職場の環境を改善すると、従業員が働きやすい職場となり、企業にとって多くのメリットが得られます。また、従業員の心身のストレスが軽減されたり、生産性が向上したりする可能性があります。これらの改善が長期的には企業の業績向上につながることも期待できます。この記事では、職場環境改善に取り組みたい企業の担当者様に向けて、職場環境改善のメリットや施策、取り組み事例などを解説します。
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職場環境を形作る重要な要素
職場環境は多岐にわたる要素で構成されています。オフィス空間の物理的な側面から人間関係まで、様々な要因が従業員の快適性と生産性に影響を与えます。ここでは、職場環境を構成する主要な要素について詳しく解説します。
快適性を左右する物理的環境
物理的環境は、従業員が日々過ごすオフィス空間の具体的な条件を指します。これには、効率的なオフィスレイアウト、十分な作業スペース、最新のパソコンや機器の整備などが含まれます。また、適切な室温管理、十分な照明、清潔なトイレや更衣室の設置も重要です。さらに、受動喫煙防止策や有害物質対策など、健康に配慮した環境整備も欠かせません。ただし、業種や職場の特性によって、これらの物理的要素の重要度や必要な対策は異なることに注意が必要です。
生産性を高める良好な人間関係
職場の人間関係は、従業員の心理的健康と業務効率に大きな影響を与えます。良好な人間関係は、ストレスの軽減やモチベーションの向上につながります。一方、人間関係の悪化は深刻なストレス要因となり得ます。そのため、上司や同僚とのコミュニケーションを円滑にし、相談しやすい雰囲気づくりが重要です。オープンで支援的な職場環境は、従業員の満足度を高め、長期的には組織の成功につながります。
個々の能力を活かす適切な業務設計
業務内容も職場環境の重要な一部です。従業員の能力と経験に見合った適切な業務配分が、職場の生産性と従業員の満足度を左右します。過度な業務負荷や、逆に能力を活かしきれない業務配置は避けるべきです。各従業員の強みを理解し、適材適所の人員配置を行うことで、個々の従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整えることができます。また、適切な裁量権の付与は、従業員の自主性と責任感を育み、業務への積極的な取り組みを促進します。
職場環境改善がもたらす3つの重要なメリット
職場環境の改善は、従業員の満足度向上や生産性の増加など、様々な面で組織にポジティブな影響を与えます。ここでは、その主要な3つのメリットについて詳しく解説します。
従業員の満足度と定着率の向上
職場環境の改善は、従業員の満足度を高め、会社への帰属意識を強める可能性があります。快適で働きやすい環境は、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上につながり、結果として定着率の改善に寄与する可能性があります。ただし、定着率の向上には、職場環境以外にも給与、キャリア開発の機会、企業文化など、多くの要因が関係することに留意が必要です。長期的には、従業員の定着率向上が採用・育成コストの削減にもつながる可能性があり、貴重な人材の維持に寄与します。
従業員のストレス軽減と健康増進
職場環境の改善は、従業員のストレス軽減と健康維持に大きく貢献します。適度なストレスは時として生産性を高めることもありますが、過度のストレスは心身の健康を脅かし、長期的には深刻な問題を引き起こす可能性があります。ストレスの多い環境は、仕事のパフォーマンス低下やミスの増加にもつながるため、ストレス要因を最小限に抑えた職場環境の構築が重要です。健康的で快適な職場環境は、従業員の well-being を向上させ、結果として組織全体の活力を高めます。
Well-being(ウェルビーイング)については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
組織全体の生産性向上への寄与
職場環境の改善は、組織全体の生産性向上に寄与すると考えられています。従業員の心身の負担軽減は、個々の作業効率を高め、ひいては組織全体のパフォーマンス向上につながります。快適な環境下では、従業員の集中力や創造性が刺激され、業務への積極的な取り組みが促進されることが期待できます。
さらに、良好な職場環境は、チームワークやコミュニケーションの質を向上させ、問題解決能力の強化にも良い影響を与えます。これらの要因が相乗効果を生み出し、長期的には組織の生産性向上に貢献する可能性が高いと言えるでしょう。
職場環境改善の4つのステップ
厚生労働省の「職場環境改善の手引き」をもとに、職場環境改善の進め方を4つのステップに分けて解説します。
1.準備・計画
最初に職場環境改善の方針を決めます。取り組みを進めるための体制や担当者など、社内での調整も必要です。職場環境の改善は全体に周知しましょう。経営者が周知すると、管理職や従業員が取り組みを始める契機になるためです。周知する際は、職場環境改善のメリットや注意事項も含めて説明する必要があります。
2.グループディスカッション
職場環境改善に取り組む際は、グループディスカッションを実施しましょう。職場環境改善を効果的に進めるには、従業員の意見や要望を取り入れることが大事なためです。自由な意見が出るような雰囲気づくりをすると、前向きな議論ができます。職場ごとに班分けをしたり、司会や書記などの役割を分担したりして、議論を活発にする工夫も必要です。
