テレワークの浸透により、大手企業の都市部から地方への本社移転や、オフィス不要論が注目されるなど、ニューノーマルな働き方やオフィスのあり方について、見直しを検討する企業が増えています。この記事では、オフィス移転やリニューアルを検討する上で、オフィスの縮小についてもご検討されている企業のご担当者様に向けて、ポイントを解説します。
オフィスを縮小する企業が増えている背景や、メリット・デメリット、成功のコツもご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。
オフィス縮小(移転)とは
オフィス縮小とは、オフィスの規模・面積を現在よりも小さくすることです。いまよりもフロア面積の狭い別のオフィスビルへ移転する場合もありますが、移転はせずにフロアを一部返却し、面積を減らす場合もあります。オフィス縮小は、テレワークの定着とオフィスワークのハイブリッドな働き方を前提に進められるのが一般的です。
オフィスの縮小を検討・実施する企業が増加している背景
オフィス縮小を検討・実施する企業が増加している背景には、テレワークの定着でオフィスへの出社率が下がり、今のオフィス面積に余剰が出てきたことがあげられます。また、ICTの普及によりオフィスへ出社しなくても対応できる業務範囲が増えたこともひとつです。
働き方改革はこれまでも行われてきましたが、これを機に、在宅勤務やテレワーク、サテライトオフィスを導入してオフィスを分散させるなど、オフィス縮小により、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方へ移行し、テレワークとオフィスワークを両立させることで、社員の満足度を向上させたり生産性を向上させたりする狙いもあります。
このように、働き方は社会情勢とともに変化しており、オフィスにも変革が必要になってきているのです。
オフィス縮小のメリット
オフィス縮小にはどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に解説します。
賃料等、様々なコストの削減が期待できる
オフィスを縮小すると、まず代表的なコストとして、フロア面積が削減される分、オフィス賃料の削減が期待できます。そのほか、光熱費など固定費の削減が期待できるほか、オフィス家具やプリンターなどの設備や備品も最小限に抑えられます。
テレワークを前提とした場合、社員に支給する交通費の削減も期待できます。書類の電子化などICTツールの有効活用でペーパーレス化が進むと、自宅、オフィス、カフェやサテライトオフィスなど働く場所の自由度が増し、移動時間の削減にもつながるでしょう。
なお、移転によるオフィス縮小の場合、テナントビルの坪単価など賃料は上がる可能性がありますが、オフィスを縮小して今よりも立地の良い場所へ移転する企業もあります。
生産性の向上、業務の効率化につながる可能性がある
オフィスでなければ対応できない業務と、オフィス以外の場所でも対応できる業務を分けることで、業務効率化や生産性の向上も期待できます。オフィスでなければ対応できない業務として、重要な書類を伴った業務や、特殊な機材を使った業務、接客を伴う業務、オフィス以外の場所でも対応できる業務として、資料作成やオンラインでも可能な内容のミーティングなど、社員が業務内容に応じて働く場所を選べることで自律的な働き方が浸透すると、生産性が向上すると考えられます。
新たな働き方に対応した環境を提供しやすくなる
オフィス縮小がきっかけで、ABWやフリードレスを導入する企業も増えています。
これらの働き方は、テレワークの浸透によるコミュニケーション課題を解決する手段として注目されています。たとえば、フリーアドレスで毎日隣の席に座る人が変わることで、テレワークにより接点が減ってしまった他部門メンバーと新しいコミュニケーションが生まれる可能性があります。また、コミュニケーションを促すために、執務スペースは最小限にし、社内カフェのようなリラックスしながらコミュニケーションができるスペースや、オフィスでも周囲への音漏れを気にすることなくWEB会議ができる専用ブースなど、テレワーク時代ならではの課題に対応したスペースを設置する企業もあります。
働く環境の快適性が上がることで社員満足度が向上するだけでなく、来客時など外部へのイメージアップにつながるほか、採用時にオフィスを案内したり、オフィスをホームページに掲載したりすることで新しい働き方や働く環境を積極的にアピールする企業も増えてきています。
オフィス縮小のデメリット(課題・注意点)
オフィス縮小にはデメリットもあります。ここでは、具体的な課題や注意点を解説します。
