働き方の柔軟性が求められ、ICTが進展する中、フリーアドレスを採用する企業が増えています。しかし、フリーアドレスの導入に失敗してしまうケースも少なくありません。この記事では、フリーアドレスの失敗の原因と、成功のために押さえておきたいポイントを解説します。ぜひお役立てください。
フリーアドレスのメリット・デメリットや成功のポイントが分かる
オフィスの「フリーアドレス化」が注目される理由
フリーアドレスが注目されている理由は、テレワーク導入が進み、働く環境や働き方が変化しているからです。ICT技術が発展し、紙の書類ではなくデジタル化したデータを利用する場面も増えています。モバイル端末があれば、いつでもどこでも業務を進められる環境が整い、フリーアドレス化しやすい状況になりました。また、人数変更に柔軟に対応できることから、フリーアドレスを採用する企業が増えていると言われています。
フリーアドレスとは
フリーアドレスとは、オフィスの中で固定席を持たずに、ノートパソコンなどを活用して自分の好きな席で働くワークスタイルのことです。図書館の閲覧テーブルのように、個人席を決めずに空いている席を使う形式になります。
フリーアドレス導入の目的・メリット
フリーアドレスを導入する目的は、社内のコミュニケーションの促進や空いている席を有効活用したいなど、企業によってもさまざまです。最近ではABWの考え方を意識して導入する企業も増えてきました。ABWとは「Activity Based Working」の頭文字をとった表現であり、場所や時間を社員が自由に選択する働き方です。フリーアドレスを導入すれば、組織の規模や人数が変化してもオフィススペースを柔軟に活用できます。
フリーアドレスの失敗原因9つ
今注目されているフリーアドレスですが、導入する企業の増加とともに、失敗事例も目立つようになっています。フリーアドレスの失敗を防ぐための方法について以下で詳しく解説します。
▼フリーアドレスを導入した企業のなかには、社員が苦痛やストレスを感じてしまうケースもあるそうです。フリーアドレスを苦痛に感じる理由について詳しく知りたい方はこちら
導入目的があいまい
フリーアドレスを導入する際は、導入目的を明確にする必要があります。導入目的やフリーアドレスのメリットなどを社員にしっかり伝えることが大切です。例えば、主な導入目的として、「部門を超えたコミュニケーションの活性化」「生産性の向上」などがあります。
必要なオフィス環境が整っていない
固定電話やデスクトップパソコンがあると、フリーアドレスの導入が難しいと言われています。フリーアドレス化には、ノートパソコンやスマートフォンなどフレキシブルに動くことができる端末が必要です。フリーアドレスに適した環境を整えなければ、かえって働きにくくなる恐れもあります。
社員がいつも同じ席に座ってしまう
フリーアドレスを導入しても、自由に席を選びづらい雰囲気があれば、いつも同じ席に座ってしまう可能性があります。なかには、毎日異なる席を選ばなければならないことを面倒に感じる社員もいるかもしれません。座席管理システムの導入、くじ引きで席を決めるなど、固定席化しないように工夫しましょう。
▼フリーアドレスの導入にあわせて、座席管理システムを導入する企業が増えていると言われています。座席管理システムについて詳しく知りたい方はこちら
居場所がわかりにくい
従来の固定席では同じ部署やチームのメンバーが常に近くにいるため、こまめな情報共有が可能です。しかし、フリーアドレスではどこに誰がいるかをすぐに把握できず、報告や相談がスムーズにいかない場面も出てくるでしょう。
人材育成が難しい
従来の固定席では同じ部署やチームのメンバーが常に近くにいるため、こまめな情報共有が可能です。しかし、フリーアドレスではどこに誰がいるかをすぐに把握できず、報告や相談がスムーズにいかない場面も出てくるでしょう。
固定席では、上司の近くにメンバーがいるため、様子を見ながら指導することができます。しかしフリーアドレスを導入することで、上司が部下に対して適切なタイミングで指導やサポートができない場面も出てくるかもしれません。その結果、チーム内のコミュニケーション不足や自身の成長に対して不安を感じるケースもあるでしょう。
書類管理がしづらい
フリーアドレスの場合、自席での書類管理ができないため、パーソナルロッカーや収納庫で管理する必要があります。また、離席時に次に使う人のために書類やパソコンなどをすべて片付けなければなりません。そのため、書類管理がしづらくなってしまいます。
▼離席時に書類やパソコンなどすべて片付けることを「クリアデスク」と言います。クリアデスクについて詳しく知りたい方はこちら
雑談が増えてしまった
自由に席を選ぶことができるフリーアドレスでは、仲の良い社員で固まってしまうこともあります。また、話し声がうるさく周囲の社員が集中できなくなってしまい、生産性が落ちてしまう可能性もあるでしょう。
導入コストがかかる
