執務室は企業のブランディングや従業員の生産性に大きく影響します。適切にデザインされた快適な環境は、業務効率の向上や優秀な人材の確保に欠かせません。本記事では、執務室に求められている機能やデスクレイアウト、事例などを解説します。ぜひ参考にしてください。
執務室(執務スペース)とは
執務室とは、事務室や執務スペースとも呼ばれ、会議室や応接室などの個室を除いた部分を指します。執務室はオフィス内の大部分を占め、一日中の中でもっとも長い時間を過ごす場です。そのため、執務室の環境が適切に整備されているか否かは、従業員のやる気やモチベーション、コミュニケーション活性化、企業ブランディングに大きな影響を与えます。また、リモートワーク普及により、事務作業であれば自宅などオフィス以外の場所でもできるようになりました。そのような背景の中、執務室はその役割を見直し「行きたくなる仕掛け」や「オフィスでしかできない体験・経験ができる場」として新たな執務環境の整備が求められています。
執務室の座席配置例
執務室の座席配置は、自席周辺のコミュニケーションや集中環境を左右します。以下に主なデスクレイアウト例を6パターンご紹介します。理想とするワークスタイルをふまえてどのデスクレイアウトが最適かを検討しましょう。
対向型レイアウト
対向型レイアウト(対向島型)は、同じ部署のメンバーが向かい合あわせに席を配置し、島を作るスタイルで、最も一般的なレイアウトパターンです。同じ島内でのコミュニケーションが取りやすいため、チームでの業務に適したレイアウトになります。
ただし、周囲の視線が気になり個々の集中環境がやや保ちにくいというデメリットもあります。そのような場合は、1人あたりのスペースにゆとりを持たせる、パーティションを設置するといった対策を検討しましょう。
同向型レイアウト
デスクを一方向に並べる同向型レイアウトは、従業員同士が対面しないため執務に集中できます。コールセンターや銀行の店舗などで見られ、窓口対応の業務やワークフローが確立した定型業務に適しています。
また、管理者の座席を最後尾に配置すれば、従業員の状況を把握しながら指示を出しやすくなるメリットもあります。ただし、ある程度広い空間を必要とするといったデメリットがあります。
背面型レイアウト
背面型レイアウトは、従業員同士が背を向けるように机を配置するスタイルです。業務に集中でき、プライバシーを確保できるメリットがあります。背面の中心に机を配置することで、即座にミーティングもでき、個人作業も共同作業もしやすくなります。
後ろから業務内容が見えるため、秘密情報を扱う業務は注意が必要です。
ブーメラン型レイアウト
ブーメラン型は、天板が120度の机を3台組み合わせた島型で、1人あたりの作業スペースを広く確保できます。パーティションを設置すると周囲の人と目線が合いづらくなり、個人作業に集中でき、適度な距離感でコミュニケーションも取れます。
ブース型レイアウト
ブース型は、仕切りで机を囲う個人作業に適した配置です。個室タイプと簡易パーテーションタイプがあり、他者の視線や作業音、会話を遮断できます。防音性を高めればWeb会議にも利用可能です。
クロス型レイアウト
クロス型は、デスクを十字に並べる配置で、従業員間のコミュニケーションの活発化が期待できるレイアウトです。一方で、個々の集中環境を保つことがやや難しいく、またレイアウトには広いスペースを必要とするといったデメリットがあります。
デスクのレイアウトについてはこちらのページで詳しくご紹介していますので、併せてご覧ください。
執務室をデザインするポイント
執務室をデザインするポイントをご紹介します。
オフィスのコンセプトを決める
オフィスのコンセプトとは、オフィスデザインの方向性を示すものです。オフィスのコンセプトに基づいて執務室のデザインを行うことで、レイアウトや家具、内装デザインなどに統一感を持たせることができます。コンセプトを意識した執務室づくりは、企業のブランディング力を高める上でも大切な要素です。
オフィスのコンセプト策定についてはこちらのページで詳しくご紹介していますので、併せてご覧ください。
効率のよい導線
業務効率に優れた執務室を実現するには、移動しやすさを意識した導線設計が重要です。通路幅は、人が1人通る場合は「通路幅900mm以上」が基本となります。人が多く通るメイン通路は、すれ違うことができるよう「通路幅1600mm以上」で設定することが望ましいです。また、メイン通路が地震等災害発生時の避難経路となりますので、往来の妨げになるような家具や観葉植物は置かないなどの注意が必要です。
