働き方改革関連法の施行により、中小企業様がこれから取り組むべき内容について分かりやすく解説いたします。
どのような取り組みが必要なのか、具体的な事例や、罰則の有無なども合わせて説明いたしますので、働き方改革を進める際の参考にしてください。
本記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。法律や制度は変更される可能性があるため、最新の情報については関係省庁や専門家にご確認ください。また、本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律の専門家が作成したものではありません。具体的な法的アドバイスが必要な場合は、弁護士など適切な専門家にご相談ください。当社は、本情報の使用により生じたいかなる損害についても責任を負いません。
働き方改革関連法とは
働き方改革関連法とは、正式名称を「働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律」といい、長時間労働の是正や多様な働き方の推進、雇用形態に関わらない公正な待遇の実現など目的に、8つの労働法の改正を行うための法律です。8つの法律は「労働基準法」「労働契約法」「労働安全衛生法」「労働時間等設定改善法」「労働者派遣法」「パートタイム労働法」「じん肺法」「雇用対策法」が該当します。
法改正の背景には、少子高齢化に伴う労働人口の減少、育児・介護と仕事との両立など、社会変化や労働環境に対するニーズがあります。
働き方改革関連法は2018年6月に成立し、2019年4月から施行開始となりました。ただし、項目によってはどの企業も一斉に開始すべきものと、大企業と中小企業、または業種(建設事業・自動車運転業務・医師・一部地域の砂糖製造業)で開始時期が異なるものがあります。
働き方改革関連法の施行に伴い、中小企業が取り組むべき課題とは
「業務量と人員のバランスが取れていない」「繁忙期の業務が多すぎる」など、労働時間における中小企業が抱える課題は根深いものがあります。
特に、2019年4月からの大企業における時間外労働(残業)の上限適用後、大企業で長時間労働できない分、下請けである中小企業に業務が集中する可能性も示唆されました。
それまでは、時間外労働の上限は労働基準法第36条に基づく労使協定(通称36協定)により月45時間・年360時間と定められていましたが、企業がこれに違反しても罰則はなく、行政指導が入るだけでした。しかし、2020年4月から中小企業においても時間外労働の上限規制が導入され、違反した場合は罰則が科せられるようになりました。よって、中業企業も労働時間や業務効率などの見直しが必要とされるようになりました。
(参考)中小企業の定義
中小企業基本法により、業種ごとに以下のように定められています。
- 製造・運輸・建設業、その他の業種:出資金もしくは資本金の総額が3億円以下、または常時使用する従業員数が300人以下
- 卸売業:出資金もしくは資本金の総額が1億円以下、または常時使用する従業員数が100人以下
- 小売業:出資金もしくは資本金の総額が5,000万円以下、または常時使用する従業員数が50人以下
- サービス業:出資金もしくは資本金の総額が5,000万円以下、または常時使用する従業員数が100人以下
中小企業に対する働き方改革関連法の主な内容と適用時期、罰則有無
中小企業は大企業の施行時期とは異なり、導入までに猶予が与えられています。しかし、施行しないと罰則が科せられる恐れがありますので、時期と内容を必ず確認してから対応しましょう。以下、中小企業への適用開始時期を時系列に沿って解説します。
【2019.4.1~】(大・中小企業ともに)
●年次有給休暇の取得に関する義務
年10日以上の有給休暇が与えられる従業員には、希望を聞いた上で会社が指定した時季に5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられました。また、従業員ごとにそれぞれ年次有給休暇の基準日や日数、時季などを明記した年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存する必要があります。休暇取得させない、取得した社員を不当に扱うなどの違反には、従業員1人につき30万円以下の罰金が科せられます。
●勤務間インターバル制度
残業時間が長くなると、従業員が休息や睡眠に充てる時間が減り、体調不良や病気などのトラブルを招きます。疲労の蓄積が重大事故につながる恐れもあります。勤務間インターバル制度は、業務終了後、翌日の勤務開始までに一定の時間を空け、休息やプライベートに充ててもらう仕組みです。努力義務であり、違反しても特に罰則はありませんが、従業員の健康のため取り組む必要があります。