フリーアドレスを導入する際、オフィスのレイアウトを変更や、必要な設備を導入するコストがかかります。フリーアドレス用のデスクやパーソナルロッカーを用意しただけでは、フリーアドレスのメリットを感じにくいでしょう。例えば、座席管理システムを導入して社員の座席情報をわかりやすくするなど、必要に応じてシステムを導入するとよいでしょう。
運用ルールが浸透していない
運用ルールが浸透していないことで、不快な思いをする社員が出てくるかもしれません。例えば、離席時に書類を広げたままにして次の社員が使えない、掃除ができておらず汚いなどが挙げられます。気持ちよく使えるオフィスにするためにも、運用ルールの浸透が大切です。
フリーアドレス導入を成功させるには?成功させる11ポイント
では、フリーアドレス導入を成功させるには、どのようなことを意識すればいいのでしょうか。「導入目的を明確にする」「運用ルールを作る」などそれぞれのポイントについて以下で詳しく解説します。
①導入目的を明確にする
フリーアドレスを導入する前に、まずは目的を明確にしましょう。「部門間を超えたコミュニケーションがとりたい」「人数の増員にあわせて柔軟にレイアウトを見直したい」「余剰スペースを有効活用したい」など導入目的を明暗にした上で、レイアウト検討がおすすめです。例えば、「部門間を超えたコミュニケーションがとりたい」場合、どの部門とのコミュニケーションを重視するか、など事前に検討するとよいでしょう。
②運用ルールを作る
社員が気持ちよく使えるオフィスにするためには、運用ルールが大切です。さまざまな立場の社員が公平感・納得感を得られる運用ルールをつくるとよいでしょう。例えば、退社時にはデスクを綺麗に拭く、荷物はすべてパーソナルロッカーにしまう、などの運用ルールがあることで、気持ちよく使えるだけでなく、トラブルを防ぐこともできるでしょう。フリーアドレス導入前には運用ルールの説明会を行うことがおすすめです。また、オフィスの見えやすいところに運用ルールを掲示することも大切です。
③部門内での連携がとれるようにする
フリーアドレスを導入すると、部門を超えたコミュニケーションが活性化する一方で、自部門内での連携が不足してしまうこともあります。スムーズに業務を進めるためにも、部門内での連携がとれるようにルールを決めるとよいでしょう。例えば、定期的に1on1を実施する、チャットツールを活用するなどがあります。
④オフィス環境整備など事前準備をしっかりと行う
社員がしっかりパフォーマンスを発揮できるよう、オフィス環境の整備が大切です。オフィスのレイアウトや必要な座席数について入念に検討しましょう。必要に応じて、入退室管理システムをはじめ、必要なツールやソフトウェアなどの導入も検討するとよいでしょう。
⑤部分的に導入する
例えば、外出が多い部署やノートパソコンとスマートフォンが貸与されている部署から、部分にフリーアドレスを導入する方法もあります。自社の部門特性や働き方にあわせて、トライアルする部署を検討するとよいでしょう。
⑥グループアドレスを導入する
グループアドレスとは、「部署やチームごとのエリアの中で、自由に席を選ぶ働き方」をあします。グループアドレスのメリットとして、部門内の連携を保ちながら、部門を超えたコミュニケーションがとれることが挙げられます。また、居場所がわかりやすいので、必要に応じて上司やメンバーに相談できるでしょう。
▼グループアドレスについて詳しく知りたい方はこちら
⑦企業への帰属意識を高める工夫をする
自分の固定席がないと、企業に所属しているというアイデンティティが薄くなる社員が出てくる可能性があります。すべての社員が高いモチベーションを保って業務に取り組めるようにするには、帰属意識を高めるための工夫も大切です。
⑧ABWを取り入れる
ABWとは、「社員が自立的に業務内容や気分にあわせて、働く時間や場所を自由に選択できる」働き方を指します。例えば、集中して作業したい時は集中ブースへ、皆でアイデアを出したい時はオープンミーティングスペースへ、など仕事内容にあわせて場所を選ぶことができるオフィスにするとよいでしょう。
▼ABWについて詳しく知りたい方はこちら
⑨システムを導入する
フリーアドレスを導入することで、「社員の位置情報がわからなくなってしまう」問題が発生してしまいます。位置情報がわかるシステムを導入することで、スムーズに連絡や相談ができるでしょう。
⑩必要な座席数を算出する
部門特性にあわせて、必要な座席数を算出するとよいでしょう。外出は多いか少ないか、出社の頻度はどの程度か、などを調査し、必要な座席数を算出します。空いたスペースを有効活用することで、満足度の高いオフィスが作れるでしょう。例えば、コミュニケーションがとりやすいオープンな打ち合わせスペースや、こもって作業ができる集中ブースがおすすめです。
⑪定期的に見直しをする
フリーアドレス導入後は運用ルールが守られているか、座席利用率に偏りがないか、などを定期的に確認するとよいでしょう。座席利用率に偏りがある場合は、レイアウトの見直しが必要です。レイアウトの見直しをする前にサーベイを行うことで、社員の意見を定量的に把握することができます。
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フリーアドレスに向いていない職種
