オフィス環境の改善は、多くの企業が取り組む重要な課題です。快適で生産性の高いオフィスづくりには、様々なアプローチがありますが、その中でも近年注目を集めているのが「フェイクグリーン」の活用です。本物の植物と見間違えるほど精巧に作られたフェイクグリーンは、オフィスに自然の雰囲気をもたらし居心地の良さを高めます。
さらに、フェイクグリーンは空間デザインの自由度を高めます。光の当たりにくい場所や、温度変化の激しい場所にも設置できるため、オフィスレイアウトの可能性が広がります。季節や周囲の環境に合わせて簡単に配置を変えられることも、大きな利点です。
本記事では、フェイクグリーンがオフィス環境にもたらす具体的なメリットや、効果的な活用方法、さらには実際の導入事例について詳しく解説します。
フェイクグリーンとは
フェイクグリーンとは、本物の植物を精巧に模した人工観葉植物のことです。インテリアグリーン、イミテーショングリーンなど、様々な呼び名で親しまれています。
これらは、本物の植物と見間違えるほどリアルな外観を持ちながら、水やりや日光管理といった手入れが不要という利点があります。フェイクグリーンは、プランターや鉢植えとして床に置いたり、壁面や天井の装飾として活用したりと、多様な配置方法が可能です。
空間に自然の雰囲気を取り入れつつ、メンテナンスの手間を省くための理想的なソリューションとして注目されています。フェイクグリーンを活用することで、年間を通じて変わらない美しさを保ちながら、快適な環境づくりを実現できます。
バイオフィリアに基づくオフィスデザインの台頭
近年、オフィス環境に自然要素を取り入れるバイオフィリックデザインが注目を集めています。バイオフィリア(biophilia)とは、アメリカの生物学者エドワード・オズボーン・ウィルソンが1984年に提唱した概念で、人間には本来、自然と結びつきたいという本能があるとされています。この考えに基づき、オフィスに植物を取り入れることで、従業員の幸福感や生産性の向上が期待できます。
また、コクヨの調査*によると、室内植物がある場合、オフィスワーカーの幸福度が「感じる」「とても感じる」と回答した割合が、植物がない場合に比べて56ポイントも高いという結果が出ています。
自然の要素をオフィスに取り込むことによる「幸福度の向上」の調査結果
このように、グリーンを取り入れたオフィスは、単なる視覚的な美しさだけでなく、従業員のウェルビーイングにも大きく貢献する可能性があります。
*コクヨ調べ2019年オフィスホワイトワーカー824名に対するウェブ調査「仕事に関するアンケート」より
フェイクグリーンと観葉植物(本物の植物)はどちらがよい?
フェイクグリーンと観葉植物のメリットとデメリットをご紹介します。
項目 | フェイクグリーン | 観葉植物 |
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メリット |
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デメリット |
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適している環境 |
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フェイクグリーンも観葉植物も双方にメリット、デメリットがありますので、それらを踏まえて自社の環境に適したものを選びましょう。
フェイクグリーンをオフィスに置くメリット
フェイクグリーンをオフィスに置くことのメリットを解説します。
おしゃれなオフィス空間の創出
フェイクグリーンを置くことで、殺風景なオフィスが華やかになり、おしゃれなインテリアに変貌します。ミニタイプからシンボルツリー、吊り下げタイプなど、さまざまな飾り方を選べることができます。無機質になりがちなオフィスに和らぎを与え、洗練された空間の演出が可能です。また、季節や天候に左右されず、年間を通じて一定の美しさを保てます。
従業員のモチベーションと企業イメージの向上
おしゃれなオフィス環境は、従業員のモチベーションを高める効果があります。また、来客や取引先に対して好印象を与え、企業イメージの向上にも貢献します。緑あふれる快適な職場は、人材採用や retention(従業員の定着)にもポジティブな影響を与える可能性があります。
設置場所の自由度
自然光の少ない場所や空調の影響を受けやすい場所でも問題なく配置できます。これにより、オフィスレイアウトの自由度が高まり、デザイン性と機能性を両立させやすくなります。
また、製品によりますが、一般的に観葉植物と比べて軽量で扱いやすいため、オフィスの移転や改装の際のレイアウト変更にも柔軟に対応できます。
ビル管理規約との適合性
賃貸オフィスでは、ビルの管理規約で生きた植物の設置が制限されている場合がありますが、フェイクグリーンならそのような制約を受けにくいのも利点のひとつです。
オフィスに置くフェイクグリーンを選ぶ際の注意点
フェイクグリーンを選ぶ際の注意点を解説します。
品質の選択
高品質なフェイクグリーンを選ぶことが重要です。安価な製品は不自然に見える可能性があり、オフィスの雰囲気を損なう恐れがあります。オフィスデザインとの調和を意識し、本物らしい質感と色合いのものを選びましょう。
サイズと種類の選択
フェイクグリーンを選ぶ際は、オフィスの広さや全体の雰囲気を考慮することが大切です。適切なサイズと種類を選ぶことで、空間に調和した心地よい環境を作ることができます。