オフィスの通路幅に関しては以下の記事で詳しくご紹介していますので、併せてご覧ください。
1人当たりのデスクサイズを検討する
デスクのサイズは、業務の効率性や快適性にかかわります。ただ、オフィス面積には限りがありますので、やみくもに作業面の広いデスクを導入するのではなく、業務内容や職種などを踏まえて適切なデスクサイズを選択することが大切です。コクヨの調査では、全体の約6割の方がメインデスクとして「横幅1,200mm」タイプの机を採用しています。以下に職種別のおすすめのデスクサイズをご紹介しますので、デスク選びの際の参考にしてください。
職種別のおすすめのデスクサイズ
職種 | おすすめのデスクサイズ | コメント |
営業職 | 幅1,000~×奥行600~700mm | 外出の多い営業職は、小型のノートパソコンでの作業が多く作業面は幅、奥行きともにコンパクト |
スタッフ職 | 幅1,200~1,400×奥行600~700mm | オフィス内での業務が仕事の大半を占めるスタッフ職は、大型のノートパソコンと書類を載せるスペースが必要 |
技術職 | 幅1,600~×奥行700~800mm | 多くの書類や部材を扱う技術職は、フルサイズのキーボードと多くの書類などを置くスペースが必要 |
カラーリングや観葉植物
オフィスの配色や観葉植物は、従業員の心理に影響を与える重要な要素です。オフィス内に適度に緑を取り入れることで、無機質になりがちな執務室を居心地の良いやすらぎの空間にすることができます。
オフィスへのグリーンの取り入れ方や事例ついてはこちらのページで詳しくご紹介しています。
また、執務室の空間デザインは、社員やお客様に会社のイメージを伝える大切な手段です。以下に執務室のカラーコーディネートとレイアウト例をご紹介します。
ライトモダン
白を基調とした明るくシンプルなコーディネートです。作業効率を高め、連携・集中もスピーディーに行うことができます。
ライトナチュラル
明るい木目を基調とした開放感を感じさせるコーディネートです。軽快な雰囲気がアクティブなコミュニケーションを促します。
カジュアルシック
ミディアム系の木目を基調としたコーディネートです。個人の集中ワークからミーティングまで、リラックスした雰囲気で行うことができます。
フォーマルシック
上品で格調高い印象を与えるシックなコーディネートです。適度な緊張と落ち着いた雰囲気で、個人集中ワークやマネジメントにも最適です。
執務室の家具の選び方
執務室の家具の選びのポイントをご紹介します。
機能性
執務室の家具選びでは、機能性が重視されるポイントです。高性能なデスクやイスを選定し「オフィスならではの環境」を整備することで、快適性や作業効率の向上はもちろんのこと、従業員の出社意欲の向上にもつながります。また、家具選定の際は、機能性と共に将来の変更や拡張なども見据えて検討しましょう。
【高性能デスクの例】姿勢を変えるデスク
デスクワーク時、疲れにくい姿勢に導くタイプや業務や気分に合わせて天板の高さを変えて立ったり座ったりして使えるタイプがあります。
デザイン
デザインも重要なポイントです。インテリアの一部として、内装デザインと調和の家具を選ぶことで、執務室全体に統一感が生まれます。
さらに、インテリアコーディネートによって、来客者に好印象を与えられるだけでなく、従業員のオフィスや会社への愛着や、モチベーションアップにもつながるでしょう。
執務室に求められている役割
リモートワークが一般化し、私たちの働く環境は大きく変わりました。従来、執務室は「効率的な作業の場」でしたが、これからは「会社のありたい姿を実現する場」へと求められる役割が変わりつつあります。例えば、仲間とリラックスした雰囲気でコミュニケーションが取れるリフレッシュスペースや生産性を上げる個人ブース、創造性の高い打合せができるスペースなど「会社のありたい姿」を見据えて、自宅やリモート環境ではできない「オフィスならではの環境」を整備しましょう。
参考として「オフィスならではの環境」の一例をご紹介します。
リフレッシュスペース
執務室にリフレッシュスペースを設けると、従業員の同士のコミュニケーションやリラックス、気分転換を促進できます。オフィス内にカフェのようなくつろぎの空間をつくり、コーヒーサーバーやソファ、本棚などを設置すると快適性が向上するでしょう。