3.改善計画の作成と実施
グループディスカッションの後は、職場環境改善のための施策を決めます。話し合いの結果をもとに、会社の人的・物的資源を考慮して施策を実行しましょう。グループディスカッションの段階で、従業員の半数以上の同意を得ることが大事です。ただし、特定の人に業務が偏らないように、職場全体で協力して進める必要があります。
4.成果報告と発表
最後は職場環境改善施策を実施して、得られた成果の報告をします。組織全体で施策の計画から実行までの施策を振り返りましょう。成果は定量的に数値で可視化することが望ましいです。しかし、成果によっては数値で出せない場合もあるため、従業員アンケートを使い可視化するとよいでしょう。
職場環境改善のための5つの効果的な施策
職場環境の改善は、オフィスの物理的な側面から働き方の見直しまで、多岐にわたるアプローチが必要です。以下では、特に効果的な5つの施策について詳しく解説します。
1. 効率と快適性を追求するオフィスレイアウトの最適化
オフィスレイアウトは、従業員の生産性と快適性に直接影響を与えます。適切な動線の確保や効率的な作業スペースの配置が重要です。
さらに、休憩スペースや備品収納庫などの共用エリアの改善も大切です。また、フリーアドレス制やオープンなミーティングスペースの導入などは、部署を超えたコミュニケーションを促進し、新しいアイデアやイノベーションの創出につながる可能性があります。従業員の意見を積極的に取り入れ、ニーズに合った環境づくりを心がけましょう。
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2. 部門を超えたコミュニケーションの活性化
効果的なコミュニケーションは、情報共有と業務の質の向上に不可欠です。部署を超えた交流を促進するためのイベントや、チャットツールなどのデジタルプラットフォームの導入を検討しましょう。これにより、組織全体の連携が強化され、問題解決能力の向上や新たなアイデアの創出が期待できます。
事例:コクヨマーケティングの部門を超えたコミュニケーション促進施策
部門を超えたコミュニケーション促進施策の例としてコクヨマーケティングの取り組みをご紹介します。
コクヨマーケティングでは、若手社員の声をきっかけに「コクヨ工場見学ツアー」を企画しました。コロナ禍でのコミュニケーション不足解消と、自社製品への理解深化、部門を越えた人脈形成を目的としています。
第1回は若手社員向けでしたが、好評につき第2回では全社員に枠を広げました。手上げ制を採用し、自発的な参加を促しています。
ツアーではコクヨ工業滋賀でキャンパスノートの製造工程を、コクヨ三重工場でオフィス家具の製造過程を見学。参加者は製品への理解を深め、普段交流のない社員同士で新たな絆を築く機会となりました。
この取り組みを通じて、活力ある企業風土の醸成と社員の成長支援を目指しています。
詳しくはこちらのブログ記事をご覧ください。
3. 個々の能力を活かす業務の最適化
従業員の能力とスキルに合った業務配分は、モチベーションの維持と生産性の向上に直結します。過度な業務量や、スキルとのミスマッチは、ストレスの原因となり得ます。定期的な業務内容の見直しと、従業員の適性に応じた柔軟な業務割り当てを行いましょう。これにより、各従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境が整います。
4. 透明性と公平性を重視した人事評価システムの構築
公正で透明性の高い人事評価システムは、従業員の信頼とモチベーション維持に不可欠です。客観的な基準に基づいた評価と、その結果が適切に反映される報酬制度の構築が重要です。評価基準を明確に定め、全従業員に周知することで、公平性への信頼が高まります。また、定期的なフィードバックを通じて、従業員の成長を支援する仕組みも検討しましょう。
5. 多様なライフスタイルに対応する柔軟な働き方の導入
従業員のワークライフバランスを尊重し、多様な働き方を支援することは、現代の職場環境改善に不可欠です。リモートワーク、フレックスタイム制、時短勤務などの柔軟な勤務形態の導入を検討しましょう。これらの施策は、従業員の生活の質を向上させるだけでなく、業務効率や生産性の向上にもつながる可能性があります。また、多様な人材の確保や離職率の低下にも寄与し、長期的な組織の競争力強化に貢献します。
職場環境改善を成功させるための重要なこと
職場環境の改善は、組織の発展と従業員の満足度向上に不可欠ですが、その実施には慎重なアプローチが求められます。ここでは、効果的な職場環境改善を行う上で特に注意すべき点について解説します。
予期せぬ反応に備える
職場環境の改善は、全ての従業員にとって必ずしもプラスにならないことがあります。環境の変化自体がストレスになる人もいるため、慎重に進める必要があります。
この課題に対する有効な方法の一つが「パイロットオフィス」の活用です。パイロットオフィスとは、会社全体で一斉に変更を行うのではなく、特定の部門や課で新しい働き方を試験的に導入する取り組みです。例えば、フリーアドレスを導入する場合、まずは一部の部署で試してみて、その結果を見てから適した部署に広げていく手法です。
