近年、ワークスタイルという言葉をよく耳にしますが、その意味を正確に理解されていない方も多いのではないでしょうか?
ワークスタイルとは、一般的には「働き方」や「仕事のやり方」を意味しますが、どのような立場の人が使うかによって意味が変わる言葉です。
ワークスタイルという言葉自体は特に新しいものではありませんが、昨今、働き方が大きく変化したことにより、再注目されるようになりました。
この記事では、ワークスタイルについて、また、ワークスタイル変革をおこなうメリットや成功させるポイントについても、解説いたします。
ワークスタイルの意味
ワークスタイルとは、一般的に「働き方」「仕事の仕組み」「仕事のやり方」などを表しますが、立場や言葉を使うタイミングによって、そのニュアンスは変わります。
例えば、経営者視点では、働き方の仕組み(制度)や労働環境を意味します。フレックス制度やフリーアドレス制、リモートワークの可否など、社員の働き方に影響を及ぼすルールや規制の全てが含まれます。
一方、個人視点においては、正社員や派遣社員などの雇用形態や、週休3日制などの短日勤務や時短勤務など個人のライフスタイルに合わせた働き方などを表します。
ワークスタイル変革とは
ワークスタイル変革は「働き方」や「仕事のやり方」を変革させる意味を指します。具体的には、社員一人ひとり、個々のライフスタイルにあわせた働き方により、それぞれが活躍できる環境をつくり、社員の能力を最大限発揮させることで、会社の成長につなげるといった考え方です。別名、働き方改革とも呼ばれており、2018年6月に働き方改革関連法が成立しました。
ワークスタイル変革は、取り組むことで、労働時間の短縮、高齢者の就業促進、子育て・介護と仕事の両立などが可能になり、企業と従業員の双方にとって、大きなメリットとなるのです。
ワークスタイル変革が広まる背景
近年の日本の少子高齢化、それに伴う労働人口の減少が加速する中、少ない労働人口でもより高いパフォーマンスを出し続けられるよう、社員一人ひとりの生産性が求められるようになりました。
また、国際的に比較しても、日本は労働生産性の低いことや長時間労働が多いこともあり、企業担当者は、短縮した労働時間のなかで、社員にいかに高い成果を出してもらうかを考えていくことが必要となります。
その他、企業のグローバル化や雇用の多様化が進んでいることも、柔軟で働きやすい環境づくりを必要とする要因です。
従来のように「会社のためにプライベートを犠牲にして働く」「残業は当たり前」といった考え方は、もはや通用しなくなっており、仕事とプライベートを両立させる「ワークライフバランス」や、さまざまな国籍やバックグラウンドを持った人材が個性を活かしながら働く「ダイバーシティ」の考え方が広がり始めています。
こういった背景から、ワークススタイル変革の取り込みは、企業にとっての最優先課題となっています。
新型コロナウイルス感染症の拡大でワークスタイルを変えた企業は多い
ワークスタイルを大きく変えるきっかけとなったのが、新型コロナウイルス感染症の拡大です。
コロナの影響により、多くの企業がワークスタイルの変更を余儀なくされましたが、これにより本格的にワークスタイル変革に取り組む企業が急増しました。
感染が拡大する前は、オフィスに社員が集まって働くことが一般的でしたが、感染拡大に伴い、在宅勤務やテレワーク、コワーキングスペース、サテライトオフィス、シェアオフィスをはじめとした分散型オフィスの活用のなど、多様な働き方ができるようになりました。アフターコロナにおいても、多くの企業がテレワークとオフィス勤務をいかに融合すべきか、それぞれの企業にとって最適なワークスタイルを模索しています。
ワークスタイル変革で得られるメリット
ワークスタイル変革では、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
ここでは、4つのメリットについて、解説します。
生産性や業務効率が向上する
ワークスタイル変革により、生産性や業務効率が向上します。例えば、ICT環境を整えることでオフィス以外でも仕事ができるようになり、テレワークや隙間時間を活用した効率的な働き方が可能です。
また、満員電車など通勤で無駄な体力を使わず、ストレスからも解放され、移動時間の削減により、時間を有効活用することもできます。
コストが削減できる
ワークスタイル変革により、さまざまなコストを削減できることもメリットです。例えば、テレワークの導入やコワーキングスペースの活用などが定着すると、交通費の削減が期待できます。
また、オフィス勤務が減少すれば、オフィススペースの削減による賃料のコストダウンも見込める可能性もあります。
ワークスタイル変革により、さまざまなコストを削減できることもメリットです。例えば、テレワークの導入やコワーキングスペースの活用などが定着すると、交通費の削減が期待できます。
また、オフィス勤務が減少すれば、オフィススペースの削減による賃料のコストダウンも見込める可能性もあります。
優秀な人材を雇用し続けられる
