オフィスにおけるゾーニングとは、オフィス空間を用途や機能別で適切に区分けすることです。レイアウトの前にゾーニングを意識し、オフィス空間を適切に区分けすることで、非効率な移動・動作が低減でき、スムーズに働けたり、セキュリティを強化できたりするメリットがあります。
この記事では、オフィスのゾーニングを意識するメリットとレイアウトとの違いのほか、ゾーニングのポイントと導入事例について解説します。
オフィスにおけるゾーニングとは?
ゾーニング(zoning)とは、英語で「区分する」という意味です。オフィスにおけるゾーニングとは、オフィス空間を用途や機能別に区分けすることを指します。具体的には、執務スペースや会議室といったように、従業員の活動内容やセキュリティに合わせて空間を分割します。
オフィスにおいて適切なゾーニングを行うことは、従業員が効率的で働きやすい環境の実現や、生産性の向上につながります。近年は、リモートワークなどの普及に伴い、固定的に区切るゾーニングから、働き方に応じた柔軟なゾーニングへと変化しています。
レイアウトとの違い
ゾーニングと似た言葉に「レイアウト」があります。いずれもオフィス空間設計上の概念ですが、この2つには違いがあります。ゾーニングはレイアウトの前段階に行うもので、オフィス全体をどのようなエリアに分割するのか、また、それぞれのエリアにどのような役割を持たせるのかといった空間の大枠づくりです。
一方のレイアウト(layout)は「配置」を意味する英語で、ゾーニングで定められたエリアの中に、デスクや椅子、家具、設備をどのように配置するかという、具体的な空間設計を行う作業のことです。
例えば、ゾーニングで「執務スペース」と「共有スペース」を設けることを決めたとします。その後、執務スペースにデスクや集中作業用の個室型ブースを配置し、共有スペースにはリラックスできるソファやテーブルを置くといったゾーン内の詳細な配置作業がレイアウトとなります。
しっかりとゾーニングすることで、その後のレイアウトがスムーズに進み、より生産性の高いオフィス空間を実現できるでしょう。裏を返せば、ゾーニングは一度決定すると変更が難しいため、慎重に検討する必要があります。
オフィスでゾーニングを意識するメリット
オフィスにおいてゾーニングを意識すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、オフィスでゾーニングを意識するメリットについて解説します。
非効率な移動・動作が低減でき、スムーズに働ける
オフィスにおけるゾーニングには、従業員の非効率な移動や動作を大幅に減らし、スムーズに働ける環境を整えられるメリットがあります。これは、業務に必要な設備やスペースを戦略的に配置することで、執務スペースから会議室や共有スペースへの移動時間を短縮できるためです。
また、関連性の高い部門やチームを隣接させることで、情報共有や連携がスムーズになり、業務フローの最適化にも貢献するでしょう。
さらに、ゾーニングによってタスクごとの非効率な移動が不要になり、業務への集中度合いが増すのもメリットです。
コミュニケーションがとりやすくなる
オフィスにおけるゾーニングのメリットとして、従業員間のコミュニケーションを活性化できることが挙げられます。コミュニケーションの活性化は、組織全体のパフォーマンス向上に大きく貢献するはずです。
具体的には、カフェのようなリフレッシュエリアを設けることで偶発的な交流を促し、新たなアイディアやパートナーシップの創出を支援します。また、フリーアドレス制の導入は、部門の垣根を越えたコミュニケーションを促進し、チームワークの向上や円滑な情報共有につながるでしょう。
さらに、適切なゾーニングは、従業員のモチベーションや定着率の向上にも寄与します。一人でリラックスできる空間や同僚などに気軽に相談できる環境を設けることで、従業員の心理的安全性を高め、結果として組織への信頼感や帰属意識を醸成します。
なお、ゾーニングにおいては、従業員個人のプライバシーや、集中して作業する必要がある業務などとのバランスを考慮する必要があります。執務スペースの中でもオープンエリアと集中作業可能なエリア、またはサイレントエリアとコミュニケーションエリアを適切にゾーニングすることで、多様な働き方に対応できる柔軟なオフィス空間が実現します。
セキュリティの強化ができる
オフィスにおけるゾーニングは、セキュリティ強化による安全なオフィス空間を実現するために効果的です。機密性に応じてエリアを区分すれば、情報漏洩や不正アクセスのリスクを低減できます。
具体的には、機密情報を扱う部門やサーバールームのほか、役員室などを高セキュリティエリアとしてゾーニングし、防犯カメラや入退室管理システムを導入することで、関係者以外を入室制限可能です。来客スペースと執務スペースを分離することでも部外者の立ち入りを制限でき、情報漏洩対策となるでしょう。
ただし、ゾーニングにおいて、セキュリティと従業員の業務効率のバランスは重要です。過度な制限は一般従業員の業務の妨げになる可能性もあるため、それらの両立を図る必要があります。
