オフィスの移転は、企業の成長や組織再編、業務効率化など、さまざまな理由で行われます。ただし、そのプロセスは大規模ゆえに多岐にわたり、計画的かつ組織的な進行が求められます。そんなオフィス移転プロジェクトにおいて重要となるのが、プロジェクトマネジメント(Project Management:PM)です。
オフィス移転のプロジェクトマネジメントは、専門知識と豊富なノウハウを持つ外部の専門会社に委託することが多いですが、その際にはどのような点をチェックすればいいのでしょうか。この記事では、オフィス移転におけるプロジェクトマネジメントの役割とプロジェクト実行における流れのほか、委託先の選び方について解説します。
オフィス移転を成功に導くプロジェクトマネジメント
オフィス移転のプロジェクトマネジメントとは、オフィス移転に関わるすべての業務を計画・実行・確認し、プロジェクトを成功に導くための一連のプロセスを指します。
オフィス移転のプロジェクトは、多岐にわたるタスクを同時進行で進めていく必要があります。具体的には、下記のとおりです。
<オフィス移転プロジェクトにおけるタスクの例>
・基本計画の策定
・スケジュールの検討
・現オフィスの課題把握
・現オフィスの解約と原状回復
・新オフィスの物件選定・契約
・パートナー選定
・プロジェクトメンバー選定
・ゾーニング・レイアウト設計
・各種工事の手配
・移転告知、社内説明会
・家具、設備の調達
・引越し業者の選定と手配
・各種検査対応
・各種手続き・届出
・予算管理
・社内、社外関係者間の調整 など
こちらの冊子で詳しくご紹介していますのでぜひ併せてご覧ください。
コクヨ式オフィスのつくり方vol.3
オフィス移転プロジェクトは、基本的には総務担当者がプロジェクトマネージャーを担うケースが多くみられます。しかし、通常業務と同時進行となるため、担当者に大きな負担がかかるので注意が必要です。
また、企業規模によっては大掛かりなタスクになるため、専門知識やノウハウがないと計画に遅れが生じたり、進行に支障をきたしたりするリスクが否めません。
そのため、自社のコア業務に集中するためにも、移転プロジェクト業務の大部分を、専門的な知見を持つ外部の専門会社に委託する傾向があります。
オフィス移転におけるプロジェクトマネジメントの流れ
オフィス移転を成功させるためには、計画から実行、そして移転後のフォローまで、各段階を適切に管理する必要があります。ここでは、オフィス移転におけるプロジェクトマネジメントの流れを、6つのステップに分けて解説します。
1. オフィス移転の目的を明確にする
現状のオフィスにおける課題や問題点を洗い出し、従業員へのアンケートやヒアリングを通して、移転によって解決したい課題と移転目的を明確にしましょう。例えば、下記のような課題が考えられます。
<オフィス移転を必要とする課題の例>
- 従業員増加に伴う執務スペースの確保
- 情報管理の脆弱性対策
- オフィス環境改善による従業員のモチベーション向上・従業員間・部門間のコミュニケーション活性化・オフィス維持にかかる経費の削減
これらの課題を解決し、どのようなオフィスを実現したいのかを明確にすることで、移転の方向性を定められます。
なお、現状のオフィスの課題を効率的に収集し、分析する手段としては、コクヨの「はたナビ プロ」の活用が有効です。
はたナビ プロは、ウェブアンケートを通じて従業員一人ひとりの声から課題を可視化した「働く環境診断サービス」で、診断ツールを用いて客観的かつ定量的なデータが取得可能です。また、他社とのベンチマーク比較ができるため、他社とのギャップや自社の課題を明確に把握できます。
コクヨの働く環境診断「はたナビ プロ」は、こちらのページでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
2. 移転計画を立案・進行管理する
現状の課題を把握し、オフィス移転の目的が明確になったら、具体的な移転計画を立案します。オフィス移転は、物件探しを含めると約15ヵ月程度の準備期間が必要です。
例えば、最大300人程度のオフィス移転を想定した計画は、下記のようになります。
■オフィス移転プロジェクトにおける計画例
▲オフィス移転チェックリスト(スケジュール表)|ダウンロードはこちら
オフィス移転のスケジュールについては、こちらのページでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
3. 社内説明会を行う
引越しの日程が決まったら、社員に対する引越し説明会を開催します。
新オフィス移転後のレイアウトや書類収納庫の棚割りのほか、パソコンなどの電子機器の移動方法、廃棄物の処理方法や作業スケジュールを説明してください。それらに加え、新オフィスのコンセプトや、新オフィスでどのような働き方をするのかといったことも、この説明会のタイミングで社員へ共有するようにしましょう。
なお、現在入居中のオフィスで使用している家具什器を移転先で再利用する場合は、現場調査で廃棄分と区別し、引越し時に確実に移動させる必要があります。
引っ越し説明会用の資料フォーマットについては、こちらのページでご紹介していますので、ぜひダウンロードの上、ご活用ください。
4. 各種手続きを行う