社内から問い合わせを受ける職種は、フリーアドレスには向いていないと言われています。なぜならば、座っている席がわかることで、スムーズに問い合わせができるからです。具体的には、経理部門や人事部や総務部などのコーポレート部門などがあげられます。また、高いセキュリティレベルを求められる職種もフリーアドレスには不向きです。席を移動した際に重要な資料を紛失して情報漏洩につながる恐れがあるからです。このような職種でフリーアドレスの導入を検討する場合は、特に運用やリスク対策について十分に検討するようにしましょう。
フリーアドレスおすすめ商品
フリーアドレスも選ぶオフィス家具によって上記で説明したような失敗を防ぎ、より良い職場環境に向上させることができます。以下では、フリーアドレスにおすすめのオフィス商品について以下で詳しくご紹介します。
Work Vista Light(ワークヴィスタライト)
コミュニケーションを重視したセッティングからカジュアルなデザインまで多様なスタイルに応えられるロングテーブルです。脚の形状や天板カバーを変えることで、空間にあわせたデザインにすることができます。
▼Work Vista Lightについて詳しく知りたい方はこちら
Work Vista Light
WORK FIT(ワークフィット)
移動や組み合わせが自由なワークテーブルです。キャスターが付いているので、さまざまなレイアウトにスピーディーに対応することができます。フリーアドレステーブルだけでなく、ミーティングテーブルとしても使えます。
▼WORK FITについて詳しく知りたい方はこちら
WORK FIT
SENTIR(センティア)
デザイン性が高いワークテーブルです。天板の色や脚の色・形状の組み合わせ次第で、約2000通りのテーブルを作ることができるので、オーダーメイド感覚で楽しめます。ワークテーブルだけでなく、ハイタイプ、マネージメントテーブルなど幅広いラインナップがあります。
▼SENTIRについて詳しく知りたい方はこちら
SENTIR
iNON(イノン)
収納量にあわせて選ぶことができるパーソナルロッカーです。セキュリティレベルに合わせて選べるようにシリンダー錠、ダイヤル錠など4種類の施錠タイプがあります。また、メールボックスもついているタイプもあるため、書類や郵便物の受け渡しもできます。
▼iNONについて詳しく知りたい方はこちら
iNON
mo・baco(モバコ)
社内持ち運び用のバッグです。ノートパソコンやその日に使う書類や文具などが入るので、パーソナルロッカーに入れておくと便利です。パーソナルロッカーから自席への移動だけでなく、会議や打ち合わせなどの社内移動の時も使うことができます。
▼mo・bacoについて詳しく知りたい方はこちら
mo・baco
フリーアドレスのオフィス事例
コミュニケーションがとりやすいオフィス (株式会社LIFULL様)
株式会社LIFULL様は、ビルの契約更新をきっかけにご移転されました。ご移転先のオフィスでは、グループメンバーがコミュニケーションをとりやすいよう、ユニバーサルなデスク配置をされています。
▼株式会社LIFULL様の事例について詳しく知りたい方はこちら
会社に行くことが楽しみに。社員が幸せになれるオフィス
部門特性にあわせたフリーアドレスオフィス (名鉄都市開発株式会社様)
名鉄都市開発株式会社様はグループ会社間の連携強化とシナジー効果を高めるために、ご移転されました。部門特性にあわせて、営業系部門はフリーアドレス、管理系部門はグループアドレスを採用されています。また、仕事に応じた運用ルールも策定しており、社員が気持ちよく使えるオフィスになっています。
▼名鉄都市開発株式会社様の事例について詳しく知りたい方はこちら
業務にチーム、グループ会社との新たな連携を模索し、成果に応じて柔軟に連携し活動するつなげる働き方を実現するオフィス
グループアドレスへの緒戦! (富士電機ITセンター株式会社様)
リニューアルをきっかけに、部署ごとに仕切られていたレイアウトを見直し、グループアドレスを採用されました。他部署とも顔を合わせやすいように、オープンなレイアウトになっています。
▼富士電機ITセンター株式会社様の事例について詳しく知りたい方はこちら
多様な働き方とコロナ禍における安全性の両立を目指す"スマートなオフィス"
まとめ
柔軟な働き方を実現するためのひとつの方法として、フリーアドレスを導入している企業が増えています。導入を進める上でさまざまなポイント触れてきました。ぜひ、ご参考にしてください。
コクヨマーケティングは、オフィス移転をはじめとし、移転後のオフィスの運用までワンストップで支援しています。年間25,000件以上の豊富な実績があり、それぞれにあわせた最適な提案が可能です。コクヨの社員が働くオフィスの見学会も実施しているため、まずは相談してみてください。
フリーアドレスのメリット・デメリットや成功のポイントが分かる
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