新型コロナウイルス感染拡大の影響で、テレワークやサテライトオフィスを導入する企業が増えています。また、オフィスの出社率が減少したことにより、オフィス不要論が注目されるなど、オフィスの解約やオフィスの縮小を検討するケースも多くなっています。ここでは、企業の経営者の方やオフィスの移転・縮小を検討するご担当者様に向け、オフィス解約・移転のメリット、流れ、注意点などを解説します。オフィスの運営に、役立ててください。
本コラムでは、オフィス移転や縮小に伴う解約手続きについてご紹介しています。なお、本情報は一般的解説を目的としており、個別の法的助言ではありません。実際の対応は賃貸借契約の内容により大きく異なる場合があります。当社は本情報利用による損害について責任を負いかねます。具体的な法的判断・行動は、必ず適切な専門家にご相談ください。
オフィスを解約・移転するメリット
オフィスを解約・移転するメリットに関し、コストと働きやすさの観点から解説します。
コストの削減ができる
オフィスを解約・移転すると、賃料やインフラにかかわる費用、光熱費、交通費などを削減できます。
都心のような場所に大規模な賃貸オフィスを借りていると、毎月の賃料が固定費としてかかってきます。一方、郊外や地方都市にオフィスを引っ越す、都心でもオフィス面積を縮小し、コンパクトなオフィスを選ぶなどすると、賃料の引き下げが可能です。
またオフィスの規模を縮小すると、オフィス家具やパーテーション、電話、冷暖房設備、LAN回線などのインフラ関連の備品を節約できます。設備を利用する社員が減るため、光熱費などのランニングコストも削減できます。
テレワークを推進している場合は、在宅手当が必要になる場合はありますが、テレワークによりオフィスに出社する頻度が減るため、社員へ支払う交通費や出張費の削減が期待できます。
「働きやすさ」が向上する
オフィスの解約・移転と同時にテレワークを推進すると、働き方の選択肢が増えます。これまで、育児や介護で制限を余儀なくされていた社員も、通勤時間が無くなることで時間の余裕もでてきますし、資料作成に集中したい日は在宅ワークを選択するなど、業務内容やプライベート環境に応じて働く場所を選べるため、働きやすさが向上します。
オフィスの「解約予告期間」とは
オフィスを解約・移転するには、オフィスが入居している建物のオーナーに対し、事前報告が必要となります。契約により多少の差はありますが、解約予告期間は一般的に6カ月程度です。
「解約予告期間」が必要な背景
解約予告期間は、オーナー(貸主)の収入維持のために役立ちます。突然オフィスを解約されると家賃収入が途絶えてしまいます。事前に解約することが把握できていれば、解約予告後にオーナーが入居者の募集をすることで、空室期間を少なくすることができるのです。オーナーの収入を守るためにも、企業は前もって解約を予告しなければなりません。
「解約予告期間」の確認方法
解約予告期間は賃貸契約書に記載されています。また契約期間を満了する前にオフィスを解約すると、違約金が課せられる場合があります。違約金を支払う条件と金額についても、あわせて確認しておきましょう。
「解約予告期間」は交渉できる可能性もある
一般的な解約予告期間は6カ月ですが、新オフィスに移転するタイミングによっては、賃料を二重に支払うケースがあります。オーナーと交渉し解約期間を短くできると、二重支払いを避けられコスト削減につながります。二重支払は、移転にかかる費用にも関わってまいりますので、必要に応じて交渉するようにしましょう。
「解約予告」の取り消しは難しい
オフィスの移転先が見つからないので延期したい、経営の都合で移転を中止したいなどの理由で、解約予告を取り消したい場合があります。しかし民法540条2項にもとづき、解約予告の撤回は原則不可能です。次の入居者が決まっていなければ交渉できる可能性もありますが、撤回は原則不可能ということを認識した上で、解約予告のタイミングは慎重に決めましょう。
【免責事項】上記の情報は一般的な解約手続きの概要を示したものです。実際の手続きや条件は、個別の契約内容や状況により異なる場合があります。具体的な対応については、契約書をご確認の上、専門家にご相談ください。当社は本情報の正確性や完全性を保証するものではありません。
オフィスの解約・移転の流れ
オフィスの解約・移転の準備期間は8カ月が目安です。スケジュールの詳細を紹介します。
オフィスの解約・移転の担当者を決める