オフィス移転時には、さまざまな手続きを行う必要があります。オフィス移転における手続きに必要な公的書類と提出先は、下記のとおりです。
オフィス移転に伴う行政手続き一覧
手続き・届出 | 提出先 | 提出期限 | 備考 | チェック |
---|---|---|---|---|
本店移転登記 | 移転前の管轄法務局(登記所) | 移転後2週間以内 | □ | |
支店移転登記 | 支店管轄法務局(登記所) | 移転後3週間以内 | □ | |
異動届出書 | 移転前の管轄税務署 | 移転後速やかに | □ | |
法人住所変更届 | 税務署 | 移転後1ヶ月以内 | 税務署、都道府県税事務所、市区町村役所にそれぞれ提出が必要。地域によっては一括申請が可能な場合あり。オンライン申請の可能性も要確認。 | □ |
法人住所変更届 | 都道府県税事務所 | 移転後1ヶ月以内 | 同上 | □ |
法人住所変更届 | 市区町村役所 | 移転後1ヶ月以内 | 同上 | □ |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 移転前の管轄税務署 | 移転後1ヶ月以内 | □ | |
健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 移転前の事業所の所在地を管轄する年金事務所 | 移転後5日以内 | □ | |
労働保険名称・所在地等変更届 | 移転先の管轄労働基準監督署 | 変更のあった日の翌日から10日以内 | 労災保険に関する手続き | □ |
雇用保険事業主事業所各種変更届 | 公共職業安定所(ハローワーク) | 移転後10日以内 | □ | |
健康保険・厚生年金保険 被保険者住所変更届 | 年金事務所 | 移転後遅滞なく | □ | |
事業開始等申告書(移転) | 都道府県税事務所 | 移転後1ヶ月以内 | □ | |
自動車保管場所証明申請書 | 管轄警察署 | 移転後速やかに | □ | |
防火対象物使用開始届出書 | 移転先の管轄消防署 | 使用開始前 | 具体的な期限は各消防署に確認が必要 | □ |
防火対象物工事等計画届出書 | 移転先の管轄消防署 | 工事開始の7日前まで | 改装工事等がある場合に必要 | □ |
防火・防災管理者選任(解任)届出書 | 移転先の管轄消防署 | 選任後速やかに | 新たに防火管理者を選任する場合 | □ |
消防計画作成(変更)届出書 | 移転先の管轄消防署 | 作成・変更後速やかに | □ | |
転居届 | 郵便局 | 移転先住所・移転日決定後なるべく速やかに | 旧住所宛の郵便物の転送サービスを受けるため | □ |
▲オフィス移転行政手続き一覧表の無料テンプレート|ダウンロードする
※本表は一般的な行政手続きの概要を示すものです。実際の手続きや提出期限は、企業の形態、地域、移転の規模などによって異なる場合があります。
※記載されている情報は作成時点のものであり、法令改正等により変更される可能性があります。最新の正確な情報については、各管轄機関にお問い合わせください。
このほか、新旧オフィスの賃貸契約手続きや引越しに関する手続きが発生します。また、金融機関や電気・水道などのインフラ関連のほか、インターネット回線などへの切り替え手続きも必要です。取引先への住所変更通知や各種サブスクリプションサービスの住所変更といった手続きもあります。
直前に慌てることのないよう、準備は計画的に進めるようにしましょう。
5. 旧オフィスの原状回復工事を行う
新オフィス移転完了後には、旧オフィスの原状回復工事を行います。原状回復工事とは、借りていたオフィスを借りる前の状態に戻す工事のことです。原状回復工事は専門業者に依頼しますが、契約によってはビルオーナー側の指定業者に依頼しなければならない場合もあるので、注意が必要です。
延滞料などが発生しないよう、原状回復工事は事前にビルオーナーと契約で定めた期日までに、確実に終える必要があります。事前に工事区分の確認や原状回復工事の実施範囲および費用や納期の確認を行いましょう。また、工事完了後には必ず現場の確認を行い、ビルオーナー側に引き渡しましょう。
6. 移転後のオフィスを検証・評価する
オフィス移転後には、プロジェクトマネジメント自体を検証・評価しましょう。また、オフィス移転における当初の目的がどの程度達成されたのか効果検証することも大切です。
効果検証には、先述したコクヨが提供する働く環境診断「はたナビ プロ」などのアンケートツールが有効です。実施前後のデータを比較することで、具体的な成果を把握できます。
また、理想的なオフィス環境の維持には、定期的なチェックが重要です。移転後、半年から1年ごとに現状調査を行い、理想との差異を把握することで、必要な改善点を見出し、より良い職場環境を実現することができます。
オフィスは構築して終わりではなく、組織の成長や働き方の変化に合わせて進化し続けるものです。日々の改善の積み重ねが、より良いオフィスづくりの鍵となります。
オフィス移転のプロジェクトマネジメントを専門会社に依頼するメリット
オフィス移転プロジェクトは、通常業務と同時進行で行うことが多いため、規模次第では企業にとって大きな負担となります。オフィス移転のプロジェクトマネジメントを外部の専門会社に依頼するメリットについて解説します。
