新型コロナウィルス感染拡大により、テレワークや時差出勤、ABW※が推進されるなど、短期間のうちに働き方は大きく変化しました。
そのような変化の中で、ITツールの整備や制度設計と共に、オフィスの意味を改めて問い直し、働く環境の見直しを検討している方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、これからの時代のオフィスづくりや、オフィスのリニューアル・移転・増床・減床を検討する際におさえておくべき5つの視点をご紹介します。
※ABW:仕事の内容によって「時間」と「場所」を自由に選択する働き方 「Activity Based Working」の略です。
オフィス移転やリニューアルに潜むリスク
冒頭でも触れましたとおり、今、世の中は新型コロナウィルス感染拡大の影響でオフィス環境や働き方が変わりつつあります。
そういった状況下で危険なのは、「目の前の課題」にとらわれ、拙速にオフィス縮小やリニューアルを進めてしまうことです。
コスト削減を優先したオフィス縮小やリニューアルは、オフィスの快適性低下やそれに起因する人材の流出等を引き起こす可能性があることも忘れてはいけません。
なぜならば、働く環境というのは、社員のモチベーションや生産性、仕事の効率などと密接な関係があるからです。
あくまでもオフィス移転やリニューアルは手段であり、オフィス移転やリニューアルによって得られる成果や目指すべき働き方(理想の働き方)を明確にしておくことが大切です。
そして、仕事の内容に合わせて場所や時間を選ぶ働き方(ABW)が浸透しつつある今、働く場はオフィスに限らず、自宅やカフェなども働く場としてとらえ、俯瞰的な視点でオフィスの在り方を見直すことが重要であることから、オフィスをはじめとした働く環境を見直す際は、従来よりも一層、緻密さが求められているのです。
では、具体的にはどのように考えればよいのでしょうか。
オフィスや働き方を見直す際は、次に示す5つの視点をおさえることが大切です。
オフィス移転やリニューアルの際におさえておくべき5つの視点
コクヨは長年オフィスづくりに携わってきた経験から、オフィスや働き方を見直す際は、以下の5つの視点をおさえておくことが重要であると考えています。
①効率性
働く環境における「効率性」が高い状態とは「ムダがなく、より良い成果が出せる環境」のことです。
例えば、「デスク上に書類が乱雑に積まれていて、業務で必要な書類を探し出すのに時間がかかる」といった状況では、効率性が高いとはいえません。
②快適性
働く環境における「快適性」が高い状況とは「誰もが気持ちよく働ける環境」のことです。
例えば、仕事中にひと息つける「リフレッシュスペース」があり、社員に活用されているオフィスは、快適性が高いといえるでしょう。
③創造性
「創造性」が高い状況とは、例えば、「個人もしくは、チームでアイデアを練るときに、アイデア出しを促進する環境がある」ということです。
「一人で集中して物事を考えたい時は、個人用のブース席がある」「チームでアイデアを出し合いたい時には、カジュアルな雰囲気のミーティングスペースがある」などが挙げられます。
④ABW(エービーダブリュー)
「ABW」とはActivity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」の略で、「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方のことです。
ABWは元々オランダから始まったワークスタイルで、従来はグローバル企業で採用するケースが多かったのですが、コロナ以降、ABW的な働き方というのは、日本企業にも急速に浸透しつつあり、これからの働き方やオフィスづくりにおいて無視できない視点です。
広義でのABWとは、自宅やカフェなど、オフィス以外の場所も働く場として捉え、制度やITツールに不足がないかを考えます。
狭義のABWとは、オフィス内に自席以外でも働ける場をつくり、集中ワークの時は個人ブースで仕事したり、リラックスしながらアイデアを練りたいときには、社内に設けられたカフェスペースで仕事をしたりと、仕事の内容によって、オフィス内のスペースを自由に選択して働くといったことを指しますので、そういった働き方を実現できる設えになっているか、ITツールは整っているかを考えます。
⑤あんしん、あんぜんの担保
ここで指す「あんしん・あんぜん」とは、防災備蓄や感染拡大防止策、セキュリティのことです。
防災備蓄に関しては、ABWが浸透することで、従来の方法では対応できない可能性もあります。オフィス外で働く社員への対応や防災管理者が在宅勤務時の対応など踏まえた上で、防災計画を検討する必要があります。
また感染拡大防止策では、飛沫拡散防止の措置が取られているかといった予防の面や感染者発生時、濃厚接触者特定のための行動履歴が追えるようになっているといった発生時の備えも大切です。
そして、セキュリティ面では、オフィス内のセキュリティレベルに合わせてゾーニングがされているか等、情報漏えいを防ぐための対策も忘れてはなりません。
5つの視点で重要度・満足度を図り今の状態を可視化する
重要なのは、先にご紹介した5つの視点で現状のオフィスや働き方を振り返った時に、自社にとって「特にどの部分が重要なのか(重要度)」、「どの部分が満たされていないのか(満足度)」を把握することです。
重要度と満足度の開きが大きい部分が優先的に解決すべき課題です。
例えば、「効率性」の指標で「会議室の効率的な運用」に関する重要度が高いとします。
しかし、実情は「10人部屋なのに、2~3人で使用していることが多い。効率的に運用されておらず、満足度が低い状態」であれば、「会議室を人数に合わせてフレキシブルにレイアウト変更できる設えにする」が解決策の一つとして挙げられます。
重要度や満足度を測る際は、社員様1人1人の声に耳を傾け、その上で課題の優先順位付けをし、どこにコストをかけるのかを定量的なデータをもって判断することが大切です。
ただし、社員様1人1人の声に耳を傾けるといっても、実際に意見を聞いて周るのは、とても労力がかかる作業ですので、Google Formなど無料で使えるアンケート作成ツールなどを活用すると良いでしょう。アンケート項目は、先に挙げた5つの視点を参考にしてみてください。
オフィス移転やリニューアルを検討されている方は、今回ご紹介した5つの視点をポイントに、社員様の声も取り入れながら、今のオフィスや働き方の課題を見つけ、よりよいオフィスづくりにつなげていただければと思います。
コクヨでは、はたナビプロという社員様1人1人に、WEBを通じてアンケートをとり、働く環境の満足度や重要度の指標で診断結果を無料でご提出する診断ツールをご用意しています。
はたナビ プロは、コクヨが今までに蓄積した30,000名以上のワーカーの実績平均値と比較することが可能ですので、自社の働く環境の現状を定量的かつ客観的に評価することができます。
現在、民間企業様や官公庁様など業種業界問わず、幅広いお客様にご活用いただいています。
「はたナビ プロ」を実施された総務担当者様の声
<社員の声を反映したオフィスプランニングが可能となる>
今までは、総務部や経営層のみでプランを策定していましたが、はたナビ プロで1人1人の声を聞き、プランニングに参画してもらうことで、社員からは「会社に対する愛着や、帰属意識が高まった」との声がでるなど、社員の意識の変化を感じています。
<投資判断材料としても活用できる>
優先課題を定量的に把握し、根拠をもって解決策を経営層に上申することで、投資判断のスピード上がったと感じます。
<効果測定ができる>
オフィスリニューアル後に、再度同じアンケートをとることで、リニューアルによって数値にどれくらい変化(効果)があったのかを知ることができました。リニューアルによる効果は、人の感情に左右される部分が大きく、定量的に測ることが難しいと思っていたので、実施して良かったなと思います。
コクヨマーケティングは、オフィスづくりのプロとして、診断結果から課題を紐解き、将来のありたい姿を見据えた新しい働き方、オフィスづくりのご提案をさせていただきます。ぜひ、お気軽にご相談ください。
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