2020年12月1日〜25日に『2021 KOKUYO FAIR』が開催されました。
今回は、初の試みとして、オンラインとリアルの組み合わせで行うイベントとして開催され、今気になるテーマをとり揃えた40本以上のセミナーは、すべてWEBセミナーでの実施となりました。今回はその中でも、お客様に、今最も関心のあるテーマ『縮小移転』について、潜入レポートいたします!
コロナ禍でオフィス市況はどう変わったのか?
講師は、コクヨの移転関連セミナーの講演をしていただいている株式会社CWファシリティソリューションの袋布修一さんです。今回は『コロナ渦で増加!知っておくべきオフィス縮小移転のノウハウ~これからのニューノーマルなオフィスの在り方・移転の仕方〜』をテーマにお話しいただきました。
まずは、都心のオフィス市況の変化についてです。
空室率は、2020年3月までは低い値を維持していましたが、1回目の緊急事態宣言発令のあった2020年4月以降は、コロナの影響で上昇。また賃料に関しては、2020年7月以降、80か月ぶり下落傾向となりました。
次に、都内新築ビルの内定率ですが、2020年竣工ビルの内定率は100%でほぼ入居が確定している状況に対し、2021年竣工ビルの内定率は60%、2022年竣工ビルの内定率においては10%とほとんど入居が決まっていない状況のようです。
また、加えて、今後のオフィス利用人数や面積はどうなるのか、都内テナントユーザーへのアンケートをとったところ、2019年までは、『利用人数や面積が増える』もしくは『利用人数や面積は変わらない』と回答された方が8割、これに対して2020年ではこれが7割に減り、『利用人数や面積が減る』と回答された方が2割近くいたそうです。
また、このアンケート結果で注目すべき点は、『面積は変わらない』と答えられた方が5割近くいるということです。これらの結果から、多くの企業ではこれからの動向がわからないので様子見をしており、多くの入居面積を賃貸している大手企業がオフィス面積縮小を本格的に検討された場合に、市況が大きく変化するものと考えられます。
コロナ禍のオフィス移転フローやそのタイミングは?
オフィス移転のフローは以下の図の通りで、オフィス規模にかかわらずやるべきことは変わりません。
これはコロナ禍においても同様です。
そして、移転のタイミングは、現状の賃貸借契約の更新時期を移転のタイミングに合わせて計画を立てることが一般的です。
実際に移転する場合には、6か月前に現ビルのオーナーに解約通知を提出する必要があるので、コロナの影響としては、コロナが流行し始めた2020年2月から6か月後の2020年8月以降に市況に変化がでてきているようです。
Ⅰ移転計画立案
では、『Ⅰ移転計画立案』について詳しく見ていきましょう。
このタスクでは、移転の目的と、それによって得られる成果を明確化することが必要です。コロナ前の移転の目的は、人員増によるものが多くオフィススペースを拡大する傾向でしたが、コロナ禍においては、社員の連携が希薄になっていることでグループ連携を強化したい、またソーシャルディスタンスを保つためのオフィス環境の整備やテレワークに適したオフィスとすることを目的に、移転を計画する場合が増えているようです。
合わせて、オフィスの現状把握から課題を抽出して、自社の将来の予測(移転後のイメージ)をたてることがこのフェーズでは最も重要となってきます。
まずは現状の把握をしていただく必要がありますが、現状の把握だけでは、将来の予測はみえてきません。ではどうすればよいのでしょうか?
それは、自社の現状を把握した上で世の中の変化やオフィスのトレンドをそれにあて、自社の目指す先を考え、将来の予測をたてるというやり方があります。世の中の変化に関する情報は、他社の状況の把握や、このようなセミナーからの情報をインプットしていただければと思います。将来の予測をたてた後は、それに向けて進んでいき、その方向へ進むことで出てくる課題を解決していくという流れとなります。
また、移転の目的に沿って移転先の前提条件と優先順位を設定していくことも重要です。オフィス移転の3大与件は「立地」「面積」「賃料」の3つといわれていますが、コロナ禍に追加された与件としては、「テレワーク導入による在籍率を考慮した面積の検討」や「感染対策に対応したビル設備があること」などを望む企業もあるようです
オフィス移転にかかる期間は、社員100人、面積300坪の場合、およそ1年かかると言われています。移転担当者は今どのフェーズにいるのかを把握して、いつまでに何をするのか全体像を確認しながら移転スケジュールを設定し、進めていきましょう。
ここで、各社オフィス動向を、他社の事例を交えて見ていきましょう。
ここでは他社の事例の掲載は差し控えさせていただきますが、パターンとしては『全部解約』『一部削減(フロア返却、縮小移転のパターン)』『働き方調整(在宅勤務、時差出勤、出社人数調整、面積は現状維持)』『出社維持(あえて出社推進で面積は現状維持)』『増床(バックアップオフィス・ソーシャルディスタンス確保のため面積拡大)』などがあるようです。
コロナ以降、多くの企業が、オフィス面積を縮小する傾向にあるものの、必ずしも縮小だけではなく、働き方によって、必要となるオフィス面積や立地の考え方はかわってくるということです。今後は、働き方を見据え、自社に適したオフィスの移転計画が今まで以上に求められそうですね。
それでは、これからのオフィスに必要な機能、働き方はどのように変わっていくのでしょうか?