大きすぎるフェイクグリーンを置くと、部屋に圧迫感を与えたり、人の動きの妨げになったりする可能性があります。一方で、小さすぎるものを選ぶと、存在感が乏しくなり、設置した効果が薄れてしまうかもしれません。オフィスの規模やレイアウトに合わせて、バランスの取れたサイズを選びましょう。
また、フェイクグリーンの使用場所にも注意が必要です。屋内用として作られた製品を、バルコニーなどの屋外に置くと、想定以上に早く劣化する可能性があります。屋外での使用を考えている場合は、耐候性のある専用の製品を選ぶことをおすすめします。適切な場所に適した製品を使用することで、長期間美しい状態を保つことができます。
防火規制の確認
オフィスビルの防火規制に適合しているか確認しましょう。可燃性の材料で作られている場合がありますので注意が必要です。
フェイクグリーンの活用例
フェイクグリーンの活用例を紹介します。
やさしく遮る|テーブルグリーン
執務スペースやリフレッシュエリアの大きなテーブルにフェイクグリーンを配置すると、空間に自然な焦点が生まれ、オフィス全体の印象が洗練されます。テーブルグリーンは視線を適度に遮るため、向かい合って座る人同士がお互いを気にせず、リラックスして作業に集中できる環境を提供します。植物が視線をほどよく遮りながらも、周囲の様子がわかる程度の高さを保つことで、プライバシーと開放感のバランスが取れます。これにより、周囲の人との会話がしやすい、親しみやすい雰囲気を作り出すことができます。
動線を作る|パーテーショングリーン
パーテーショングリーンは、オフィス空間の機能性と美観を同時に向上させることが可能です。視線を適度に遮りつつ、さりげなく動線を作り出すことができるため、オープンオフィスでのプライバシーと開放感のバランスを取るのに最適です。
シンボルにする|フロアグリーン
大型鉢植えタイプのフロアグリーンは、オフィス空間に屋外のような開放感をもたらします。特に存在感のあるシンボルツリーを選ぶことで、空間の印象を鮮明に変え、癒しの空間を創出できます。
最近では、ベンチやテーブルと組み合わせた植栽レイアウトが人気を集めており、より自然な雰囲気の演出が可能になっています。これにより、従業員の憩いの場としての機能も果たし、コミュニケーションを促進する仕掛けにもなります。
高さやボリュームのあるフロアグリーンは、天井高のある広いスペースに特に適しています。ただし、空間の見通しを妨げないよう配慮しながら、レイアウトを工夫することが重要です。適切に配置された存在感のある木は、オフィスの目印となり、人々が自然と集まりたくなるような魅力的なスポットを生み出します。
ゆるく仕切る|棚上グリーン
収納や家具の隙間を利用してグリーンを配置することで、オフィスの雰囲気を改善できます。普段注目されにくい場所にグリーンを置くことにより、細部まで配慮された空間づくりが可能となります。また、家具とグリーンを組み合わせることで、柔らかな仕切りを作ることもできます。これにより、オープンな雰囲気を保ちながら、適度なプライバシーを確保することができます。
フェイクグリーンを取り入れたオフィス事例
オフィス空間の実例をご紹介します。フェイクグリーンを効果的に取り入れることで、快適性と生産性を高めている企業の取り組みをご覧ください。
緑豊かなリフレッシュスペース
西日本高速道路エンジニアリング九州株式会社様では、若手社員主導のもと、リフレッシュルーム兼ミーティングスペースを構築しました。壁面に豊かなグリーンを配置し、開放感あふれる空間を創出しています。
カフェをイメージしたデザインで、落ち着いた照明や木目調の家具を採用し、リラックスできる雰囲気を演出。さらに、小上がりの畳コーナーを設けるなど、従業員の皆様がより深くリラックスできる工夫も施されています。
カジュアルコミュニケーションを促進する共有ラウンジ
名鉄都市開発株式会社様は、グループ3社の共有ラウンジを中間階に設置し、フェイクグリーンを効果的に活用しています。壁面、棚、テーブルの上など、様々な場所にグリーンを配置することで、リラックスできる雰囲気を醸成しています。
この空間デザインにより、社員間の雑談や情報交換といったカジュアルなコミュニケーションが自然と生まれやすくなっています。結果として、部署や会社の垣根を越えた交流が活発化し、創造性とチームワークの向上につながっています。
まとめ
本記事では、フェイクグリーンをオフィスに取り入れることの意義と効果について詳しく解説しました。バイオフィリアの概念に基づいたオフィスデザインの重要性や、フェイクグリーンと観葉植物のメリット・デメリットの比較、そして具体的な活用例や導入事例まで幅広く紹介しました。
フェイクグリーンは、メンテナンスの容易さや設置場所の自由度、ビル管理規約との適合性など、多くの利点を持っています。適切に選択・配置することで、おしゃれで快適なオフィス空間を創出し、従業員のモチベーション向上や企業イメージの改善にも貢献します。
ただし、品質の選択やサイズ・種類の適切な選定、防火規制の確認など、導入時には注意すべき点もあります。これらを踏まえた上で、自社のニーズに合わせたフェイクグリーンの活用を検討することが重要です。
コクヨマーケティングは、コクヨグループ年間25,000件を超える豊富な実績を基に、お客様の働き方に最適化された空間づくりをサポートいたします。オフィス移転や改装の計画段階から、オフィス構築後の維持・運用に至るまで、お客様のニーズに寄り添ったきめ細やかなサポートを提供しています。さらに、コクヨ社員が実際に働くオフィスを体感いただける「オフィス見学会」も実施しています。オフィス環境改善の実践的なアイデアを得る機会としてご活用いただけます。
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