リフレッシュスペースの設置方法や事例について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
WEB会議ブース
WEB会議の普及により、自席での会議参加が増え、周囲への騒音が問題となるケースがあります。執務室内にWEB会議に適した専用ブースを設置することで、音問題を解消できるでしょう。ブースには個室型やセミクローズ型などがあり、予算やスペース、必要な機能を比較して選びましょう。
WEB会議ブースの種類についてはこちらのページで詳しくご紹介しています。
集中ブース
「集中ブース」は、パーティションなどで周囲の視線や音を遮断し、1人で作業に没頭できるスペースです。執務室内に集中ブースを設置することで、従業員の集中力を高め、生産性向上に寄与できるでしょう。特に仕切りの少ないオープンなオフィスやフリーアドレスの場合は、個人の集中環境を確保するために、積極的に導入を検討したい設備のひとつです。
集中ブースの種類や設置事例について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
ミーティングスペース
執務室のミーティングスペースは、ちょっとした相談や打ち合わせが簡単にでき、社内コミュニケーションの促進につながります。最近では、自由な発想やアイデア出しを促す空間にするため、インテリアにもこだわり、アウトドアテイストのカジュアルな雰囲気のミーティングスペースを設置する事例も増えてきています。
ミーティングスペースの設置方法や事例について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
ラウンジスペース
ラウンジスペースを執務室に設けることで、ゆったりとした雰囲気のなかで、リラックスした姿勢で仕事ができる空間が生まれます。このようなラウンジスペースは、ミーティングやソロワークなどの業務用途だけでなく、ランチやリフレッシュなど多目的に活用できます。
ラウンジスペースの設置方法や事例について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
執務室の事例
コクヨマーケティングが手掛けた執務室の事例を紹介します。
会社に行くことが楽しみに。社員が幸せになれるオフィス
株式会社LIFULL様は、大阪支店の移転を機に、本社総務と支店のプロジェクトメンバーを中心に、ハイブリッドワーク時代に適した交流が生まれるオフィスを構築しました。エントランスやオフィスインテリアに、コーポレートカラーのオレンジを採用し、休日に好きな場所へ行くような明るく暖かみのある寛ぎの空間を演出しています。
株式会社LIFULL様の事例はこちらのページで詳しくご紹介しています。
フリーアドレスを導入し、ABWを実践するオフィス
ピー・シー・エー株式会社様は、自社ビルのリニューアルを機に、執務室のレイアウトや内装デザインを一新しました。ソロワークやミーティング、集中ワークなど業務内容やモードに合わせて、働く場所を選択できる執務スペースを設けています。
各フロアにテーマを持たせ、内装や家具、機能で変化を付けることで、ABW型の働き方を促進する環境を実現しました。
ピー・シー・エー株式会社様の事例はこちらのページで詳しくご紹介しています。
まとめ
本記事では、執務室の座席配置例や事例などについて解説しました。
従来、執務室は「効率的な作業の場」でしたが、働く環境の変化により、これからは「会社のありたい姿を実現する場」へと求められる役割が変わりつつあります。例えば、仲間とリラックスした雰囲気でコミュニケーションが取れるリフレッシュスペースや生産性を上げる個人ブース、創造性の高い打合せができるスペースなど「会社のありたい姿」を見据えて、自宅やリモート環境ではできない「オフィスならではの環境」を整備しましょう。
コクヨマーケティングは、執務室の構築からその後の維持・運用まで、コクヨグループの総合力でワンストップサポートします。コクヨグループ年間25,000件以上の豊富な実績から、お客様の働き方に合わせた最適な空間提案を行っています。働きやすい執務室づくりをお考えの際は、ぜひコクヨにご相談ください。
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