オフィスのレイアウト変更を行う際、どのようなことに気を付ければ働きやすい場をつくることができるのでしょうか。この記事では、企業の経営者様や総務担当者様に向けて、オフィスレイアウトのコツについて解説します。具体的な事例やポイント、災害対策などについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
【オフィスレイアウトのコツ①】コンセプトを決める
オフィスレイアウトを考える中で「コンセプトを決める」は、最も大切な軸です。以下では、3項目のコンセプトを決めるポイントについて紹介します。
企業理念・働き方・ブランド価値の浸透
オフィスレイアウトによって、社内外に対して企業理念や目指していきたい働き方、ブランド価値などの浸透を行うことができます。例えば、自社の理念を現したコーポレートカラーや自社製品をオフィスのデザインに取り入れることによって、社員へのインナーメッセージに繋げることができます。これらは社員のエンゲージメントを高めることにも効果的です。また、レイアウト変更に伴い、働き方のルールなどを見直すことで、健康経営やウェルビーイングなどの側面について社員へ訴求することも可能です。エントランスや応接スペースなど、特に外部の目に触れることが多い場には、自社製品を展示したり、コーポレートカラーを取り入れたりすることで、よりブランディング効果を期待することができます。最近ではリクルーティング活動も意識して、理念やブランド価値だけでなく、働きやすさを表すオフィスづくりを行う企業も増えています。
【納入事例】日本軽金属グループ様・東京都
18社のグループ会社の統合移転に伴い、完全フリーアドレスを導入し、仕事内容に合わせて場所を選択する働き方「ABW」を実践。オフィス内ワークの社員が多いため、明るく癒しを感じるグリーンを多く配置した内装デザインにしています。
【納入事例】株式会社公文教育研究会様 (左)東京神奈川本部様 291名(右)兵庫事務局様67名エントランスには企業のブランドカラーのブルーを採用しています。
【納入事例】マツナガ建設株式会社様. 32名・長野県
建設業のイメージを一新し、誰もが気持ちよく働ける開放的なオフィスづくりを目指しました。
従業員の働きやすさ
従業員の働きやすさをコンセプトにするのもおすすめです。社員が満足できるオフィスはモチベーションの向上にも繋がります。業種や職種、企業の雰囲気づくりや、快適性・効率性・創造性の向上など、これから在りたい姿を考えながら、具体的なコンセプトを決めましょう。特に最近ではコロナウイルスの流行によりリモートワークが増え、オフィスの価値が見直されています。集中するためのブース席や、リラックスするためのカフェスペース、これらの席を自由に選ぶことのできるフリーアドレスやABWの導入など、様々なオフィスの運用方法が挙げられます。
【納入事例】マグマックス株式会社様・34名・東京都
社員とお客様とのつながりを強くし、快適かつ時代にあわせて変化させていくオフィスです。社内外問わず利用できるファミレスブースや、コロナ禍で増えたWEB会議を行うための個室ブース(WORK POD)、会話弾みやすいカウンター席などを新たに導入しました。
コミュニケーションの取りやすさ
オフィスや働き方の課題として、「コミュニケーションの取りづらさ」を挙げる企業が非常に多いです。従来のオフィスでは部署ごとにフロアが異なったり、間仕切りが設置されていたりするため、顔を合わせる社員が限られています。よりコミュニケーションを取りやすくするためには、執務スペースをオープンにしたり、フリーアドレスを導入したりすることが効果的です。誰でも自由に使うことのできるラウンジや、気軽にミーティングを行うことのできる場所を設けることでも、コミュニケーションの活性化が期待されます。誰にも話しかけられず集中して作業を行いたい時のために、あえて集中ブースを設置することでメリハリをつけて働くこともできます。
また、特に近年は新型コロナウイルスの影響で、コミュニケーションの方法が大きく変わりました。リモートワークが増えたことに伴い、オフィスで快適にWEBミーティングを行うためのブース席の需要も高まっています。