オフィス移転をスムーズに実行できる
オフィス移転のプロジェクトマネジメントを担う外部の専門会社は、数多くの移転プロジェクトを成功させてきた実績とノウハウを持っています。そのため、計画立案からコンセプトの設計、移転後の運用やフォローまで、あらゆる段階において、専門的な視点から的確なアドバイスとサポートを提供してくれるでしょう。
これにより、大規模なオフィス移転プロジェクトでも、スムーズに進められます。
社内担当者の負担軽減につながる
オフィス移転は、社内の総務担当者にとっては大きな負担となる傾向があります。通常業務に加えて、移転に関する膨大な量の業務を同時進行でこなさなければならないからです。場合によっては、総務担当者の本来の業務に支障をきたす可能性もあります。
プロジェクトマネジメントを担う外部の専門会社に依頼すれば、関係部署間の調整や業者との交渉なども代行してくれるので、総務担当者の負担を大幅に軽減できます。また、特に初めてのオフィス移転では、スケジュール通りの完了や予期せぬ事態への対応に不安を感じるものです。そんな時は、経験豊富な専門家にプロジェクトマネジメントを任せることで、安心して移転に臨むことができます。
オフィス移転にかかるトータルコストを削減できる
外部の専門会社にオフィス移転のプロジェクトマネジメントを依頼することで、トータルコストを削減できる可能性があります。
外部委託すれば中間マージンもかかるため、自社で行うよりも費用総額は膨れ上がると思うかもしれません。しかし、専門知識と豊富な経験を持つ専門会社に依頼することで、最適な移転計画を立案でき、さまざまなコストを削減できます。また、工事業者との交渉力も高く、適切な契約を結ぶことも可能です。
また、豊富なリスクマネジメントの経験を有していることで、プロジェクトを進める際に発生しがちな各種トラブルも回避できます。結果として、自社内でオフィス移転プロジェクトを進めるよりも、トータルコストを抑えられるケースが多くなります。
オフィス移転のプロジェクトマネジメントを行う専門会社の選び方
オフィス移転のプロジェクトマネジメントを担う専門会社は、どのように選定すればいいのでしょうか。最後に、オフィス移転のプロジェクトマネジメントの委託先を選ぶ際のポイントを解説します。
専門会社の強みと実績で選ぶ
オフィス移転においては、プロジェクトマネジメントを担う専門会社の強みと実績を確認することが重要です。
例えば、不動産会社は物件選定に関するサポートを、また、内装会社は工事全般の施工管理などといったように、それぞれの分野で専門性を持っています。そのほか、オフィスコンサルティング会社やデザイン設計事務所なども、各々の得意分野があります。
自社のニーズに合致した実績を持つ専門会社を選ぶことで、効果的なサポートが期待できるでしょう。
委託可能な範囲の広さで選ぶ
外部委託可能な範囲の広さも、専門会社の選定におけるポイントです。専門会社によって、提供するサービスの範囲は異なるからです。
新オフィスの物件探しのサポートからゾーニング・レイアウト設計のほか、各業者間の調整まで、一気通貫でサポートしているコクヨマーケティングのような会社もあれば、特定分野に特化している会社も存在します。
自社がオフィス移転においてどの範囲を外部委託したいのかを明確にし、それに対応できる専門会社を選ぶことが重要です。
コストパフォーマンスの高さで選ぶ
オフィス移転は多額の費用がかかるプロジェクトであり、予算管理は非常に重要です。予算内で収まるよう、コストパフォーマンスの高い専門会社を選ぶ必要があります。
ただ単に、費用の安さで専門会社を選ぶことのないように注意してください。安価なサービスには、自社が必要なサポートが含まれていない場合や、追加費用が発生するといったリスクも考えられるからです。
専門会社選びの際には、提供されるサービスの品質や範囲のほか、自社のニーズに合致したサービスを提供してもらえるのかで総合的に判断しましょう。
オフィス移転プロジェクトはコクヨマーケティングにお任せください
オフィスの移転プロジェクトは、企業の成長や業務効率化、従業員のコミュニケーション改善と定着率向上など、さまざまな目的で行われます。オフィスの計画立案から移転完了までには、さまざまなタスクをこなす必要があり、プロジェクトマネジメントは専門知識やノウハウが求められるでしょう。
そのようなオフィス移転のプロジェクトマネジメントを、自社の総務担当者が通常業務のかたわらで行うのは、負担が大きいと言わざるを得ません。過度の負担を背負わないようにするためにも、オフィス移転を検討している場合は、実績ある専門業者に相談して進めたいところです。
オフィス移転プロジェクトなら、コクヨグループ年間2万5,000件以上の豊富な実績があるコクヨマーケティングにお任せください。プロジェクトマネジメント経験豊富な担当者が、理想のオフィス空間を実現します。
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新しい働き方やオフィスづくりのヒントをお探しの方は、ぜひコクヨのオフィスへお越しください。
オフィス移転・改装レイアウトの課題を解決します