オフィスのゾーニングにおける区画の種類
オフィスは、ゾーニングによっていくつかの区画に分けられます。ここでは、オフィスのゾーニングにおける区画の種類について解説します。
ワークスペース
ワークスペースは、従業員が日々業務を行うオフィスの中心的な場所です。具体的には執務室やリラックススペースなどを指します。このエリアのデザインや座席配置、設備などは、社員の働きやすさに直結するものです。
なお、近年のトレンドとしては、リモートワークとオフィスワークを融合させた、ハイブリッドワークに対応したオフィスが注目されています。具体的には、自由に席を選べるフリーアドレス制を採用しているオフィスです。
このようなオフィスには、間仕切りで仕切られた集中ブースや、ウェブ会議に対応した個室型ブースなどを配置したワークスペースを備えていることが一般的といえるでしょう。
ワークスペースには従業員しか入室しないため、セキュリティを保つために入退室管理システムを設置するのがおすすめです。
共有スペース
オフィスにおける共有スペースは、従業員全員で共有して利用するエリアです。このエリアには、会議室や社員食堂のほか、給湯室などが含まれます。これらのエリアは、情報共有や意思決定の場として機能するだけでなく、リフレッシュやリラクゼーションの場としても重要です。
なお、エントランスや応接室などは、「パブリックスペース」として区分されることもあります。
共有スペースは、従業員同士のコミュニケーションを促進する場でもあるため、ワークスペースからのアクセスのしやすさを考慮すべきでしょう。
とはいえ、来訪者を招いて打ち合わせすることもあるため、一定以上のセキュリティレベルを保つ必要もあります。そのため、防犯カメラなどを通路に設置するといった対策が求められます。
情報管理スペース
情報管理スペースは、企業の機密文書や顧客情報などの重要なデータを扱うエリアであり、最も高度なセキュリティ対策が必要です。このエリアには、サーバールーム・セキュリティルームや役員室のほか、金庫室などが含まれます。
情報管理スペースは、外部からの不正アクセスや情報漏洩を防ぐために、厳重なセキュリティ対策が必須です。そのため、オフィス全体で見た場合、エントランスや共有スペースから最も離れた場所に配置することが推奨されます。
また、生体認証技術を採用した高度な入退室管理システムと防犯カメラの導入など、複数の仕組みを組み合わせるのが効果的です。
オフィスでゾーニングをする際のポイント
オフィスは適切なゾーニングによって、従業員の生産性向上やコミュニケーションの活性化だけでなく、セキュリティの強化など、多くのメリットを得ることができます。ここでは、オフィスにおけるゾーニングのポイントを解説します。
オフィスに必要とされる機能を明確にして盛り込む
オフィスにおけるゾーニングは、オフィスに必要な機能を明確にして、それらを適切に盛り込んでいくのがポイントです。
来客が増えてくることが予測されるなら会議室を増やしたり、従業員のウェルビーイングを促進したいならリフレッシュエリアを設けたりするなど、さまざまな視点から精査することが重要です。
動線や距離を意識する
オフィスのゾーニングの際には、動線や距離を意識することも重要なポイントです。よく利用される動線や、頻繁に連携するスペースとスペースの距離を考慮しないと、オフィス内で非効率な移動をしなければならない事態が発生するからです。また、従業員と来訪者の動線が交わらないようにすることも重要といえます。
従業員や来訪者の利用が多い動線では通路幅を広めに設計したり、執務スペースと会議室の移動距離を短く設計したりして、各スペースの配置を考えましょう。
細部の寸法をしっかりと押さえておく
オフィスのゾーニングの際には、家具や設備、部屋などの寸法を把握しておきましょう。各寸法を把握しておけば、ゾーニング後のレイアウトも支障なく進めることができます。
ゾーニングをする際に把握すべき主な寸法は、下記のとおりです。
<オフィスのゾーニングの際に把握すべき寸法>
- 執務室の寸法
- 通路の寸法
- 会議室の寸法
- 各エリアに配置するデスクや設備の寸法
なお、将来的な従業員の増減や組織変更にも対応できるように、柔軟性のあるゾーニングにするのもポイントといえます。
従業員にヒアリングして意見を取り入れる
オフィスのゾーニングには、現状の課題を把握するためにも、従業員のヒアリングが必要となります。アンケートなどで適切に意見を収集し、ゾーニングに反映したいところです。
現状の課題を効率的に収集して分析する手段として、コクヨの働く環境診断「はたナビ プロ」の活用がおすすめです。はたナビ プロは、ウェブアンケートを通じて従業員一人ひとりの声から課題を見える化する「働く環境診断サービス」で、診断ツールを用いて客観的かつ定量的なデータが取得可能となっています。また、他社とのベンチマーク比較ができるため、他社とのギャップや自社の課題をを明確に把握することができるでしょう。
