昨今、多くの企業でオフィス回帰の動きが進んでいます。しかし、テレワークに慣れた従業員の中には、オフィスでの働き方に違和感を覚えるケースも少なくありません。特に、職場の座席配置に関するストレスが顕在化しています。
実際、職場の座席配置は、オフィスの快適性や業務効率を左右する重要な要素です。テレワーク中は気にならなかった「上司の目」や「同僚との距離感」が、オフィスでは大きなストレス要因となることがあります。
この記事では、ストレスを感じやすい席配置の特徴と、快適で集中力を高めつつ、円滑なコミュニケーションを実現するオフィスレイアウトのポイントを解説します。さらに、現状の座席配置を大きく変えることが難しい場合でも、すぐに実践できる職場環境の改善アイデアやおすすめのアイテムもご紹介します。
テレワークとオフィスワークのバランスを取りながら、より快適で生産性の高い職場環境を目指すヒントとしてお役立てください。
ストレスを感じやすい職場の座席配置とは?
ストレスを感じやすい座席配置は、業務効率の低下につながります。ここでは、それらの座席配置の特徴を解説します。
視線が合いやすい
周囲の視線が気になる座席配置は、多くの従業員にとってストレスの要因となります。特に、島型レイアウトのような向かい合わせの配置では、コミュニケーションが取りやすい一方で、互いの視線が頻繁に交差し、集中力を阻害する恐れがあります。
さらに、上司の席が近く、常に監視されているような感覚を抱くと、過度のプレッシャーを感じ、業務効率が低下する可能性があります。
固定席がない
固定席がない席の配置、いわゆるフリーアドレスは、柔軟な働き方を実現する一方で、適切に運用しないとストレス要因となる場合があります。業務特性や従業員のニーズを十分に考慮せずに導入すると、かえって生産性の低下や従業員の不満を招く恐れがあります。
例えば、毎日席を探す手間や、荷物の片付けが必要な点は、一部の従業員にとってストレスとなる可能性があります。また、同じ部署のメンバーと離れた席で仕事することで、チームワークやコミュニケーションに支障をきたす場合もあります。
フリーアドレスを成功させるには、業務の性質や従業員の希望を慎重に分析し、必要に応じて固定席とフリーアドレスを併用するなど、柔軟な対応が求められます。さらに、デジタルツールの活用やコミュニケーションスペースの確保など、従業員間の交流を促進する工夫も重要です。
話し声や雑音が聞こえやすい席配置
ストレスを感じやすい職場の席配置の一つとして、周囲の音が気になりやすい環境が挙げられます。特に問題となるのは、人と人との距離が近く、1人あたりのスペースが十分に確保されていない配置です。このような環境では、隣席や近くの席からの会話、電話、WEB会議の声が常に耳に入ってきてしまいます。
また、オープンなオフィスレイアウトや遮音性の低いパーテーションしかない席配置では、聞くつもりがなくても周囲の音が聞こえてしまい、集中力を妨げる一因となります。
職場の席配置におけるストレスを軽減するアイデア
職場の座席配置におけるストレスを軽減するアイデアをいくつかご紹介します。
業務特性を反映した座席配置を検討する
職場の座席配置は、業務効率や生産性、チームのコミュニケーションに大きな影響を与える重要な要素です。最適なレイアウトを決定する際は、各部署や職種の特性を十分に考慮することが不可欠です。
例えば、管理部門など機密情報を扱う部署では、固定席が適しているかもしれません。これにより、情報セキュリティを確保しつつ、業務をスムーズに進行できます。
一方、営業やマーケティング部門など、活発なコミュニケーションや頻繁な外出が求められる職種では、フリーアドレスやオープンな配置が効果的です。これにより、柔軟な情報交換や即時の意思決定が可能になります。
また、共同作業が多い部署では自然と会話が生まれるレイアウトを、集中作業が必要な部署ではゆったりとしたスペースを確保するなど、業務内容に応じた工夫が求められます。
パーテーションを設置する
オフィスの大規模なレイアウト変更が難しい場合、パーテーションの活用が環境改善の一手として考えられます。
また、デスク上に設置できる小型のパーテーションを使えば、既存のレイアウトを変えることなく個人の作業スペースを確保できます。これにより、集中力が高まり、仕事の効率アップにつながる可能性があります。
ただし、パーテーションで過度に周囲を遮ってしまうと、チーム内のコミュニケーションや進捗確認に支障をきたす恐れがあります。そのため、業務の性質や職場の雰囲気を考慮しながら、適切な高さや配置を選ぶことが大切です。
また、緩やかに視線を遮りたい場合は、机上に観葉植物を置くのも一案です。程よく視線を遮りつつも周囲の様子が分かるため、話しかけやすい雰囲気を維持できます。
このように、パーテーションや植物を上手に活用することで、個人の集中力とチームのコミュニケーションのバランスを取りながら、快適な職場環境を作り出すことができるでしょう。