【納入事例】山陽株式会社様・32名・大阪府
仕切りのないオープンオフィスにリニューアル。フリーアドレス導入によって生み出された余剰スペースに、コミュニティエリアを設置。執務スペースに隣接しているため、気軽にコミュニケーションを取ることができます。
【納入事例】(左)ブラザー販売株式会社様・愛知県・70名
執務スペースの一角に、半個室タイプの集中スペース、ミーティングスペースを設置。オープンなオフィス空間でありながら「個人の集中」「少人数での密なコミュニケーション」を行う場を確保しています。
(左)株式会社落合様・東京都・30名
ブース席は主に社外の方との打ち合わせやお昼休憩で使われています。モニターもあるため資料の共有がスムーズにできます。右端の白いボックスはWEB会議ブースで、遮音性が高いため人気の席となっています。
【オフィスレイアウトのコツ②】ゾーニングを決める
ゾーニングとは、オフィス空間を執務スペースや共有スペースなど、用途や機能ごとに区分けすることです。以下で、ゾーニングのポイントについて解説します。
従業員数に適したオフィス面積かどうか
まず、オフィスの面積は従業員の数に対して適切かどうかが大切です。コクヨの調査では、300名以下のオフィスの場合、1人当たりのオフィス面積は約10.5㎡が適切とされています。これを基準に、従業員数に対しての必要なオフィス面積が算出できます。
面積が足りない場合、通常業務を行う環境やミーティングスペースなどを優先して確保しましょう。ミーティングスペースは「昼食の時間帯は、休憩での利用も可能とする」など1つのスペースを他の用途に転用できるよう設計や運用を工夫することで、面積を抑えながらも、オフィスの快適性を保つことができます。
各機能のスペース配分を決める
オフィスのどこに、どれだけのスペースを設置するか決めましょう。執務スペースは、全体の50~60%が一般的です。以下が、代表的なオフィスのスペースです。
・執務スペース:従業員が作業を行うスペース
・役員スペース:役員が使う専用のスペース
・共有スペース:会議室や応接室など
・情報管理スペース:機密文書の保管スペースやサーバールームなど
・多目的スペース:食堂やリフレッシュスペースなど
・交通スペース:通路や廊下
限られたスペースの中にこれらを全て設置する場合、間仕切りやパーテーションで分けるとオフィスが狭く感じてしまう可能性があります。そのような場合は、背の低い家具を置いたり、カーペットの色・素材を変えたりすることによって、スペースを区分すると良いでしょう。機密性の高いスペースは、ガラスパーティションやデスクトップパネルの設置がおすすめです。
【納入事例】株式会社エバラ物流 川崎物流センター様・40名・神奈川県
執務スペースとリフレッシュスペースを、抜け感のある家具と床によって緩やかに分けています。
【納入事例】マツダジャパン株式会社・16名・東京都
経理室や関連会社はガラスパーティションやデスクトップパネルを設置することで機密性を上げています。
従業員の働き方に合わせる
ゾーニングは、社員の働き方に合わせることが大切です。例えば外勤者が多く離席率の高い企業や部署では、席の数を減らしてフリーアドレス制を導入し、その分集中スペースやミーティングスペースなどを増やすことが可能です。内勤者が多く在席率が高い場合は、デスクワークがはかどるよう大きめのサイズのデスクを採用したり、気分転換しやすいように最近ではリモートワークの促進によって出社率が低下しているため、固定席を撤廃してフリーアドレスを導入し、社員同士の会話を促す共有スペースや多目的スペースの割合を増やす傾向も見られます。
【納入事例】ピー・シー・エー株式会社様・東京都
コロナを機に在宅勤務を開始。元のように皆がオフィスに集まって働くというイメージできなかったことから、今後の働き方やオフィスの在り方を検討。組織を超えたコミュニケーションが重要だと考え、大規模な自社ビルのリニューアルを実施し、ABWを取り入れました。