移転やレイアウト変更に伴う、各種費用や手間が発生する
オフィスを縮小すれば、家賃や光熱費といった日々のコスト削減は期待できますが、移転をする場合、引っ越し費用や移転先オフィスの構築の費用がかかります。また、現オフィスの契約を解除する場合、一般的に解約日の6か月前にビル管理会社やオーナーへ「解約通知」を出す必要があるほか、現オフィスの原状回復工事も必要です。
移転せずに現オフィスのフロア面積を縮小する場合も、レイアウト変更や電気工事・内装工事が発生します。準備期間に余裕を持っておく、まとまった予算を用意しておくなど、入念に準備を進める必要があるでしょう。
テレワークのデメリットにも注意
オフィスの縮小とともにテレワークの導入を進める場合、テレワークのデメリットもよく理解しておく必要があります。
テレワークでは社員同士が離れた場所で働くため、コミュニケーションが不足したり、チームワークが低下したりする可能性があります。対面で中々会えない場合、信頼関係の構築も簡単ではなくなり、部下の育成や管理にも課題が生じる場合が多いようです。
テレワークのデメリットを解決するための一つの解決策として、ビジネスチャットやオンラインミーティングツールなど、コミュニケーションツールを使うと効果的でしょう。また、自宅やカフェ、サテライトオフィスなど、オフィス以外で業務を進めるには、ネットワーク環境の整備も必要不可欠です。書類の電子化・ペーパーレス化やセキュリティ対策も進める必要があります。
オフィス縮小が社員のモチベーション低下につながらないよう注意が必要
オフィス縮小は、社員に配慮しながら進めるようにしましょう。賃料など経費削減を優先しすぎると、働く環境への不満がつのり、社員のモチベーションを低下させる恐れがあります。単にオフィスを狭くするだけでなく、働きやすい環境づくりに力を入れる必要があります。同時に、新しい働き方へ移行する機会として、社員に理解を促すようにしましょう。
オフィス縮小を成功させるためのポイント
ここでは、オフィス縮小を成功させるための、具体的なポイントを解説します。
長期的な視点で、現時点でのオフィス縮小の必要性の有無を確認する
オフィス縮小は、自社の経営戦略や事業計画を考慮して進めるようにしましょう。オフィスを縮小した後で組織再編や人員増となり、すぐにオフィスの拡張を検討する事態にならないようにしてください。また、今後もテレワークとオフィスワークのハイブリッドな働き方を前提としているのか、オフィスワークを中心とした働き方が理想なのか等、社員の働き方についても同時に検討するようにしましょう。
オフィス縮小の目的を明確化する
オフィスを縮小する目的は企業によって異なるため、コストを削減して生産性を向上させたい、働く場所を分散することでBCP対策を強化したい、社員に自律的に働き方を促したいなど、目的を明確にしておきましょう。新しい働き方を浸透させるためには、社員にもオフィス縮小の目的を共有し、理解を得たうえで準備を進めるとスムーズです。
また、目的に合わせて、どのような効果を期待するのかイメージしておきましょう。生産性や効率性をはかる指標を置き、オフィス縮小後も定期的に把握することでその後の改善にもつなげやすくなります。定期的にアンケートを実施し、働き方に対する社員の現状を把握しておくとよいでしょう。
費用対効果が得られるかの確認もしっかりと行う
オフィスを縮小するためには、移転やレイアウト変更など、ある程度の時間とコストがかかります。オフィスの縮小後に削減できるコストを具体的に計算したうえで、期待している費用対効果を得られるかシミュレーションしておくとよいでしょう。コミュニケーションツールなどを新たに導入する場合、ランニングコストもかかってきますので、追加投資としてどれくらい必要なのかも把握しておくようにしましょう。
オフィス縮小後の働き方に必要な社内整備を行う
オフィスを縮小する場合、レイアウト変更が必要となります。一緒にフリーアドレスの導入を考えている場合は、フリーアドレスに最適なオフィスレイアウトやデスク・イスなどの備品が必要です。フリーアドレスの運用ルールもあるとスムーズでしょう。テレワークの場合、クラウドツールや情報共有ソフトなどの導入も進めなければなりません。そのほか、人事評価や出退勤管理をどのように行うか検討し、テレワークに適するルールづくりを進めましょう。
オフィス縮小に移転を伴う場合は.移行までのスケジュールを綿密に立てる
オフィスの縮小移転をする場合は、細かいスケジュールを立てたうえで準備を進める必要があります。すでに触れたとおり、オフィスを縮小するためには働き方のルールや制度の刷新、新しいツールの導入、そのほか、新しい働き方やツールの使い方を社員へ説明し浸透させるなど、様々な準備が必要となります。