まず、オフィス移転プロジェクトの体制を整えます。オフィス移転は、検討からオフィス構築まで半年~1年以上かかる長期プロジェクトとなるケースが一般的です。移転実務を担当される方は、通常業務と並行しながら、オフィス移転に関わる業務もこなしていかなくてはなりません。
また、オフィス移転を委託する業者選びも重要です。費用やデザインだけでなく、理想の働き方が実現できそうか、信頼できるパートナーか、継続してお付き合いができるか等、複数の視点から比較・検討するようにしましょう。
「解約予告」を行う・新オフィスを決定する
解約予告と新オフィスの決定は、状況をみて優先順位を考えます。どちらを先に実施しても構いませんが、メリット・デメリットを把握し順番を決めましょう。
新オフィスが決定してから「解約予告」
新オフィスの決定を優先すると、解約予告の取り消しを避けられます。希望にあうオフィスビルは、なかなか見つからないかもしれません。余裕をもって解約・移転を行いたい場合は、先にオフィスを決定しましょう。一方で家賃の二重支払いが発生しやすいため、コストは慎重に検討してください。
「解約予告」をしてから新オフィス決定
新オフィスを決める前に解約予告をするメリットは、新しい物件に対するフリーレント交渉のしやすさです。家賃の二重支払いの期間を短くできればコスト的に大きなメリットが得られます。一方、新オフィスが決められない場合、解約予告は原則取り消しができないため注意しましょう。
新オフィスの準備をする
新しいオフィスが決定したら、具体的なオフィスデザインやレイアウトを検討します。
近年は、社員のモチベーション向上による生産性の向上や働き方改革の一環として、オフィスの機能を見直す企業も増えてきていますので、オフィス移転によりどんな働き方を実現したいか、理想の働き方やオフィスのコンセプトがあると、ブレずに移転計画を進めることができます。コンセプトが決定したら、業者からそれを実現するオフィスレイアウトや家具の提案があり、オフィスを具現化していきます。さいごに、床や壁、天井などの内装工事、電話やLAN、電源工事などの依頼をします。
原状回復工事の依頼をする
原状回復工事の依頼は、旧オフィスに関する内容のなかでは解約予告と並ぶ重要な業務です。業者との打合せでは、入居時と同じ状態に戻すために、どれほどのコストと期間を要するかを確認しましょう。原状回復工事のスケジュールが決まりしだい、移転先での内装やインフラの整備、引っ越し日などのスケジュールも調整します。
移転作業を行う
新オフィスに移転したのちに、旧オフィスの原状回復工事を開始します。また、オフィス移転に伴い各所に届出を提出し、取引先へ新しい住所や電話番号について連絡しましょう。届出は移転日を基準に提出期限が定められているため、速やかな対応が求められます。また名刺や企業サイトなどの情報も、更新してください。
オフィスの解約・移転の流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
オフィス解約・移転にかかる費用
オフィス解約・移転にかかる費用を、引っ越しにかかる費用・入居にかかる費用・退去にかかる費用・その他の費用にわけて解説します。
引越しにかかる費用
引っ越しにかかる費用とは、オフィス家具や事務用品、パソコンなどを移送する代金です。費用の相場は、社員一人あたり2~5万円とされています。オフィスの環境にも左右されますが、規模が大きい企業ほど費用はかさみます。決算期や新年度などは費用が高くなる傾向があります。時期や日程によって費用が変わるため、引っ越し日は計画的に決めましょう。なお移転先に持ち込まないものは、不用品として廃棄します。
新オフィスへの入居にかかる費用
移転先の新しいオフィスへ入居する際にかかる費用をご紹介します。
賃貸契約の費用
オフィスの賃貸契約時にかかる費用は、以下のとおりです。
- 前賃料
- 敷金
- 礼金
- 仲介手数料
- 火災保険料
前賃料とは移転当月分の賃料を指し、入居の時期によっては翌月分まで支払う場合もあります。
敷金は保証金のようなもので、オフィスの広さにより変わります。目安としては50坪以下では賃料の3~6カ月分、それ以上の広さになると6~12カ月分と考えましょう。礼金は支払わなくてすむ場合もありますが、相場は賃料の1~2カ月分です。
新オフィスを決める際に不動産仲介業者を利用した場合は、仲介手数料を支払います。業者によっては仲介手数料を取らない場合もありますが、支払う場合は賃料の1カ月分が目安です。