【納入事例】東山フイルム(株) 瑞浪工場様・岐阜県・50名
シンプルな執務スペースに対して、隣接したリフレッシュ兼コミュニケーションスペースは、カラーイメージを大きく変えて木目調の家具や意匠性の高いペンダントライトを採用。ワンフロアの中でも気分転換ができる工夫を行いました。
【オフィスレイアウトのコツ③】導線計画を立てる
ここでの導線とは、仕事で人が移動する経路のことを指します。導線を簡素化することでスムーズに動くことが可能になり、業務の効率性が上がります。また複雑化することで偶然のコミュニケーションが発生するでしょう。導線計画はオフィスレイアウトの大切な要素の1つです。
適切な幅を確保する
オフィスレイアウトをする際には、しっかりと通路を確保しましょう。人がすれ違うメイン通路や座席と座席の間は、1,600mmの通路幅が必要です。デスク同士や座席と壁の間は900㎜、収納庫と座席の間は1,500㎜といわれています。
社員が働きやすい導線にする
従業員が働きやすいと感じるように、業務内容にあわせた導線を考えて、デスクや複合機などを配置しましょう。作業スペースと道具の置き場所への距離は適切か、ストレスなく移動できる導線になっているかなどを見直してください。また、導線計画は効率性の向上だけでなく、社員同士のコミュニケーションを促す仕組みにも繋がります。作業スペースをオフィスの真ん中に配置して、人が自然と集まりやすい場所にしたり、わざとデスクをジグザクに配置して導線を複雑化し、目線が合いやすくなるような工夫をしたりすることも可能です。
【オフィスレイアウトのコツ④ー1】家具や内装を決める(執務スペース)
オフィスレイアウトのコンセプトやゾーニング、導線などが全て決定したら、最後に家具や内装を決めましょう。最初にインテリア関係を決めると、オフィスレイアウトがうまくまとまりません。全体的な方向性や機能性を考えた上で、適切な家具や内装を選びましょう。まずは、オフィスの大部分を占める執務スペースについて、代表的なタイプを3つ紹介いたします。
対向型(島型)レイアウト
対向型(島型)レイアウトとは、部署やグループごとにデスクを向かいあわせて、島のように並べるレイアウトです。部署内での従業員同士のコミュニケーションが取りやすく、最小スペースでも配置できるメリットがあります。島の中では自由に席を選ぶことのできる、グループアドレスを導入する企業も増えています。
同向型レイアウト(スクール形式)
同向型レイアウトは、学校や塾のようにデスクを同じ方向に並べます。メリットは、対面からの視線が気になりにくく、業務に集中しやすいことです。コールセンターや銀行の店舗などでよく見られるレイアウトで、窓口対応のある業務やワークフローが確立した定型業務に適しています。
クロス型レイアウト
クロス型レイアウトとは、デスクを縦と横にクロスして並べるレイアウトです。デスクの配置により、導線が複雑化することで人に接する機会が増え、コミュニケーションの活性化が期待できます。
【納入事例】株式会社公文教育研究会兵庫事務局様・兵庫県・67名
【オフィスレイアウトのコツ④ー2】家具や内装を決める(会議スペース)
会議スペースは、大きく分けるとクローズドタイプとオープンタイプの2つあります。以下では、それぞれの特徴やメリットについて紹介します。
クローズドタイプ
従来の会議室と呼ばれるスペースは、個室のクローズドタイプを指します。人数や会議の種類、会議以外のグループワークやイベントにも使えるよう、キャスターのついた可動式の会議机やいすが便利です。
【納入事例】高円宮記念JFA夢フィールド様・千葉県・100名
床は芝をイメージしてグリーンに。可動間仕切りを設置することにより、シーンに応じて利用可能な多目的空間を構築しました。
オープンタイプ(セミクローズドタイプ)
オープンタイプは執務スペースなどの他エリアに隣接し、軽いミーティングに使うことのできるスペースを指します。写真のようなセミクローズドなブースを設置すると、個室を作らずとも、周りを気にせずに打ち合わせをすることができます。
【納入事例】モランボン株式会社様・東京都・180名