一般的に、オフィス移転は約8カ月程度の準備期間が必要となります。専門業者のサポートも得ながら、すべてにきちんと対応できるよう、計画的に取り組みましょう。
【その他・参考1】オフィスの人数に対する適正面積とは
オフィスの面積は、オフィスにいる人数に対してどの程度にすればいいのでしょうか。
コクヨ調べでは、オフィスの1人あたりの面積は約8.55平方メートル程度となっていす。
ザイマックス不動産総合研究所では、「一人あたりのオフィス面積調査」を毎年公開しています。これによれば、オフィスにおける1人あたりの面積は、世の中の動向や景気などによって変化していますが、2019年度のレポート(※1)では、東京23区の1人あたりのオフィス面積は3.71坪(12.26平方メートル)でした。テレワークやフリーアドレスの導入により、縮小が進んでいます。
2020年5月14日には経団連から、新型コロナウイルス感染予防対策を行う際の参考として「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(※2)」が明示されました(2020年12月1日改訂、2021年4月13日再訂)。
そこでは「仕切りがなく対面する場合には、顔の正面からできる限り2メートルを目安に、一定の距離を保てるよう、工夫する」とあり、感染予防対策も並行しながらレイアウトを考慮する必要があります。
【参考サイト(外部リンク)】
※1 1人あたりオフィス面積調査(2019年) ザイマックス不動産総合研究所
※2「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」一般財団法人日本経済団体連合会
【その他・参考2】オフィス分散とは
続いて、オフィス分散にも目を向けてみましょう。
オフィス分散とは、サテライトオフィスやシェアオフィス・コワーキングスペースなどの活用により業務を行う場所を複数にわけることです。テレワークやオフィス縮小などとともに、導入を進める企業が増えています。
【参考サイト(外部リンク)】
サテライトオフィスサービス「ZXY」
コワーキングスペースCreative Lounge MOV
オフィス分散のメリット・デメリット
オフィス分散に取り組めば、オフィスよりも近い場所にあるサテライトオフィスへ出勤できるため、社員の働きやすさにもつながりますし、移動時間や交通費の削減にもつながります。人材の確保や商圏の拡大も目指せる可能性が高いです。また、災害時や感染症の流行時も混乱せず、そのまま事業を継続しやすいでしょう。
一方で、社員が複数の場所で働くため、コミュニケーション不足が生じる恐れがあります。社員が不安を感じたり組織力が低下したりするリスクもあるため、対策が必要です。セキュリティへの配慮も忘れてはいけません。また、業務管理や出退勤管理のルールもテレワーク同様、整備しておく必要があります。
縮小や分散、拡大によりオフィスの在り方はどう変化していくか
コロナをきっかけに、多くの企業では、社員の感染防止対策として在宅勤務やWEB会議などを余儀なくされましたが、それらの利便性や効率性を実感することにもつながりました。一方で、業務進捗が見えない、雑談しにくい、組織を超えたコミュニケーションの機会が減った等、自律的な働き方のサポートやオンラインでのコミュニケーションに関する新たな課題も出てきました。
今後、業務のデジタル化やテレワークはさらに浸透していくと思われますが、これからは「なぜオフィスに行くのか」といったオフィスの意義や役割がこれまで以上に問われるのではないでしょうか。そうすると、オフィスは高機能や専門性、個・組織・社会をつなぐ役割の重要性が高まるとともに、今回のようなパンデミックが起きても柔軟に変化に対応できる働き方とオフィスへと転換を図っていくことが求められていくでしょう。
その時に、オフィスを縮小するのか、分散するのか、いずれにしても、社員にとって働きやすい環境を構築できるようにしましょう。
まとめ
テレワークの浸透とともに、オフィスの縮小を検討する企業が増えています。オフィスを縮小する際は目的を明確にし、社員にとって最適な環境を整えられるように配慮しましょう。
コクヨマーケティングは、年間25,000件以上のオフィス移転やレイアウト変更などをサポートしています。運用までワンストップで支援できるため、ぜひオフィスの移転やリニューアルについて相談してください。
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