部署やチームの座席を分けたり、デスクの配置を変えたりするなどのレイアウトを変更する必要がありません。
そのため部署内の人員が増減しても最小限の労力やコストで済み、スピーディーに組織変更ができます。また配線の引き直しなどの手間も省くことができます。
ファシリティマネジメントのレベル
日本ファシリティマネジメント協会は、ファシリティマネジメントを以下、3つのレベルに分けています。
経営
経営は、ファシリティマネジメントの方向性や施策の目的を決める最初の段階になります。ピラミッド構造の頂点にあり、課題を明確化し、予算や施工の段取りなどの今後の方針を決めます。
管理
管理は、ファシリティマネジメントを実施する際のコストや、経営の最適化を決める段階になります。資材の費用や業者の選定など、「経営」で決定したことを具体的に実行できるまで落とし込みます。
日常業務
主に清掃や建物の修繕などの業務を行い、土地や建物の維持・管理をします。経営と管理で決定した方針を実行する役割になります。
※参考:ファシリティマネジメント(FM)とは|日本ファシリティマネジメント協会
ファシリティマネジメントのPDCAサイクル
ここではファシリティマネジメントのPDCAサイクルから、工程ごとの流れを解説します。
【Plan】ファシリティマネジメントを計画
まずは、自社の建物・施設などの現状を把握しましょう。そして経営を最適化させるための改善点を洗い出し、3〜5年の間で実現可能な計画を立てましょう。
【Do】プロジェクト管理
次にオフィスの移転やリニューアルなど、立てた計画を具体的に検討・進行し、管理していきます。プロジェクトに関わる社員だけでなく、修繕やリフォームなどを依頼する業者の人たちにも目的を共有しましょう。
【Check】評価
プロジェクトを実施した後に、目的の評価を行います。【Do】プロジェクト管理の段階がどれだけ達成できたかを評価します。
【Act】改善
最後に【Check】評価の具体的な改善点を上げ、今後どのような対策を行っていくべきかを検討しましょう。
参考:ファシリティマネジメント(FM)とは|日本ファシリティマネジメント協会
ファシリティマネジメントの認定資格
ファシリティマネジメントの理解を深めるために、資格を取得する方法もあります。認定ファシリティマネジャー(CFMJ)について解説していきます。
認定ファシリティマネジャー(CFMJ)とは
認定ファシリティマネジャー(CFMJ)とは、公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会など3つの団体が協力して実施している資格制度です。ファシリティマネジメントに関する専門知識や能力の証明になります。
認定ファシリティマネジャー(CFMJ)の受験資格
認定ファシリティマネジャー(CFMJ)に受験資格はありません。ただし、合格後の「認定ファシリティマネジャー登録」にはファシリティマネジメントの実務経験が必要になります。実務経験の期間は4年制大学卒で3年以上など学歴によって異なるため、事前に確認しておきましょう。合格5年以内に登録が完了すると資格保持者となります。
認定ファシリティマネジャー(CFMJ)の難易度
認定ファシリティマネジャー(CFMJ)は、例年の合格率が40%程度の難易度です。「学科試験」と「論述試験」に分かれており、学科試験は得点70%以上が合格になります。
参考:認定ファシリティマネジャー(CFMJ) 資格者統計データ(受験者数・合格者数・資格登録者数)|日本ファシリティマネジメント協会
認定ファシリティマネジャー(CFMJ)資格取得の手順
認定ファシリティマネジャー(CFMJ)資格取得の手順は、以下の通りです。
- 受験申込
- 学科試験
- 論述試験
- 合格発表
- 資格登録
学科試験に合格した後は、論述試験を受ける必要があります。論述試験が受けられるまで、約1ヶ月の期間があります。合格の通知は試験から約2ヶ月後に「受験者マイページ」もしくは通知で郵送されます。その後に、新規登録の申請を行います。
まとめ
ファシリティマネジメントを導入し、土地や建物、施設什器、そしてそれを取り巻く環境を効率的に活用していきましょう。そして快適なオフィス作りもファシリティマネジメントのひとつです。オフィスリニューアルや移転をきっかけに自社の従業員が働きやすい環境を作り、ファシリティマネジメントの効果を高めましょう。
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