コロナ禍に端を発して働き方は大きく変化しました。 働き方の転換期のなか、「オフィスはこのままでよいのか」と悩まれている方も多いかと思います。従来、オフィスは「コスト」と捉えられることが多かったのですが、これからはオフィスを「会社のありたい姿」をワーカーに伝えるための投資として考えて積極的に活用しませんか?そのようなオフィスづくりを進めるために押さえておきたい3つのポイントと、ありたい姿を実現するための知識の1つとして「フリーアドレス」をご紹介します。
オフィスづくりのポイント ①オフィスに求めること
今まで
「効率的な作業の場」として、いかに素早く作業ができるかということに着眼してきました。例えば、いわゆる「雛壇型」とよばれる、部長席が窓際にあり、対向島型に並べられたデスクの端部に課長席があるといったレイアウトなどはその典型でしょう。部長から課長へ、課長から課員へといった上意下達のコミュニケーションを取りやすくすることで時間的な効率を図り、またスペースも少なくて済むため空間的な効率や、ファシリティコストの効率を高めることを主眼に置いていました。
これから
オフィスは「会社のありたい姿」を実現する場となります。「会社としてなすべきことは何か」「そのためにワーカーにどのように働いてほしいか」「どのようなことを大切に考えてほしいか」ということがオフィスという空間で伝えられているかが重要になってきます。
オフィスづくりのポイント ②オフィスづくりの手法(進め方)
今まで
収容する人数や既存のオフィスの不満解消を起点にオフィスの検討を始めていました。もちろん、それは欠かせないことですが、今までの不満を解消さえすればよいオフィスができるわけではありません。ワーカー自身は働き方やオフィスに関する知識を豊富に持っているわけではないため、現状維持の働き方の「改良」レベルまでしか想定できないことも考えられます。
これから
会社のありたい姿を実現するための理想の働き方を考えます。その上で、どのようなことをオフィスづくりで大事にするのか?といったことを、長いプロジェクトの期間に関係者の間でぶれてしまわないよう、それらをコンセプトなどの「言葉」にしておくことが大切です。
そして、理想の働き方を実現できるオフィス空間・ツール・仕組みを考えてオフィスに取り入れていきます。例えば、「部門を超えたコミュニケーションを図る」働き方を実現したいのであれば、偶発的な出会いをもたらすカフェコーナーのようなコミュニケーションを促すような場や仕掛けを設けるなど、目指す働き方を形にしていきます。
オフィスづくりのポイント ③オフィス構築後
今まで
オフィスができた時が一番きれいな状態で、その価値をできるだけ損なわないよう維持管理を行います。
これから
維持管理を行うだけでなく、オフィス構築時に実現したいと思っていたことが実現できているか、といった視点でアンケートなども行いながら改善を図ります。さらに状況の変化、働き方の変化に柔軟に対応し常に使い勝手をアップデートしていくことも必要です。
さて、「会社のありたい姿」がイメージできてコンセプトを定めることができても、それを形にしていくためには、どうすればよいのでしょうか?オフィスづくりの手法(進め方)・オフィス構築後の運用について検討を進めていくには、オフィス構築や運用のための具体的な「知識」が必要です。 オフィスの「知識」は、非常に専門的なものから比較的一般的ものまで、またオフィス構築から運用の手法まで、非常に幅広いものとなります。例として今回は、比較的耳にする事の多くなってきました「フリーアドレス」について知識の一部をご紹介します。
フリーアドレスの種類
フリーアドレス
一般的にフリーアドレスとは、オフィスの中で個人席を決めずに、空いている席を自分で選んで座る方式を言います。オフィスにいない人のスペースを有効活用でき、組織変更や人員増に柔軟に対応できます。「フリアド」等略して記されることもあります。
グループアドレス
グループアドレスとは、グループ単位で座る場所を定めたフリーアドレスです。グループ内のコミュニケーション向上に寄与します。グループの大きさはチーム単位からフロア単位まで運用に合わせてさまざまな設定が可能です。クループごとの座る位置を定期的に入れ替える事で、様々なグループ間での交流を促進することも可能です。
