新型コロナウイルスの出現によって、在宅勤務やテレワークを経験し「作業をこなすだけならオフィス以外の場所でもできる」ということを実感された方も多いのではないでしょうか。
このような急速な働き方の変化を踏まえ、これからのオフィスに求められる役割を考えた時、「オフィスは効率的な作業の場」としてだけでなくコミュニケーションを通して「新しい発想を生み出す場」としての役割が今まで以上に期待されています。
その役割を担う機能として「オフィスのカフェスペース」が注目を集めています。
今回は、オフィスカフェに人気が出ている理由、活用方法、導入の効果、導入事例・導入方法などを解説します。
オフィスカフェとは?
まずは、オフィスにおけるカフェスペースとは、どのような空間なのか、また従来の休憩スペースとはどのような違いがあるのかをご紹介します。
オフィスにおけるカフェスペースとは、単にお茶やコーヒーを飲みながら休憩するスペースではなく、木目調の家具や植栽などを配置し、デスクエリアや会議室とは異なる「まるでおしゃれなカフェにいるかのような空間」を演出することで、リラックス効果やリフレッシュ効果をもたらすよう設計された場のことです。
その用途は様々で、個人ワークや打ち合わせ、Web会議という業務に加えて、昼食や勉強会、イベントと多目的に利用でることから、快適に働ける新たなコミュニケーションの場として注目されています。別名、オフィスラウンジとも呼ばれています。
従来の「社員食堂」や「休憩室」との違い
従来からある「社員食堂」や「休憩室」は、執務スペースとは隔離された場所にある「昼食をとるための専用の部屋」という目的で設置されているケースが多く、用途が限られていることから、家具やインテリアは必要最低限のもので構成するというのが一般的でした。
一方で、カフェスペースは、先述のとおり、昼食時の利用はもちろんのこと、就業中のON-OFFの切替えや、カジュアルなミーティング、休息など様々な用途で利用されます。
また、社員が気軽に利用できるように、設置場所は、執務スペースの一角に設けられるケースが多く、レイアウトや内装デザインに変化を持たせ、執務スペースとは異なる空間を作っているというのが特徴です。
オフィスカフェが増加している理由
最近、急速に一般化する傾向を見せているオフィスのカフェスペース。人気の理由や増加の背景をご紹介します。
リラックスした雰囲気の中で働くことで創造性を発揮する
近年、働き方の多様化により、効率性だけでなくアイデアや創造性が求められる場面が増えています。働く人たちが創造性を発揮するためには、従来のオフィス環境に留まらずより自由でリラックスした雰囲気の中で働くことも大切です。
そのため、おしゃれなカフェを意識した木目調の家具やグリーンでコーディネートし、従来の執務スペースとは違う空間をつくることが、新たな発想が生まれやすい環境づくりにつながるという考えが広がり、それを実現する手段の一つとして、オフィス内にカフェスペースを設置する会社が増えています。
コミュニケーションが活性化する
「インフォーマルコミュニケーション」という言葉をご存知でしょうか。
インフォーマルコミュニケーションとは、「偶然に出会った人同士が、自分の仕事内容や日常的な出来事を会話することから生まれるコミュニケーション」という意味です。
最近は、いろいろな人と話す機会をつくったり、時間・場所をコントロールしたりすることで、仕事に役立つ知見が得られる、メンバー間の理解が深まるなどポジティブに捉える傾向があり、インフォーマルコミュニケーションを加速させるための仕掛けとして、オフィス内のカフェスペースが注目を集めています。
また、コロナ禍で、リモートワークが進み、「仕事の効率化が図れた」と感じる方がいる一方で、オフィス以外の場所でも仕事ができる環境になり、出社頻度が減ったことから「雑談など業務以外の気軽なコミュニケーションの頻度は減ってしまったと」と感じている方も多いと思います。
そのため、オフィスに出社した時は、社員同士のコミュニケーションを大切にしたいという考えが広がっていることから、インフォーマルコミュニケーションの誘発に効果的なオフィス内のカフェスペースは、より一層、増加するでしょう。
オフィスカフェの活用方法
いわゆる「休憩スペース」としてだけではない、オフィスカフェの活用方法をご紹介します。
簡単なミーティングスペース
カジュアルなミーティングをする場としてカフェスペースを活用することができます。移動式のホワイトボードやモニターなどを用意しておけば、空いている席で、「ぱっと打合せ」することが可能に。(参考商品:コクヨ モビーボ)
ただし、フレッシュスペースを兼ねる場合は、「ミーティングの利用者が多すぎてくつろげない」ということにならないよう席数や運用に配慮しましょう。
