オフィスランドスケープとは、壁や間仕切りなどを設置せず、背の低いパーティションや家具、観葉植物などを設置することで、ゆるやかにゾーニングや導線確保を行うオフィスレイアウトの方法です。この記事では、オフィスレイアウトの改善を検討中の担当者の方に向けて、近年注目されているオフィスランドスケープについて解説します。自社の生産性向上や業務効率の改善につなげる際に、ぜひ役立ててください。
オフィスランドスケープとは
オフィスランドスケープとは、1960年代にドイツで生まれたオフィスレイアウトの考え方です。欧米では以前から取り入れられており、近年日本でもオフィスランドスケープを採用する企業が増えています。フロアに高い壁や間仕切りがなく、背の低いパーティションや家具、観葉植物を用いることで、適度にプライバシーを保ちつつ開放的で明るい空間をつくることができます。
オフィスランドスケープが誕生した背景
オフィスランドスケープが誕生する前のヨーロッパの一般的なオフィスは、「コリドーオフィス」という小部屋形式でした。コリドーとは「廊下」という意味で、廊下を挟んで複数の小部屋を配したオフィスのタイプです。このタイプは小部屋を1人または少人数で使うため集中力が上がるメリットはありますが、業種によっては低効率・高コストでした。生産性を向上させるため、従来のオフィスの間仕切りを取り払い、仕事の流れを良くするために生まれたのがオフィスランドスケープという手法です。働く人間の心理的な要因に配慮した机の配置や、間仕切りを使わずオフィス家具・植物・ローパーティションなどでゆるやかに仕切られたオープンな空間のオフィスランドスケープは、1960年代の後半から、アメリカや欧米などを中心にオフィスで広く採用されました。特にスウェーデンでは8割以上のオフィスで利用されています。
近年日本でも、オフィスランドスケープの手法を取り入れる企業が増えています。柔軟にレイアウト変更が可能で、社員同士が顔の合わせやすいオフィスランドスケープの考え方は、効率性が高く風通しの良いオフィスづくりに繋がっています。
オフィスランドスケープのメリット
オフィスランドスケープは広く明るい空間であるだけでなく、コスト削減やコミュニケーションの取りやすさなど、様々なメリットがあります。
コストを抑えられる
オフィスランドスケープの場合、間仕切りの設置・撤去などの内装工事費用がかかりません。高い壁が少なく誰がどこにいるか把握しやすいため、フリーアドレスの導入にも向いています。フリーアドレスを導入して必要な席数を見直すことで、オフィス面積の縮小にも繋がります。
コミュニケーションがとりやすい
仕切りが少ない空間で働くことで、従業員同士のコミュニケーションが取りやすくなります。間仕切りや高いパーティションによって部署ごとにワークスペースが仕切られている事が多いですが、それらを取り払うことで他部署の従業員と顔を合わせる頻度が高まります。お互いがどのような仕事をしているのかを知るきっかけにもなり、会話の中で新しいアイデアがうまれる可能性もあります。
レイアウトの変更が容易にできる
オフィスランドスケープは、間仕切りによる制限がないため、組織変更などに合わせてスムーズにオフィスのレイアウトを変更できます。仕事内容の変化にも柔軟に対応でき、働き方に合わせて最適な形に変えられるでしょう。ウイルス感染対策など、社会の変化に応じて素早くフレキシブルにレイアウトが変更できるのもメリットの1つです。
オフィスランドスケープのデメリット
オフィスランドスケープには、いくつかのデメリットがあります。以下で、デメリットとその解決方法について説明します。
プライバシーを保ちにくい
仕切りが少ない空間は、プライバシーを保つ業務などには適していません。機密性の高い情報を扱う場合、オープンな空間では業務が行いづらい可能性が高いです。業務に応じて壁やパーティションを作り、情報を保護する場所が重要となります。遮音性が高く空間に対する圧迫感の低いガラス間仕切りや、比較的簡単に設置できるブースタイプの席がおすすめです。
集中しにくい人もいる
オフィスランドスケープは開放的な空間での勤務になるため、人によっては業務に集中できない場合があります。オフィス空間がオープンなため、話声や雑音、人の動き、視線などが気になり、作業に集中できなくなる可能性があります。その場合は、個人が作業に取り組みやすい個別のスペースを設置すると良いでしょう。最近ではWEB会議の頻度も増えているため、特にブース席の需要が高まっています。
オフィスランドスケープを取り入れた事例5選
株式会社島津製作所 基盤技術研究所様(約200名・京都府)
これまで4フロアに分かれていたエンジニアをワンフロアに集約。オープンな空間の執務エリアは、将来のフリーアドレスへの変化を想定しつつも、一旦は自席100%として部署内でのコミュニケーションを確保し、社員同士の交流を促す運用にしました。組織変更やプロジェクトチームの配置に備えてレイアウトの変更がしやすいキャスター付きのデスクを採用しています。
日本軽金属グループ様(東京都)
18社のグループ会社が1つのビルに集結、完全フリーアドレスのオフィスに変更しました。アクティブに歩き回ることのできるデスク配置で、見通しのよいオープンな空間をつくりました。オフィス内での部門や会社組織を越えたコミュニケーションが期待されています。
西日本高速道路株式会社 九州支社様(約200名・福岡県)
仕切りのないオープンなオフィスで、コミュニケーションの活性化を図っています。社内ではめずらしいパーソナルロッカーの運用を行い、グループアドレス制を採用しています。
株式会社公文教育研究会 兵庫事務局様(約67名・兵庫県)
兵庫県にある4つの事務局の集約再編に伴うオフィスリニューアル。各拠点の代表が集まり、3回のワークショップを通して、これからの働き方やそれにあわせたオフィス空間を検討しました。仕切りのない執務スペースは、全体を見渡せ、開放的で、つながりを感じる空間を演出しています。
山陽株式会社様(32名・大阪府)
社員同士のコミュニケーション促進と生産性の高いオフィスを目指しリニューアルを実施。仕切りのないオープンなオフィスで、コミュニケーションの活性化を図ります。フリーアドレス導入によって生みだされた余剰スペースに、コミュニティエリアを設置したのもポイントです。
まとめ
オフィスランドスケープには、柔軟なレイアウト変更やコミュニケーションの活性化など、様々なメリットがあります。しかし、プライバシーや機密情報を扱うことが多いなど、業種によっては不向きな場合もあるため、自社の業務の適性に応じて採用することが重要です。コクヨマーケティングは、年間25,000件以上の豊富な実績から、お客様の働き方に合わせた空間を提案します。レイアウトだけでなく、物件選びからオフィスの維持・運用に至るまで、安心・信頼のサポートをワンストップで行います。実際にオフィスランドスケープを取り入れたオフィスを体感いただけるオフィス見学会(予約制)も毎日実施しているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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