集中ブースを設置する
島型レイアウトのようなコミュニケーションを重視した座席配置を維持しつつ、個人の集中作業も可能にする方法として、「集中ブース」の設置が注目されています。集中ブースとは、周囲の視線や音を遮断し、1人で作業に没頭するための専用スペースです。
完全に囲われた個室型から、気軽に利用できる半個室型まで、様々なタイプが存在します。これらのブースを適切に配置することで、従業員は必要に応じて静かな環境で作業に集中できます。
集中ブースの使用は、「作業に集中したい」という意思表示にもなり、周囲への配慮にもつながります。また、個々の作業効率を高め、生産性向上にも寄与します。
このように、集中ブースの導入は、オープンなオフィス環境と個人の集中力確保のバランスを取る効果的な方法の一つといえるでしょう。
集中ブース・個室ブースの種類や選び方については以下の記事でご紹介していますので併せてご覧ください。
休憩スペースやミーティングスペースを設ける
集中しやすいオフィスレイアウトを採用する一方で、休憩スペースやミーティングスペースの確保も重要です。これらのスペースは、従業員同士の交流を促進し、コミュニケーションを活性化させるとともに、モチベーション向上にもつながります。
ただし、オフィス内で新たなスペースを確保するのが難しい場合もあります。そのような状況では、既存の執務スペースの一部を工夫して区切ることで対応できます。例えば、パーテーションや家具を利用して空間を仕切り、そこを休憩室や小規模なミーティングスペースとして活用する方法があります。このように、限られたスペースを有効活用することで、集中と交流のバランスの取れたオフィス環境を実現できます。
管理職の席の配置によるストレスは?
管理職の席の配置は、従業員の心理状態や業務効率に大きな影響を与えます。上司の視線が常に感じられるような配置は、従業員に過度のプレッシャーを与え、結果的にパフォーマンスの低下を招く可能性があります。そのため、このような配置は避けるべきでしょう。
一方で、管理職と従業員のコミュニケーションが円滑に行えるよう、適度な距離感を保つことも重要です。理想的な配置とは、両者がリラックスした状態で必要な交流ができ、かつ従業員が自律的に業務に集中できる環境を実現するものです。
つまり、管理職と従業員の席の配置は、監視感と親近感のバランスを慎重に考慮して決める必要があります。このバランスが取れた配置によって、職場の雰囲気が改善され、結果として生産性の向上にもつながるでしょう。
管理職のオフィスレイアウトについては、以下の記事で詳しくご紹介していますので併せてご覧ください。
職場の座席配置例
職場の席の配置には、さまざまな種類があります。ここでは、レイアウト例を解説します。
対向式レイアウト
対向式レイアウトは、席を向かい合わせて配置するものです。隣の席や向かいの席の従業員同士で、コミュニケーションが取りやすい点が特徴です。対向式レイアウトは、営業職や事務職など、さまざまな職種や業界で採用されています。レイアウトのバランスもよく、通路とオフィスチェアのスペースを確保できます。
背面対向式レイアウト
背面対向式レイアウトは、デスクを背中合わせに配置するものです。視線を気にせずに作業ができるため、企画・開発職などで採用されています。背面対向式レイアウトは、作業だけでなく、従業員同士のコミュニケーションを両立できる点もメリットです。協同作業の多い職場にも適していますが、広いスペースが必要です。
ブース型レイアウト
ブース型のレイアウトは、席と席の間をパーテーションで仕切ったり、ソロワーク専用の個人ブース席を配置したりするスタイルです。周囲の視線や音などが入りにくく、高度な集中環境をつくれます。ブース型のレイアウトは、クリエイティブ職をはじめとする専門職、1人でする業務が多い職種に向いています。
ブーメラン型レイアウト
ブーメラン型レイアウトとは、テーブルの角度を120度にした亀甲状のレイアウトです。1人当たりの机上面積が大きくなり、複数モニターを見ながら作業できます。ブーメラン型レイアウトを採用すると、対人距離を確保しつつ、個人の集中とコミュニケーションを両立できます。
デスクレイアウトについては、以下の記事で詳しくご紹介していますので併せてご覧ください。
座席運用の種類と特徴
座席運用とは、オフィス内での従業員の席の割り当て方を指します。主に固定席やフリーアドレスなどがあり、これらは特に日常的なコミュニケーションの取り方に大きな影響を与えます。そのため、自社の業務内容や組織文化に合わせて最適な方式を選ぶことが重要です。以下に、主な座席運用の種類とその特徴を紹介します。
固定席
固定席は、従業員ごとに特定の席を指定し、原則として毎日同じ席で業務を行うスタイルです。個人の領域が明確で、所属感を得やすいという特徴があります。