このアプローチには、いくつかのメリットがあります。従業員一人ひとりの価値観や適応力が異なることを考慮できますし、特定の従業員や部署だけが恩恵を受けるような不公平な制度も避けられます。また、従業員の声を聞きながら、個々のニーズに柔軟に対応することもできます。
パイロットオフィスでの経験を基に、会社は改善策の効果を確認し、必要に応じて調整を行えます。この段階的なアプローチにより、大規模な働き方の変更をより効果的に、かつ従業員の反応を見ながら進められるのです。
これらの課題に対処するためには、従業員の声に耳を傾け、個別のニーズに柔軟に対応する姿勢が求められます。また、改善後も定期的に効果を検証し、必要に応じて調整を行うことが重要です。
パイロットオフィスの取り組み事例はこちらの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。
長期的視点での取り組み
職場環境の改善は、短期間で完結するものではなく、長期的な取り組みが必要です。単一の施策ではなく、複数の改善策を組み合わせて実施することが効果的です。職場環境は一朝一夕には変化しないため、粘り強く取り組む姿勢が重要です。即効性のある結果が見えにくいため、従業員のモチベーション低下に注意が必要です。
コクヨの「オフィスカイゼン委員会」の取り組み
長期的な職場環境改善活動の一例として、コクヨが実践している「オフィスカイゼン委員会」の取り組みをご紹介します。
コクヨの「オフィスカイゼン委員会」の最大の特長は、職場環境の改善に総務担当者やファシリティ管理者だけでなく、一般社員も積極的に参加していることです。これにより、社員全員がオフィスの環境維持を自分事として捉え、関心を持つようになります。結果として、現場の声を直接反映した、より実態に即した環境改善が可能となっています。
▲カイゼンボード|カイゼン要望の募集やカイゼン実施後の写真をこのボードに掲示しています コクヨ霞が関ライブオフィス
このようなカイゼンボードと呼ばれる掲示板をオフィスに設置し、社員からカイゼン要望を募集しています。
カイゼン委員は有志の社員で構成し(総務は事務局として参加)、委員会メンバーは、カイゼンボードに寄せられた意見を吟味し、カイゼン案を検討します。委員会活動は隔月に1時間程度で、宿題は課さず、その場で意見を出し合う形式を取っています。さらに、音楽やお菓子を楽しみながらリラックスした雰囲気で意見交換を行うなど、参加者の負担を軽減する配慮もしています。
このような取り組みにより、日常的に感じる小さな不便を見逃さず改善することで、オフィス環境の継続的な改善を図っています。
オフィスカイゼン活動は、小さな一歩から始まりますが、継続的に実施することで、社員がより快適に働ける環境づくりにつながります。
コクヨのオフィスカイゼン委員会の活動やカイゼン事例については、こちらの記事をご覧ください。
【無料ダウンロード】オフィスカイゼン委員会の始め方をご紹介|オフィスカイゼン委員会スタートアップガイド
職場環境改善の成功事例
職場環境改善を実現した企業の事例を紹介します。これらの事例は、オフィスレイアウトの変更や従業員参加型の改善プロセスを通じて、働きやすさやコミュニケーションの向上を達成しています。
30年来の固定席から全部署フリーアドレス制へ移行
西川計測株式会社九州支社様は、「働く人のパフォーマンス最大化と個人の創造性を発揮できる空間」「場所によって気分を切り替えることができる職場」をコンセプトにオフィスをリニューアルしました。全部署でフリーアドレス制を導入し、社員が自律的に働く場所を選択できる環境を実現しています。
このコンセプトは、コクヨのライブオフィス見学後に実施したWEBアンケート(コクヨの働く環境診断 「はたナビプロ」)の結果に基づいています。多くの社員がON/OFFの切り替えや集中ワークのための空間を希望していることが判明しました。
新オフィスでは、多様なデスクを用意し、社員が気分に応じて働く場所を選べるようにしました。執務エリアにはビックテーブルとカウンター、コミュニケーションを促すおにぎり形のデスク、クイックな打ち合わせ用の昇降式テーブルを設置。また、複合機周辺をマグネットスペースとし、共有文具を置くことで偶発的なコミュニケーションを促進する工夫も施されています。
西川計測株式会社九州支社様の事例はこちらのページで詳しくご紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。
まとめ
職場環境の改善は、机や椅子の配置を変えるだけではありません。適切に実施することで、従業員の生産性向上やモチベーションアップにつながり、ひいては企業全体の業績向上に寄与する可能性があります。オフィスレイアウトや設備の改善は、目に見える環境だけでなく、職場の人間関係や組織文化にも良い影響を与え、総合的な職場環境の向上につながります。
コクヨマーケティングは、コクヨグループ年間25,000件を超える豊富な実績を基に、お客様の働き方に最適化された空間づくりをサポートいたします。オフィス移転の計画段階から、移転後の維持・運用に至るまで、お客様のニーズに寄り添ったきめ細やかなサポートを提供しています。さらに、コクヨ社員が実際に働くオフィスを体感いただける「オフィス見学会」も実施しており、職場環境改善の実践的なアイデアを得る機会としてご活用いただけます。職場環境改善にお悩みの方は、ぜひ当社までご相談ください。
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