ワークスタイル変革に取り組んでいる企業は注目され、優秀な人材が集まりやすく、人材の定着にも有効です。近年、仕事よりもプライベートを重視する人が増えており、ワークライフバランスを保てる企業へ人気が集まる傾向にあります。育児や介護などで離職せざるをえない優秀な人材でも、雇用を継続できる可能性が高くなります。
事業の継続を維持できる
ワークスタイル変革は、緊急事態が発生した際のリスクヘッジにもなります。テレワークを導入するなど、どこでも働ける環境を整えていれば、災害や感染症の流行などでオフィスへの出勤が難しい場合でも、在宅勤務ができますので事業の完全停止を防げます。また、本社以外にオフィスを設けることで、リスクを分散でき、事業を継続、早期復旧させることも可能です。
ワークスタイル変革の取り組み方法
次は、ワークスタイル変革を成功させるために必要な取り組みについて、以下で詳しく解説します。
社内制度の見直し
ワークスタイル変革を成功させるには、まず社内制度を見直しましょう。在宅勤務やテレワークが中心になると、従来のマネジメント制度や人事評価、勤務体系などによる対応が難しくなります。労働は長時間労働や休日出勤の量ではなく、質で評価する仕組みにしましょう。また、時短勤務や週休3日といった短日勤務などの柔軟な勤務体系を整えることも大切です。
柔軟な雇用形態の導入
今までの雇用形態は主に「正社員」「契約社員」「アルバイト」でしたが、「短時間勤務の正社員」「委託社員」など従業員の希望にあう雇用形態を導入しましょう。さまざまな理由で退社した優秀な人材も、柔軟な雇用形態を導入することで、退職防止につながります。また、雇用形態に複数の選択肢があると、働きやすい企業としてのアピールにもなるでしょう。
ICTツールの活用
ICTツールは、ワークスタイル変革に必要です。ICTとは、「Information and Communication Technology」の略で、通信技術を活用した製品やサービスのことです。ICTツールは、Web会議システムやファイル共有ツールなどが該当し、これを活用すると、テレワークが可能になるだけでなく、よりスムーズに効率的な業務や会議を行うことができます。
クラウドサービスやスマートデバイスの導入
クラウドサービスやスマートデバイス(スマートフォン、タブレット)の導入も欠かせません。クラウドサービスは、インターネット上にデータを保存するため、データの閲覧や社内申請などが、時間や働く場所に関係なく可能です。さらに、スマートデバイスがあれば、出先や隙間時間などでも対応でき、効率的に働くことができます。
労働環境やオフィス環境の改善(オフィス改革)
オフィスを見直し、働きやすいオフィス環境を整えることも、ワークスタイル変革の取り組みの一つです。いわゆる、「オフィス改革」といわれ、実は重要なポイントとなります。
昨今のテレワークの推進により働き方が大きく変化する中、組織の中心であるオフィスをアップデートすることはとても重要であり、企業の目指す働き方が実現できるオフィス戦略が、これからのワークスタイル変革を成功に導く鍵となります。
具体的にはフリーアドレス運用やABWの導入、自社の働き方に適したオフィスレイアウトの見直し、ペーパーレス化が挙げられますが、次で詳しくみてきましょう。
・フリーアドレス運用やABWの導入
フリーアドレスとは、固定席を設けずに、社員が席やスペースを自由に選び働くワークスタイルのことです。
フリーアドレスを導入することで、社内コミュニケーションの活性化や執務スペースの効率化が図れるなどのメリットもあります。
一方ABW型のワークスタイルでは、働く場所がオフィス内に限られるフリーアドレスと比べて、オフィス以外の自宅やカフェなども働く場所の選択肢に入るため、業務内容や気分にあわせ、より柔軟に環境を変えて働くことができます。「オフィスに出社し、決められた席で働く」というスタイルから、ABW型のワークスタイルへ変更することで、より効率的に生産性高く働くことができるのです。
・働き方に適したレイアウト見直し
働き方が大きく変化しオフィスに対する価値観も変わる中、これからどのような働き方を目指していくのか、そのためにオフィスにどのように見直すのか、オフィスレイアウトを設計していく上で、これまで以上に検討する必要があります。
具体的には、テレワークと出社勤務を合わせたハイブリットワークに対応するために、快適にWEB会議ができる個室ブースを設置したり、オフィスでのリアルコミュニケーションを活性化させるため、コミュニケーションエリアを増設したりといった例が挙げられます。
またオフィスレイアウトの見直しには、現状の課題の把握や社員へのヒアリングも欠かせません。ヒアリングを通じて、社内で取り組むべき施策も見えてきます。経営者や担当者の思い入れよりも、現場の社員の意見を尊重するようにしましょう。
・リフレッシュ空間の設置