フリーアドレス
フリーアドレスは、固定の席を持たず、その日の気分や業務内容に応じて自由に席を選べる方式です。ノートパソコンなどを活用し、図書館の閲覧テーブルのように空いている席を使用します。オフィススペースの有効活用や、多様な人とのコミュニケーション促進が期待できます。
グループアドレス
グループアドレスは、フリーアドレスの一種で、チームや部署単位で座る場所を定めます。デスクレイアウトはフリーアドレスと同じですが、グループ内のコミュニケーション向上に寄与します。グループの規模はチーム単位からフロア単位まで様々で、定期的に配置を変えることで、より広範囲のコミュニケーション活性化が期待できます。
ABW(Activity Based Working)
ABWは、業務内容に応じて働く場所や時間を自由に選択する働き方です。オフィス内に集中ブースやカウンター席など多様な作業環境を用意し、従業員が目的に応じて最適な場所を選べるようにします。この方式は、従業員の自律性を高め、効率的な業務遂行を促進します。
ABWについては、こちらの記事で詳しくご紹介していますので併せてご覧ください。
職場の席配置変更を成功させるポイント
職場の席配置を変更する際は、従業員の意見を尊重し、専門業者の知見を活用することが重要です。以下に、配置変更時の主な注意点を解説します。
従業員の声を反映させる
席配置の変更は、直接従業員の働き方に影響を与えるため、ワーカーの意見を積極的に取り入れることが不可欠です。ヒアリングやアンケートを通じて、現状の問題点や改善への希望を把握しましょう。これにより、配置変更の目的が明確になり、従業員の理解と協力も得やすくなります。
具体的には以下のステップを踏むとよいでしょう。
- 現状の不満や改善点を調査する
- 社内の課題を洗い出し、レイアウト変更の目的を定める
- レイアウト変更の目的を従業員間で共有する
- 新しいレイアウトの方向性を決定する
このプロセスを通じて、より効果的で従業員満足度の高い席配置が実現できます。
実績豊富な専門業者を選ぶ
席配置の変更は、単なる家具の移動以上に専門的な知識が必要です。そのため、豊富な実績を持つ専門業者に依頼することをお勧めします。
経験豊富な業者は、以下のような利点があります。
- 自社の特性に合わせたレイアウト提案が可能
- 多様な事例に基づいた効果的なアドバイスが得られる
- 想定外の問題にも柔軟に対応できる
業者選定の際は、その会社の過去の事例を参考にし、自社の目的達成に最適な業者を選ぶことが重要です。公式サイトの実績紹介や、オフィス見学するのも良い方法です。
職場の席配置変更に成功した企業事例
効果的な席配置は業務効率の向上につながります。ここでは、独自の工夫で成果を上げた3社の事例を紹介します。
コミュニケーションと作業効率の両立|マツダジャパン株式会社様
マツダジャパン株式会社様は、従業員間のコミュニケーション促進と作業効率向上を目指しオフィスをリニューアル。ブーメラン型デスクを導入することで、個々の作業スペースも確保しつつ、従業員同士が会話を交わしやすい環境を実現しました。
集中と交流のバランスを実現するベンゼン型レイアウト|山菱テクニカ株式会社様
山菱テクニカ株式会社様は、工場内事務所のリニューアルを行いました。オフィスの中心に丸型テーブルを配置し、周囲に120度に傾いたデスクを設置しました。このベンゼン式レイアウトにより、個人の集中環境を維持しつつ、必要に応じてミーティングができる空間を実現しました。また、リモートワーク用の個室も設置し、多様な働き方に対応できる環境を構築しました。
部署内コミュニケーションと社員交流の両立|株式会社島津製作所様 基盤技術研究所
株式会社島津製作所様の基盤技術研究所は、オフィス新設に伴い執務エリアの座席運用を変更しました。将来的なフリーアドレス化を考慮しつつ、現状では全従業員に自席を確保しています。これにより、部署内のコミュニケーションを維持しながら、社員同士の交流も促しています。オフィスの外周には集中作業用のスペースを設け、中心部は従業員の動きを考慮したレイアウトにしました。さらに、コミュニケーションエリアや瞑想ルームなど、アイデアや思考の整理に活用できるスペースも設置しました。
まとめ
オフィス回帰が進む中、適切な座席配置の重要性が高まっています。本記事では、ストレスを感じやすい席配置の特徴と改善策を紹介しました。
効果的な座席配置は、従業員の快適性だけでなく、業務効率や創造性の向上にも寄与します。
座席配置の見直しを検討する際は、従業員の声を聞き、専門家の助言を得ながら段階的に進めることが大切です。これにより、テレワークとオフィスワークのバランスが取れた、生産的で快適な職場環境を実現できるでしょう。
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