情報をインプットする場
カフェスペースに、ドリンクコーナーだけでなく、デジタルサイネージや掲示板などを設置することで、コーヒーでひと息つきながら情報をインプットすることも可能となります。また、書棚を設置してライブラリーコーナーを作るのもおすすめです。
静かにひとりで気分を切替える
気分転換には、誰かとコミュニケーションを取ることも有効な手段のひとつではありますが、時にはひとりでリラックスしながら思考を整理したり、ひと息ついたりしたい時もあるかと思います。
そのようなシーンにも対応できるよう、周囲の視線が気にならないように緩く空間を仕切ったり、一人でゆったりと座ることのできるチェアーを配置したりするのもおすすめです。(参考商品:コクヨ ノーション)
交流のためのイベント空間
カフェスペースは、イベントを行う空間として活用されるケースも多くあります。 イベント利用も想定してオフィスカフェを作る場合には、スペースが作りやすいよう、 動かしやすく、収納効率のよい家具がおすすめです。
また、セミナーやイベント時に使用する場合は、スクリーンやマイク設備などの位置をあらかじめ考慮しましょう。
外部の方の利用がある場合は、トイレへの動線とセキュリティを確認も必要です。
オフィスカフェから得られる3つの効果
オフィスカフェを作ることで得られる効果は非常に多くあります。ここでは、主に3つの効果について解説します。
心理的安全性を高める効果
今、オフィスのトレンドワードとして「心理的安全性」という言葉が注目されています。
心理的安全性とは、「チームの中で安心して自分を出せる」と思えている状態を表す心理学の用語です。2016年に米グーグル社が「心理的安全性の高いチームは生産性が高い」という報告を発表して以来、注目されています。
チームの中でメンバーが安心して発言し、生産性につなげていくためにはICTでつながる仕組みと共に、雑談を促すオフィスレイアウトや、温かな交流のうまれるカフェスペースなどの空間づくりも有効であると言われています。
仕事の生産性を高める効果
コクヨがワーカーに対して行った調査では、「リフレッシュスペース・休憩スペースが充実していることが“仕事の生産性”に良い影響を与えると思う人の割合が77%」という結果が出ています。
このことから、オフィス内のカフェスペースを始めとした「業務中のON-OFF切替えができる場」が充実していることが仕事の生産性と相関関係があることが分かります。
人材確保のためのアピールとなる
オフィス環境の良さは、採用活動にも大きく影響を及ぼします。オフィスが快適かどうかというのは、その会社が社員のことを大切にしているかどうかを表す鏡とも言えます。
オフィスへの設備投資や環境整備にかかる費用を単にコストと考えるのか、社員のパフォーマンスを上げるための投資と考えるのかは、会社によって様々です。
採用面接時、会議室で行いそのまま帰るというのが一般的なスタイルですが、最近は、面接後に、オフィス内を案内し、オフィスの快適性や社員がイキイキと働いている様子を求職者の方に見せ、自社をアピールするなど、オフィスを戦略的に活用するという動きも増えています。
また、快適なオフィス環境というのは、採用活動に良い影響をもたらすだけではありません。
在職中の社員に対しては、会社への帰属意識を高め、人材が定着し組織の持続的な成長にもつながるといった効果もあります。
オフィスカフェの事例6選
コクヨマーケティングが手掛けた「オフィスカフェ」の事例をご紹介します。
【働く人の環境を第一に考えたオフィスカフェスペース】
一般社団法人日本自動車連盟 様
リフレッシュ空間のパントリースペース。 小休憩やランチタイムにカジュアルに雑談を楽しむことができる場所です。リフレッシュスペースの奥には、靴を脱いでくつろげる小上がりスペースを設置。 コールセンター業務で24時間稼働するオフィスのため、時には仮眠スペースとしても利用することも想定し、畳の部屋を用意。
【執務スペースから緩やかに区切った多目的なカフェスペース】
クローダジャパン株式会社 様
リフレッシュやオープンミーティング、多目的に使用できる空間。 ホワイトボードやモニター等打ち合わせしやすいツールも設置。木調のルーバーで、執務室から繋がる空間を緩やかに仕切っています。
【共用ラウンジの一角に設けたキッチンコーナー】
株式会社浜野製作所 様
ミーティング・セミナーや外部との交流イベントなどを行う共同ラウンジの一角にキッチンスペースを設置。コーポレートカラーの赤でまとめた自然と人が集まってくる場所です。
【人×知識×アイデア×アソビが交わる共創空間】
株式会社バンダイナムコエンターテインメント 様