●その他
他にも、労働時間の客観的な把握の義務化があります。裁量労働制が適用されている管理職を含めた全従業員に対し、労働状況を客観的かつ適切に把握することが義務付けられました。一定の総労働時間の中で従業員自身が始業・終業時間を決めるフレックスタイム制も、清算期間の上限が3ヶ月に引き上げられました。また、従業員の健康維持のための産業医・産業保健機能の強化や、高度な専門知識をもつ従業員に対しては労働時間や休日などの措置を適用しない高度プロフェッショナル制度が導入されました。
【2020.4.1~】(大企業は2019.4.1~)
●残業時間の上限規制
原則として、企業は月45時間・年360時間を超える残業を従業員にさせてはなりません。また、臨時的に発生した業務など特別な事情があり、労使間の合意の上でこれを超える残業が生じたとしても、年720時間を超えてはならないと定められました。この規制に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が発生します。上限時間を超えないよう注意しましょう。
【2021.4.1~】(大企業は2020.4.1~)
●同一労働・同一賃金(非正規雇用の労働者への待遇改善)
同じ業務量・業務内容でも、正社員と派遣社員・パートタイマーなどの非正規社員とで収入や待遇に格差が生じると、労使間でトラブルになる可能性があります。そのような待遇格差の改善、不合理な待遇差を是正するのが、同一労働・同一賃金の導入です。労働・同一賃金は、適用しなくても罰則が生じることはありませんが、企業は従業員から求められた際に待遇に関する説明を行うことが義務付けられました。
【2023.4.1~】(大企業は2019.4.1~)
●月60時間超残業の割増賃金率引上げ
月60時間超の残業に対する割増賃金率が、それまでの25%から50%に引き上げられます。大企業はすでに50%で適用済みですが、中小企業に設けられていた猶予期間は2023年4月から廃止されます。なお、適用時期を過ぎても50%に引き上げない場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が定められています。
働き方改革へ取組む際のポイント
働き方改革を推進するにあたり、どのようなポイントがあるかを以下にまとめました。導入する前に確認しましょう。
業務の効率化が重要
時間外労働の削減や有給休暇取得率の向上を実現するには、業務効率の見直しが不可欠です。
業務を洗い出し、無駄な業務がないか、優先順位をつけるならどうすればいいか確認しましょう。急な欠勤が生じても業務が滞らないよう、業務のマニュアル化も進めましょう。必要であれば、勤怠管理システムを導入して勤務状況を把握したり、単純作業を外注したりするなど工夫をするのも有効です。働き方を見直す方法の1つにコクヨの「はたナビPro」があります。「はたナビPro」は無料で利用でき、従業員にWEB上で働き方についてアンケートを答えてもらい、会社全体あるいは部署ごとの課題を可視化した診断結果シートを作成する事ができます。詳しくは以下のリンク先でご確認ください。
労使による話し合い、就業規則の整備などの実施が必要
従業員の不満やストレスを軽減し、離職率の上昇や生産性の低下を防ぐために、労使による話し合いや就業規則の整備などが必要です。終業時刻から次の始業時刻までに従業員がしっかり休める時間を確保する、勤務間インターバル制度も検討しましょう。義務ではありませんが、従業員の負担軽減のため導入する企業は今後増えると思われます。
成果や効率に応じた賃金の支払い方法(賞与等)等を検討する必要がある
従業員のモチベーション維持も重要です。働き方改革関連法の施行によって業務分担の見直しや時間外労働の削減が求められますが、同一労働・同一賃金はかえって従業員のモチベーションを下げてしまう可能性があります。制度を見直し、成果を上げた従業員には報奨を与えるなど、従業員のモチベーションを高める仕組みを作りましょう。
本記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。法律や制度は変更される可能性があるため、最新の情報については関係省庁や専門家にご確認ください。また、本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律の専門家が作成したものではありません。具体的な法的アドバイスが必要な場合は、弁護士など適切な専門家にご相談ください。当社は、本情報の使用により生じたいかなる損害についても責任を負いません。
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