ABW
ABWとはActivity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の略です。その日の業務内容や気分にあわせて、最も効率よく働ける席を自由に選びます。そのためにはオフィスには集中ブースやカウンター席など様々なタイプの席を用意しておく必要があります。オフィスのどこでも働けることでオフィス内の人の密度をコントロールすることも可能です。広義のABWでは自宅やコワーキングプレイスなどオフィス外の場所も選択肢に入ります。また勤務時間の柔軟性も含むことがあります。ABWは必ずしもフリーアドレスである必要はなく、固定席+自由に使える様々な席で運用することも可能です。
フリーアドレスのメリット
スペース効率の向上
「ミーティングスペースは足りないのに、昼間の執務席はガラガラ」ということはありませんか?外出や会議などで席を外す頻度が高い職種が多いオフィスの場合は、在席率を元に適正な席数設定を行うことで執務スペースを効率化し、ミーティングスペースやラウンジスペースなどの他の用途に充てることができます。
組織変更・人数変更への柔軟な対応
フリーアドレス運用では、座席と人(個人)が結びついていないので、組織変更はもちろん、プロジェクトメンバーの増員やヘルプで一時的に増えたメンバーの席などもレイアウト変更や工事を行わずに臨機応変に対応できます。
コミュニケーションの促進
毎日異なる様々な人と席を接して会話することで、チーム内に固定しがちなコミュニケーションが柔軟になり、新たな情報や発想を得ることができます。フリーアドレスを導入した企業では、異なる部署の管理職の人にも話しかけやすくなったという声もあります。
自律的な働き方の促進
自分が集中しやすい場所など好みの場所を選ぶことや、その日の仕事に必要な物や環境を考えて仕事に向かうことで、仕事の組み立てに対して自律的に取り組む意識が醸成できます。また、仕事後、すべてを片付けて帰宅しなければならないので終業のメリハリがつきます。
フリーアドレス成功のポイント
ご紹介してきたフリーアドレスも、運用方法を間違えるとワーカーにとって使いにくいものとなってしまう場合もあります。フリーアドレスを成功に導くためにはいくつか運用面でのポイントがあります。
社員への浸透
何のためにフリーアドレスを実施するのか、ワーカーに何を期待しているのかを明確に発信し、ワーカーへの浸透を図りましょう(「会社のありたい姿」ですね)。ワーカーに単なるコストカットと感じられるとポジティブに取り組むことができなくなってしまいます。
運用ルールの作成
利用するワーカーも参加して、どのように運用するのかを定めておく必要があります。例えば、フリーアドレスでは次に使う人が気持ちよく使えるよう、帰宅時には「クリアデスク」を徹底する、席によって使用時間の上限を決めるなどのルールを決めましょう。
※クリアデスク:情報漏洩対策の一つで、離席・退社の際に机の上に書類や記録媒体などを放置しないルールのこと。情報漏洩以外にも、席の専有化を防ぎ、拭き掃除のしやすさから衛生面の維持にも効果があります。
サポートツールの活用
フリーアドレス特有の働き方にあったツールを用意する必要があります。ノートパソコンやスマートフォンなどのモバイルツールはもちろんのこと、個人の書類やパソコンの置き場所、郵便物の受け取るトレーなども、フリーアドレスでは必要となります。パソコンや書類をまとめて席まで持ち運ぶツールなども検討しましょう。
これからのオフィスづくりにおいては、オフィスに求めること(会社のありたい姿)・オフィスづくりの手法(進め方)・オフィス構築後(運用)という3つのポイントをはじめに押さえた上で進める事が大切になります。
オフィスを具体的な形にしていくためには、オフィス構築や運用の「知識」が必要となります。デスクエリアのフリーアドレスという運用方法だけに絞っても、知っておくべき「知識」が多くあります。デスク(ワークテーブル)の選び方は?フリーアドレスのレイアウトはどのように考えればよい?などこれらの知識を効率的に得るにはどうすればよいでしょうか?
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