コクヨの働く環境診断「はたナビ プロ」については、こちらのページでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
オフィスにおけるゾーニングとレイアウトの進め方
オフィスにおけるゾーニングとレイアウトは、主に下記のような手順で進めます。
<オフィスのゾーニングとレイアウトの手順>
- オフィスに必要な機能を洗い出す
- 動線を考えながら大まかにゾーニングを行う
- 詳細なゾーニングを行う
- セキュリティを意識しながらレイアウトを行う
- レイアウト変更を実行する
特に大切なのは、オフィスで何ができるのかという「機能」と、誰と何をするのかという「目的」を明確に定義することです。その上で、企業の経営方針や業務内容などを分析しながら、ゾーニングとレイアウトを進めるようにしてください。
なお、コクヨでは、オフィスに求められる機能を7つに分類しています。
7つの機能と求められる空間については、こちらのページでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
オフィスのゾーニングの事例
コクヨマーケティングでは、お客様のご要望に沿ったゾーニングが実現可能です。最後に、当社が手掛けたオフィスのゾーニング事例をご紹介します。
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社様:オフィスリニューアルで柔軟な対応が可能に
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社様は、本社オフィスの2階から6階のリニューアルを実施しました。執務スペースは、小さなユニットのグリッド構成です。執務や従業員同士のコミュニケーションのほか、組織変更などの変化に柔軟に対応できるようになりました。一方、オープンコミュニケーションを促進するオープンコミュニケーションエリアは、ウェルビーイングにも配慮したスタンディングテーブルを採用。
また、集中して業務を行うブース席を窓際に設置することで、周りの視線を気にせずに業務に集中できるようになっているのが特徴です。
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社様の事例はこちらのページでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
鈴与シンワート株式会社様:オフィス中心にコミュニケーションスポットを配置
鈴与シンワート株式会社様では、大阪事業所においてハイブリッドワークへの移行に対応したオフィス空間のリニューアルを実施しました。執務スペースのデスクはキャスター付きで、移動や組み合わせが自由自在です。
オフィス中央のゾーンには、コミュニケーションHUBスペースを設けました。オフィスグリーンを配した、カフェのように温かみのある雰囲気が特徴です。リラックスした気分で個人の業務に取り組めたり、気軽なコミュニケーションを楽しめたりする象徴的なスポットとなっています。
鈴与シンワート株式会社様の事例はこちらのページでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
日野自動車株式会社様:働き方に合わせて可変するオフィスに
日野自動車株式会社様は、「働きやすい・働きたい」職場の構築を目指すワークプレイス改革の第1弾として、本社オフィス一部フロアのリニューアルを実施しました。執務スペースは自分たちでレイアウト変更可能な、柔軟性の高いオフィス空間を実現しています。
オフィスの中央にはラウンジスペースが設けられています。個人での業務や従業員同士のコミュニケーションなど、目的を選ばずに利用できるのが特徴です。
日野自動車株式会社様の事例はこちらのページでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
オフィスのゾーニングは専門業者に相談しよう
空間を用途や機能別に区分けするオフィスのゾーニングは、従業員の非効率な移動をなくして生産性を上げたり、セキュリティを高めたりする効果があります。レイアウトの前段階でゾーニングを行うことで、オフィスの機能性や従業員の働きやすさは格段に向上するでしょう。
ただし、オフィスのゾーニングには、専門知識とノウハウが求められます。オフィスリニューアルや移転の際にゾーニングを行う際には、実績ある専門業者に相談して進めたいところです。
オフィスのゾーニングなら、コクヨグループ年間2万5,000件以上の豊富な実績があるコクヨマーケティングにお任せください。ゾーニングの経験豊富な担当者が、ご要望に合わせたオフィス空間をご提案します。
また、コクヨの社員が働くオフィスを見学できる「オフィス見学」のお申込みも、受け付け中です。新しい働き方やオフィスづくりのヒントをお探しの方は、ぜひコクヨのオフィスへお越しください。
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