飲み物を飲んだり、居合わせた社員と雑談をしたりして、オンとオフを切り替えることができるリフレッシュエリアは、業務中に煮詰まったときなどのモードチェンジに効果的です。居心地の良いリフレッシュスペースは、生産性の向上や社員の満足度を高めるなど、さまざまな効果が期待できます。また、社員がリフレッシュするだけのスペースだけでなく、ミーティングエリアも兼ね備えるなど多目的に活用できるスペースにすると、利用しやすくなります。
・ミーティングエリアの設置
アイデアの抽出、情報交換など、お互いの考えを共有できるミーティングスペースの設置も重要です。
アイデアを共有したくても、会議室が満室で利用できなければ、打ち合わせをする機会を失ってしまいます。
そのため、オフィスの中に気軽にミーティングができるスペースを複数設けることで、必要なタイミングですぐにミーティングをはじめることができます。
また用途や議題に応じたレイアウトやデザインにすれば、集中しやすい空間づくりが可能です。
例えば、ホワイトボード、デジタル資料を全体で共有できる大型スクリーン(インタラクティブボード)の設置等です。
ミーティングエリアは、快適で利用しやすい空間にすることが必要ですが、最近では、よりリラックスした空間でミーティングができるよう、アウトドアテイストのミーティングスペースが注目を集めています。
自然に包まれると、人は本能的に心地よさを感じるという「バイオフィリア※」の考え方と、オフィス家具としての機能性を組み合わせてミーティングエリアを設置することで、アイデアも生まれやすく、議論が活性化します。
※バイオフィリアとは、人が生まれながらにして自然を求める本能があるという概念。
・ペーパーレス化
ペーパーレス化とは、既存の「紙」を資料としていた業務を削減し、電子化に切り替える取り組みです。
たとえば、会議の書類などを紙で管理していると、膨大な量になり保管場所も多く必要となります。これら書類をペーパーレス化することで、管理が容易になり、資料の差し替えも直前まで可能となり運用面でも効率化されます。導入の流れとしては、紙を電子化してクラウド管理することが一般的です。
ペーパーレス化により、場所にしばられない働き方が可能となり、テレワークの導入やABWを取り入れた働き方への移行もスムーズにおこなうことができます。
ワークスタイル変革をおこなう際に注意すべき点
ワークスタイル変革を実施する際には注意点もあります。それぞれについて解説します。
コミュニケーション不足
テレワークや時短勤務といった多様な働き方から、従業員同士がコミュニケーション不足になりやすく注意が必要です。顔をあわせて働いていたオフィス環境と違い、業務内容の確認やトラブル時の対応などが難しい場合もあります。そのため、離れた場所で働くメンバーが実際に顔を合わせるミーティングの場を定期的に設ける、ウェブ会議システムや社内SNS、チャットなど、業務内容や目的に合わせたツールの使い分けをすることも効果的です。上司と部下の関係においても、見えないところで仕事をしていても上司は自分のことを気にかけてくれている、と感じられれば部下は安心でき、信頼関係を築くことができます。そのため、日頃からこまめにコミュニケーションを取るのと同時に、業務の進捗状況や抱えている課題等を伝えるタイミングや、気軽にコンタクトが取れるルールづくりが大切です。
マネジメントや人事評価
ワークスタイル変革により、勤務時間や場所が大きく変化すると、労働時間の管理が難しくなります。また、上司から見ると目に見えない場所で仕事をしているメンバーの働きぶりを把握しづらくなり、人事評価や育成に困るという課題も見られています。
現状のマネジメントや人事評価では判断が難しいため、それぞれメンバーの業務を確化し、スケジュールを「見える化」することが必要です。
また、部下の仕事に対する評価についても、重視する点や基準を明確にし、あらかじめ伝えておくことが大切です。事前に説明しておくことで、納得度も上がり安心して仕事に取り組めるはずです。
新入社員や若手のメンバーに対しては、コミュニケーションの頻度をあげ、部内外のメンバーとの関係構築を支援するなど、企業・組織へのエンゲージメント醸成にも気を配るようにしましょう。
社内ネットワークのセキュリティ
テレワークや外出先などのオフィス以外から、社内ネットワークに接続すると、不正アクセスや外部からの攻撃を受けるリスクが高まります。また、スマホやノートパソコン等の端末を外部に持ち出して作業するため、紛失や盗難による情報漏洩のリスクもあります。
万が一、不正アクセスが起こると、顧客名簿や取引先とのやり取りなど、社内漏洩につながりますので、データの暗号化やVPN(バーチャル プライベートネットワーク)の使用など、強固なセキュリティ対策をおこないましょう。
まとめ
働く人を取り巻く環境は今まさに転換期を迎えています。
そのような中、ワークスタイル変革をどのように進めていくかによって、企業の今後が決まるといっても過言でありません。働き方が大きく変わりつつある今だからこそ、事業戦略やオフィス戦略を改めて見直し、ワークスタイル変革に取り組むことが必要ではないでしょうか。
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