集中とオープンな雰囲気を両立しながら打ち合わせや作業ができるスペースを設置。 カラーはビビッドなものを取り入れており、空間全体のアクセントになっています。
【オフィスレイアウトのコツ④ー3】家具や内装を決める(多目的スペース)
部署を問わず誰もが自由に利用できるスペースについて主に2種類を紹介します。
リフレッシュスペース
執務スペース以外に食事を取るスペースがあると、リラックスしながら休憩時間を過ごすことができます。社員同士の自由なコミュニケーションの場としても活用されるでしょう。執務スペースと別に場所を確保できない場合は、例えば既存の会議室を「〇時~〇時までは食事スペースとして利用する」など、オフィスの運用ルールを決める方法もあります。
【納入事例】一般社団法人日本自動車連盟様・東京都・218名
木目や優しい色調の家具を採用し、くつろぎやすい空間を演出。リフレッシュ空間特有の食事、喫煙室の匂いを消臭するため、壁面や柱には調湿・脱臭機能を有した仕上げ材を取り入れた空間です。
多目的スペース
具体的な目的を決めず、自由に利用できるエリアを設置することで、より柔軟にオフィスでの時間を過ごすことができます。社内イベントや勉強会など、様々な目的に応じてレイアウトが自由に変えられるキャスター付きの家具を取り入れると便利です。
また、書籍や雑誌などを置くライブラリーのエリアをつくって情報収集を促したり、社員同士が楽しむことのできるゲームを設置してコミュニケーションのきっかけづくりを行ったりするなど、多目的スペースに様々な仕掛けを行うこともおすすめです。
【納入事例】株式会社バンダイナムコエンターテインメント様・東京都
イベントやセミナーに使用できるプロジェクトスタジオでは、オープンな雰囲気の中で、商品・サービスの紹介や勉強会を実施。可動式家具を多く採用し、イベントに最適な場を簡単に構築できるようにしています。ウォールシェルフで囲われたエリアにはゲームを設置し、部門を問わず出会いを創出します。多人数で利用するソファー席、一人で利用するシンキングブースなど、目的に応じて席を自由に選ぶこともできます。
災害対策も考慮する
オフィスレイアウトでは、災害対策を意識することも大切です。以下で、3つの対策について解説します。
地震対策
オフィスには背の高い収納庫も多いので、地震の揺れで倒れないように壁や床に固定しましょう。パーテーションは倒れにくいコの字型やH字型で、高耐震のものを設置することがおすすめです。また、通路には避難の妨げになる物は置かず、床の素材を滑りにくくすると安心です。オフィス内の見えるところに防災用品を備蓄することで、より安心できるでしょう。
火災対策
火災対策も、従業員の命を守るために大切です。消防隊進入口マークのある窓や排煙窓の周辺は、オフィス家具で塞がないようにしましょう。延焼を防ぐには、防炎素材でできた布製品を選ぶことをおすすめします。発火原因になりえる物は、置き場所にも注意しましょう。
水害対策
近年、ゲリラ豪雨の被害も増えています。洪水の際に慌てないためにも、ハザードマップを確認して、オフィス近くの避難場所を周知しましょう。また、防災用品はできるだけ低層階に置かないことが大切です。低層階オフィスでは、出入り口や窓に強い水圧に耐えるシャッターを設置すると被害を抑えられるため安心です。
まとめ
オフィスレイアウトを変更する際には、コンセプトの設定やゾーニング・導線など、必要に応じてコツを押さえると、スムーズかつ満足度の高いオフィスづくりを行うことができます。あらかじめ目的を明確にすることで、社員全員が快適に働けるオフィスを目指しましょう。コクヨマーケティングは、年間25,000件以上の豊富な実績から、お客様の働き方にあったオフィス空間の提案をいたします。ビルの選定からオフィス移転、移転後の維持・運用まで、ワンストップでサポートするので安心です。実際にコクヨ社員が働くオフィスを体験できる「オフィス見学」も実施していますので、レイアウトや働き方の参考にいかがでしょうか。ぜひお気軽にお問合せください。
オフィス移転・改装レイアウトの課題を解決します