そこで、まずは、ワークプレイスの変遷、働く場がどうかわってきているのか見ていただきます。
近代以前は自宅と働く場は同じでしたが、近代オフィス登場後は自宅とオフィスが切り離され、2000年以降になるとモバイル関連が拡充して、カフェやコワーキングスペース(3rdプレイス)など、どこでも働くことができるようになりました。そしてコロナ以降は、1.5プレイスという自宅で仕事ができる空間を設けるという考え方が一般的になってくるものと考えられます。
そうなるとセンターオフィスは何をすべき場所なのか?ということがますます重要になっていきます。
次に、働き方をベースとしたオフィス面積の考え方ですが、今までは、「人数×面積」で考えることが一般出的でしたが、今後は、働き方をベースとしたオフィス面積を想定することが必要と考えられます。
ここで、働き方を考えたこれからのオフィススペースのあり方についていくつかパターンをみていきます。
パターン1
・直行直帰型スタイルでワーク可能、しかしオフィススペースは無くせない
・アフターコロナを見越した業務拡張・人員増を視野に入れた検討が必要
→この場合、フリーアドレスを採用することが一般的です。フリーアドレスは、デスクを共有し、
ワー カーが自分の働き方にあったスペースを自由に選択できるオフィス利用形態です。
パターン2
・場所を限定しない働き方がこれからの主流となると予想される
・自宅で業務は難しいが、会社まで行くのは時間の無駄
→この考え方の場合、コワーキングスペースを採用される場合が多いです。
郊外型のコワーキングスペースを拡充している企業も多く、その他、サテライトオフィスといった
自社専用のワーキングスペースを設置される場合も多いようです。
パターン3
・最近はWEB会議が多くて会議室が足りないから会議室を増やしたい
・リモートワークにより在籍率は50%だが、今後どうなるかわからないので執務スペースは減らせない
→個別ブースの設置がお勧めです。
新しく会議室をつくろうとするとレイアウト変更が必要ですが、ブース式の個室スペースは
置くだけで簡単にWEB会議のできるスペースをつくることができます。
また、在宅⇔オフィスのWEB会議による音問題の解消にもつながります。
パターン4
・今後のオフィスについて様々な考え方があるが、スタンダードは?
・自社にふさわしいワークスペースはどのように考えればいいのだろうか?
→働き方診断ツールをご活用いただくのがおすすめです。
コクヨマーケティングが提供している『はたナビPro』という診断ツールは、「働き方」と「働く環境」
への社員の考えを可視化するツールです。社員にWEBアンケートを実施し集計することで、
定量的且つ客観的に自社の傾向値を判断できます。これにより課題を抽出し、オフィス面積の削減や
レイアウトの変更、新しい働き方を検討することもできます。
Ⅱ移転先選定・契約
つぎは『Ⅱ移転先選定・契約』について見ていきます。
ビル選定には、WEBでビル情報を検索する、または仲介会社に候補をだしていただき、気になるところがあれば、実際に足を運んで内覧し、雰囲気をチェックすることが必要です。また、内覧時には、イメージをつかむためにも、事前にオフィスレイアウトをシミュレーションし、実際にレイアウトを持参することがお勧めです。
ビルの選定時に、立地・賃料・面積以外に、ビルの基本情報(外観、竣工時期、ビルのスペックなど)を比較するために、コクヨでは比較資料作成することができます。もし移転を検討されているお客様がいらっしゃいましたら是非お声がけください。
移転コストの考え方ですが、初期コストだけではなく、ランニングコストもしっかりシミュレーションしておくことが大切です。昨今では、通勤費の実費での支給、感染対策のための社用車用駐車場の拡充などを進める企業も増えています。コクヨでは、移転費用のシミュレーションもできますので、是非ご活用いただければと思います。
契約完了しましたら、最後にやるべきことは現ビルの解約手続きと原状回復です。
ビル解約手続きについては、6か月前に解約通知をださなければいけません。
原状回復については、工事業者はビルオーナー指定の業者に限られている場合が多く、その場合、いつまでに何をするのかしっかりスケジューリングすることが必要です。
さいごに
この後、以下の通りⅢ、Ⅳ、Ⅴとのタスクが続きますが、『Ⅲオフィスプランニング』では設計事務所やデザイン会社が、『Ⅳ移転実施』では引っ越し業者が参画するフェーズとなります。今回はご説明を省略させていただきますが、こちらのタスクはいわゆるパートナーの力を借りて作業を進めるフェーズとなりますので、このあたりに関しても、コクヨにご相談いただきましたら、お手伝いさせていただけますので、是非ご活用ください!
以上、今回は、縮小移転の検討フェーズである『Ⅰ移転計画立案』『Ⅱ移転先選定・契約』を中心に解説いただきました。
最後に、まとめとして、オフィス移転の進め方のポイントをご説明し、本セミナーを終了いたしました。
さて、いかがでしたでしょうか?
新型コロナウイルスの影響でテレワークなど働き方の多様化に伴い、オフィスの縮小移転を検討される企業が増えていますが、これからの働き方をしっかりイメージし、オフィス面積や立地を検討することが必要であることがわかりました。
大好評でした『縮小移転』のWEBセミナーは随時開催しております。
このレポートで掲載しきなかった、他社の事例や今後のセンターオフィスの役割などさらに踏み込んだ内容をご覧いただけますので、ぜひご参加ください!
オフィス移転・改装レイアウトの課題を解決します