グランピングをイメージしたフリースペース。奥にはパターゴルフができるスペースも。カフェを備え「リフレッシュ」「リラックス」「カジュアルな打合せ」など多用途に使用できる空間です。
【既存食堂をリフレッシュスペースにリニューアル】
東レエンジニアリング株式会社様
憩いの場らしく、内装・家具をナチュラルテイストで統一。空間のポイントになるようカウンターも設置。
【靴を脱いで使用する“小上がり”のあるオフィスカフェスペース】
西部ガスリビング株式会社 様
優しい色の家具とグリーンを配置することで、よりリラックスできる空間を演出。様々なデザインのイスが設置されており、その時の気分に合わせて選択が可能。靴を脱いで使用する小上がりの空間もあります。
オフィスにカフェを作る2つのパターン
オフィスの中に「省スペースで簡単にカフェを作る方法」から「本格的なカフェの作り方」までご紹介します。
省スペースでもつくれるオフィスカフェ
ここまで、オフィスのカフェスペースの効果や活用方法についてご紹介しましたが、「カフェを設置したいけど、うちにはそんな余剰スペースない!」というケースも多いのではないでしょうか。
オフィスのカフェスペースと聞くと、広い場所が必要というイメージを持たれると思いますが、現在は様々なタイプの家具が出ていますので、省スペースでも設置することが可能です。
また、カフェを設置するために、社員食堂のような別室を設ける必要はありません。
むしろ、執務スペースと隣接している方が別室に構えるよりも気軽に立ち寄ることができるため、「仕事中にひと息入れたいからちょっとカフェに行こう」ということが簡単にできます。
オフィスのメイン通路に面した場所にあれば、カフェに知り合いがいるのが見えたら話しかけに行くこともできますので、そこからコミュニケーションが広がるというメリットもあります。
<省スペースオフィスの場合は、機能を絞り、運用でカバーする>
「カフェ=水道を設置しないといけない」と考えてしまうと、設置場所の制限や大掛かりな水回りの工事が必要となり、とたんにハードルがあがってしまいます。
そのため、設置スペースに限りがある場合には、水回りの機能は設けず、ドリンク類は「自動販売機で購入する」、「内部に排水タンクが設置されているコーヒーマシンを導入する」「飲み残しは給湯室のシンクに捨てる」といった運用にし、機能を絞ることで省スペースオフィスでも設置することが可能となります。
<省スペースオフィスでのオフィスカフェ設置例>
省スペースオフィスでも設置できるオフィスカフェの例をご紹介します。
ハイカウンターでカフェ風の空間を構築
コンパクトなスペースにハイカウンターを備えたカフェスペース。執務中と姿勢を変えることで気分転換を図ります。
デザイン性の高い家具を配置し手軽にカフェ空間をつくる
木目調のデスクとグリーンをオフィス内に置くだけで、カフェ風の居心地のよい雰囲気を演出することができます。設置する際は、執務スペースとは異なる床材を用いるのがおすすめです。簡単に空間に変化を与えることができ、モードチェンジを促す効果が高まります。(参考商品:コクヨ パティオPatio)
ワゴンで手軽にミニマルなカフェコーナーをつくる
ワゴン型のコンパクトなカフェコーナー。コーヒーメーカーやお菓子をセットし、オフィス内に置くだけで、自然と人が集まるコミュニケーションスポットに。(参考商品:コクヨ ウェルカWelca)
本格的なオフィスカフェの設置方法
スペースに余裕があり、加えて予算も割ける場合には、簡易的なかたちではなく、より本格的にオフィスカフェを設置するという選択肢もあります。
木目調の家具でコーディネートし、同時に、カフェカウンター、くつろいでゆったりと座れるローテーブル、イベントや休憩でも利用できる小上がりのような高低差のついたソファー席など座席にバリエーションを持たせ、目的に応じて座る席を選べるようにすると活用度の高いスペースとなるでしょう。 (参考商品:コクヨ デイズオフィスDAYSOFFICE)
カフェ風オフィスのつくり方については、こちらの記事も併せてご覧ください。
まとめ
今回は、オフィスにおけるカフェスペースについて、その特徴や効果、設置事例などをご紹介しました。
オフィスにカフェスペースを設置することで、社内のコミュニケーションの促進や生産性の向上に貢献するなど様々な良い効果をもたらすことが分かっています。
リモートワークが進んだことにより、オフィスのあり方、対面によるリアルなコミュニケーションの効果についても改めて見直されている方も多いと思います。
コクヨマーケティングでは、コクヨグループ年間25,000件の実績から、お客様の働き方やありたい姿に合わせ最適なオフィス環境をご提案いたします。
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