火災保険は、賃貸契約時には必ず加入せねばなりません。オフィスの火災保険は、2年契約で3万円程度が相場です。オーナーにより契約会社やプランなどを指定する場合があるため、賃貸契約を確認してください。有事の際には、階下や隣接するスペースにも被害が及ぶ可能性があります。保証範囲を調べておきましょう。
内装・設備の費用
内装・設備にかかる費用は以下のとおりです。
- レイアウト・内装
- オフィス家具
- インフラ整備
内装工事は1坪あたり10~25万円が目安で、床や壁、天井、OAフロアなどが該当します。オフィス家具は社員1人あたり5~10万円が相場で、旧オフィスの家具を活用するのであれば費用はかかりません。オフィスのインテリアは、仕事効率や来客の印象を左右します。現場の意見を聞き入れ、デザインと機能性にこだわり検討しましょう。
またインフラ整備の相場は、社員1人あたり5~15万円です。おもな設備としてはLAN回線や電気・電話、サーバー、エントランスの入場ゲートなどが該当します。セキュリティにこだわりたい、テレワークに対応した設備を導入したいなどの希望を盛り込むと、より出費が膨らみます。
現オフィスからの退去にかかる費用
現オフィスから退去する際にかかる費用をご紹介します。
原状回復費用
原状回復を依頼する業者は、多くの場合貸主に指定されます。10~50坪のオフィスの場合は、1坪あたり3~5万円ほどが相場で、敷金とは別に支払う必要があります。50坪以上の大規模なビルの場合は、10~20万円かかる事もあります。
廃棄物処理費用
新オフィスで使わない、古いオフィス家具やOA機器などを処分する費用です。相場は2トントラック1台分で約7~8万円、4トン車1台分で約10~15万円です。なお回収業者しだいですが、リサイクル可能なものを買い取ってくれるケースがあります。
その他の費用
住所や電話番号の変更にともない、名刺や社用封筒、パンフレットなどを刷新します。相場は社員1人あたり1~2万円です。
官公庁などへの各届出には、会社の規模に関わらず10~20万円が必要になります。ただし届出の作成・提出に専門家を頼らなければ、費用を節約できます。
オフィスの解約・移転の費用についてはこちらの記事でもくわしく解説しています。
オフィスを解約する際の4つの注意点
オフィスを解約する際には、以下の注意点を重視するとスムーズです。難しければ、業者への相談も検討しましょう。
解約・移転の目的を定める
なぜ移転に踏み切るか、目的を明確にしましょう。目的を叶えるオフィスを見つけるため、多くの物件を検討してください。また解約・移転の際には多くの費用が必要になるため、実現可能なコストであるかもチェックしましょう。
早めに契約内容を確認する
解約予告期間は、事前に取り決めた契約に従います。一般的な内容とは異なる場合があるため早めに契約内容を確認してください。また居抜き物件として譲渡できると、原状回復は不要です。大きくコストを抑えられるため、ぜひオーナーに確認してみてください。
スケジュールを整理する
移転するタイミングによっては、旧オフィスと新オフィスとの賃貸契約の都合で、家賃の二重支払いが発生する可能性があります。移転前後の各届出や手続きも網羅し、スケジュールを整理しましょう。
信頼できる業者に依頼する
オフィスを解約・移転するにあたり、やることは膨大です。本業を抱えた状態でオフィスの解約・移転業務にあたると、担当者に大きな負担がかかります。スムーズにオフィスを移転するには、信頼できる業者に依頼しましょう。
まとめ
オフィスの解約・移転には、長期間におよぶほか、さまざまな対応が必要です。オフィスを移転する目的を確認し、計画的に行動しましょう。またスムーズにオフィスを移転するには、信頼できる業者への相談も検討しましょう。
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本コラムでは、オフィス移転や縮小に伴う解約手続きについてご紹介しています。なお、本情報は一般的解説を目的としており、個別の法的助言ではありません。実際の対応は賃貸借契約の内容により大きく異なる場合があります。当社は本情報利用による損害について責任を負いかねます。具体的な法的判断・行動は、必ず適切な専門家にご相談ください。
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